魔力媒体とは
「レペテお疲れ様」
「サーレ様!見てください、サーレ様には及ばないけど…ほらここ、魔力量がAだそうです!魔力操作はBで、使える魔法は闇魔法のみでした!」
キラキラと目を輝かせるレペテを褒めつつ宥める。レペテは私よりも魔法を使う機会が確実に有ったと思う。だけど、魔力操作は私より低いのね。
じゃあ単純に魔法を使ったから上がったってことでは無いのかもしれない。何らかの原因が他にあるはずだ。
「そうなのね、でも次の方の邪魔になってしまうから、座って話をしましょ」
「あ…はい、ごめんなさい」
しゅんと犬の垂れた耳が見えた気がして自然と笑みが零れる。この子を連れてきたのは他に方法がなかったからだけど、今こうして見ると連れてきてよかったわね。
この子が笑ってくれてるから間違いではなかったのだと実感できるし。
ざっと見回してから空いてる席に着く。どうやら席順は特に決まってない様だ。既に何人かは座っていた。
端の方に座り、レペテにだけ届く声で話す。
「レペテ、いきなりだけど…レペテが闇魔法を使えるのはどうして?」
「え?そういえばサーレ様に聞かれたこと初めてですね、えーと…なんと言ったらいいか」
もじもじとレペテが指先を遊ばせて意を決したように私を見る。なんだろう?
「……私は闇魔法を教わらなくても使えたんです」
心臓が大きく脈打つ。最初から?何歳から使えたんだろう。
「闇は常に私に優しかった…だから、最初は魔法だと知らずに使ってました」
「知らなくても使えたのね」
「はい、勝手に浮かぶんです、詠唱が」
レペテが自分の耳を塞ぐ。
「こうして、耳を塞いだとしても、私が望んだことをできるだけ闇は叶えようとしてくれる、その方法が詠唱として頭に浮かぶことなんだと思います」
レペテは悲しそうにけれど嬉しそうに手をおろし椅子に深く座り机に伏せた。
「私は闇だけでいい、闇だけあれば…十分です」
「そう…」
聞きたかったこととは少しズレてしまっている気がするけど、要はこの子は使う術をその都度学んでいるということだ。
レペテが魔力操作がBだったのもそのためかもしれない。レペテ自身は魔法を使ってる感覚すらあまりないんだろう。
魔力がそれに応えている。……なら私の魔力操作がAになったのは一体なぜ?
「では、全員結果が出たようですし、次は魔力媒体を選びましょう」
魔力媒体という言葉にゆっくりと深呼吸してからアリア先生を見る。いつの間にかハウロスの心臓は片付けられ、先生は黒板に魔法陣を描いていく。
「魔力媒体は知っている方もいるかもしれませんが、一度詳しく説明しておきますので頭に入れて置いて下さい。」
ゆっくりとアリア先生は話しながら魔法陣を描きあげていく。
「全ての生き物には魂と体があります、魔力は魂に近いところに存在し、無理矢理行うと魂が傷つく恐れがあります、そして階級が高い魔法ほどその確率は上がっていくのです」
そう、私とレペテは魔力媒体を使わずに魔法を使っていた、それは魔力に余裕があり、魔力操作がある程度できたからこその方法だった。
本来であればアリア先生の言うように身の丈に合わない魔法を使えばその分魂が傷つく。
「魔力媒体は魔力を正常に取り出し、魔法に変換出来ます、そしてそれは人によって異なります」
そわそわと落ち着きなさそうな男子生徒達が目につく。自分の理想の魔力媒体を思い浮かべているのだろう。
「先生の魔力媒体は杖です、軽く小さいため、持ち運びが便利で、魔力操作を向上させてくれます…ただ少し強度に欠けますが」
アリア先生は腰にさしていた一本の明るい茶色い木の杖先を見せるように天井に向けた。
「それから小回りもききますし、狭い所では良く役に立てます、ただ威力が少し心もとないです、治癒魔法を目指す方が入学時に選ぶのは杖のことが多いですね」
初期装備の選択は初期ジョブも決められる。杖を選べば魔法士、剣を選べば剣士か魔法剣士、グローブなら拳闘士、斧なら重戦士となる。今後これから能力値の伸ばし方で転職先が増えていくが、最初のジョブはこの五種になる。
例えば杖を選択する者で、水属性か光属性の治癒魔法を覚える者がいたとする。その者の転職先に白魔法士が増える。これに転職することで、新たな杖と、治癒魔法の向上が見られる。
魔力媒体は転職毎に召喚するか、もしくはダンジョンやイベント報酬から入手か、そのどちらかしかない。
店で買うことは出来るが、正直、死んだ人達の初期装備が回ってくるだけなので自分で召喚した方がマシだった。
「今のあなたがなれる姿を魔法陣が見せてくれます、希望の姿を強くイメージすることで、選ばれた武器が召喚できます」
主人公は流石というか、五種好きなものを選ぶことが出来る。私が選ぶものはもうハウロスの心臓の結果で決まっていた。
「さぁ、皆さん、配布した布と羽根ペンで黒板の魔法陣を書き写してください、今後も使うことになるでしょうからその布は持ち帰って良いですよ」
ゆっくりと丁寧に黒板の魔法陣を書き写していく。丸に、四角、三角といった簡単なもので組み合わされただけの魔法陣はそんなに難しくはなかった。




