You Choose → 隨ャ笆?味隧アA?W
【あなた】
温かな世界。
愛する人がいる。
亡くなった大事な存在もいる。
痛みもない。
悲しみもない。
苦しみも全部ない。
みんな笑っている。
争いもない。
別れもない。
永遠に幸せだった。
――。
【天】
武道館ライブはあの後中止になった。武道館は静寂に包まれ、奏の意見に同意してくれる人は誰一人いなかった。俺たちは追い出されるような形で武道館を後にした。なんとか、みんなに俺たちの思いを伝える方法はないかと考えたがいい案は出ず。
だから、俺たちは諦めた。俺たちだけでも、現実を生き続けるでいいじゃないかと言う結論に至った。
愛が笑って。
翔さんが煙草を吸って。
虎が「腹減った」と言って。
蓮が本を読んで。
蘭さんが料理を作って。
奏が歌って。
幸せだ。
本当に幸せだ。
……。
数か月が過ぎた。
もう俺たちしか残っていない。みんなAWへ行き、現実世界はAIにまみれていた。
AIたちは俺たちを見る度、問いかける。
「どうしてAWへ来ないの?」
優しく微笑んでくる。責めるでもなく怒るでもなく平坦に言ってくる。だからこそ、怖い。
〜〜〜♪
「……愛?」
スマホが鳴る。愛から電話が来るなんて珍しい。
『アイコーポに来て』
ぷつっ。
俺はアイコーポへ向かう。入口の自動ドアが開く。
ひんやりとした空気が漏れ出てくる。
「お待ちしておりました。小鳥遊様」
従業員が出迎えてくれる。エレベーターへ案内され、地下へ。
地上からどんどん離れていく。どれくらい下に行くのだろう。
日の光が全く入ってこない。人工的な光だけが俺を照らす。
…………従業員は何もしゃべらない。
エレベーターが開き、従業員がパスコードを入力する。すると、重々しいドアが開かれた。中には——。
真っ白なAWポッドが七台も並んでいる。
愛が一人、ぽつんと立っていた。 愛は穏やかに笑っている。
「どうしたんだよ、愛。急に呼び出したりして」
愛は何も言わず、近づいてくる。 張り付いた笑顔を浮かべながら。
俺は思わず後退りをする。
「な、なんだよ……」
鼻先がくっつくくらいの距離。 普段であれば、俺は赤面していただろう。
「見て?」
愛がAWポッドを指差す。
訝しげに思いながらも俺は、ゆっくりと近づく。
ドクンッ…… 。
汗が一筋ながれる。
ドクンッ……ドクンッ……。
呼吸が、荒くなる。
ドクンッドクンッドクンッ……。
あ。
ああ。
「ああぁあぁぁぁああぁぁあああ!?」
AWポッドの中には、いや、そんな、そんなわけない。みんなで、約束した。約束した!
こんなの嘘だ、嘘だ、嘘だっ!! 信じない、信じない、信じないぃいいぃいい!!
俺はポッドから目を背ける。心臓が、呼吸がうるさい。頭が今の状況を処理しきれず、涙が勝手に出てくる。
いつのまにか、愛が俺の後ろに来ていたようだ。
「見て」
愛が俺の顔を両手でつかみ、無理やりAWポッドを見させる。
「や、やめろ! 見たくない!! 見たくないぃいいいい!!」
そこには——。
俺の仲間たちが収容されていた。
「なんで!? なんで!? なんでだよ!! あぁぁああぁあああっっ!?」
「小鳥遊くん」
低い声が静かな空間に落ちてくる。
「これが物語の結末だよ」
愛と並んで笑う、愛のお父さん。
「さあ。君はどうする?」
AIたちがぞろぞろと俺の周りに集まってくる。手や足を持ち上げてくる。
「やめ、や、やめろ! やめろおぉおおぉお!!」
バタバタともがくが数十いるAIに勝てるはずがない。 俺の最後の足掻きも虚しくAWポッドの中へ押し込まれる。
「卑怯だぞ! 俺たちがAWに行きたがらないからってこんな無理やり……!」
「俺は心苦しかったんだよ。小鳥遊くん。やっと君たちを案内できてうれしいよ」
愛のお父さんの目の焦点が合っていない。そして俺の質問の答えになっていない。こんなの気が触れているとしか言えない。二人してAWポッドに入った俺を見下してくる。作り物の冷え切った目に俺は恐怖しか感じることが出来なかった。
「AIだらけの世界は辛かったろう? 君もこれでようやく一緒だ。よかった。ヨカッタ」
「天。ヨカッタね。みーんな、これでずっと一緒だよ?」
背筋が凍るほどの恐怖を感じつつも俺は……。
「それでも、俺は現実を……」
プシュゥ……。
AWポッドの蓋が閉まると同時に俺の視界が白く染まっていく。
最後に聞こえたのは、AIの機械音声。
「AWへようこそ」
愛が笑って。
翔さんが煙草を吸って。
虎が「腹減った」と言って。
蓮が本を読んで。
蘭さんが料理を作って。
奏が歌って。
幸せだ。
本当に幸せだ。
……。
…………。
これを、繰り返す。
ずっと。ずっと。
ずー……と。
——。
どこか遠いところで声が聞こえた気がした。
「ゲームオーバーだ」
もう一度、選びますか?
▶ 現実を、生きる。




