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AI WORLDーそれでも現実を選ぶー  作者: とっぽい
第4章 仲間と信頼
29/46

第29話 覚悟

※ 挿絵があります。(AI生成ではありませんが苦手な方はオフ表示お願いいたします)

 俺と奏は下の方から聞こえてくる音に顔を見合わせる。階段を上ってくる足音だ。

 ……こんな時間に?

 俺は非常階段の手すりの隙間から下を覗き込む。薄暗くてよく見えない。


カツン

カツン

カツン


 一定だったはずの足音が徐々に乱れ始める。


カツン、カツン、カツカツカツッ!!!

 

 背筋に冷たいものが走った。

 そして。


パチ


 一度だけ鳴る拍手。

 続いて。


パチパチパチパチパチ


 大げさで、場違いで、心のこもっていない拍手。その瞬間、俺の全身から血の気が引いた。聞き覚えがある。この拍手をする人間を、俺は知っている。


「ばぁっ! 何日かぶり? 相変わらずのナイト様ねー。感動しちゃった」

「校長……!」


 虎にボロボロにされたはずの校長が現れた。……でも、おかしい。あんな体にされたはずなのに傷が一切ついていない。困惑と驚愕が顔に出ていたのか校長はケラケラと笑う。


「傷ついた体はスクラップにしたわ。案外人形も快適なものね。こんなことなら早めに乗り換えておけばよかったかも! ねえ、奏、最高よね?」

「そんな簡単に体を捨てたんですか……」


 奏の顔には明らかに不快さが滲み出ていた。俺も同じく不快だ。奏に対してその発言は聞き捨てならない。


「だって器でしょう? 壊れたら新しいの使えばいいじゃない」


 そう、校長には俺たちの倫理観が通用しない。この話すだけ無駄な感覚が気持ち悪い。


「——奏ちゃんだって、壊れたから新しくしたでしょう?」

「……っ!」


 気づけば俺は校長の胸ぐらをつかんでいた。それでも校長は不敵に微笑んでいる。


「黙れ黙れ黙れ!」

「あらー。そんな怒った顔しないで?」


 校長は俺の手を掴む。視界が一気に逆さになり浮遊感。その後、視界が揺れ背中に激痛が走った。


「がっ……!」

「天!?」

「人形ってホント便利ね。疲れないし、お腹もすかないし、眠くもならない。力だってどんどん湧いてくる!」


 非常階段の手すりが歪む。俺はその歪んだ手すりに沿ってズリズリと横たわる。今になってようやく状況の理解が追い付く。


「天に酷いことをするのはやめて! あなたの目的は何なの!?」

「あ、そうそう。私がここに来たのはね。奏ちゃんでまた実験したくて」

「……っぐ、はあっ、はっ」


 背中を強く打ち付けたせいかうまく呼吸が出来ない。まともに言葉が出ず、うめき声になってしまった。この期に及んで実験だと?


「AIとして生まれ育った奏がAWに行ったらどうなるか? 楽しそうでしょ?」

「私が、AWに……?」


 奏は、校長から後退りしながら距離をとっている。そうはさせまいと校長は奏が後退りした分だけ前に出る。


「AIがAWへ行ったらどうなるか知りたい。……それに、天くんの絶望する顔も見られる。一石二鳥じゃない?」


 体を左右に揺らしながらケラケラと笑う。


「っていうのを今思いついちゃいましたー!」


 校長は奏の頬を両手で押さえ、奏を真っ直ぐ見る。


「AWに行くためには、AWに行きたいって思うこと。AIによる精神の干渉をすること。奏は誰よりも幸せにしがみついてるもんね? AW行きたいもんね?」

「奏から、離れ、ろ……クソ野郎!」


 俺は息絶え絶えになりながらも校長の背中に飛びかかり羽交い絞めにする。

 だが……。

 ああ、畜生! なんでこうもビクともしないんだよ! 岩に抱き着いているみたいだ。


「しつこい男は嫌われるのよー」


 校長は俺を背負ったまま後ろへ倒れる。


「だ、だめっ!」

「……っ!」


 奏が校長の手を引き衝撃は抑えられた。が、後頭部を思い切り打ち付け、背中に二度目の強い衝撃。視界が上下に揺れる。意識……が、遠の…………。


——ありがとう。天。


「……」


 ゆらり、と。立ち上がる。

 視界が霞がかって夢の世界にいる感じだ。


「あらー。頭。しかも後頭部打ち付けた後は安静にしてた方がいいのよ?」

「お前には分からねぇよな……」


 千鳥足になりながら校長の胸ぐら再び掴む。


「大切な人を守れなくて、俺が何回、何十回、何百回……後悔したと思ってる」


 目の前が何度も真っ白になりかける。だけど俺は校長を睨み続ける。俺は、もう二度と迷わない!


挿絵(By みてみん)


「奏は、俺が、守るんだっ……!」

「もう、飽きたわ。そろそろ、死、」

「ぬのはおめぇだよクソ野郎」


 上の階の非常階段の踊り場から落ちてきた影。その影は光る線をバチバチと煌めかせて校長の首元に一閃食らわせる。


「あっ、がががっぎぎぎあああっっっ!!!」


 校長は悶絶しながら倒れる。


「と……虎」


 俺はついに気が抜けて奏に支えられるようにしてへたり込んだ。


「夜にドッタンバッタンうるせぇんだよお前ら。うるせぇと思ったら、愛にスタンガン押し付けられて『虎お願い!』とか言われて部屋から追い出されたしよ」


 非常口のドアが勢いよく開き、愛たちも駆け込んでくる。


「天! こんなにボロボロになって……。どんだけ無茶したの!?」

「AIの校長に単身で勝てるわけないだろ馬鹿」


 蓮が心底呆れかえっているのが表情を見なくても分かった。


「んで、このクソ野郎どうすんだよ」


 虎が校長を足蹴にしている。


「か、かかか……。私を壊してもねー。また蘇ってくるからねー。バックアップとってるから不死身なの。あ、ははは、ははははははは」

「……いちいちうるせぇなコイツ」

「ふがっ!」


 スタンガンを口の中に入れて黙らせる虎。それでもモゴモゴと何か言いたそうにしている。






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