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AI WORLDーそれでも現実を選ぶー  作者: とっぽい
第4章 仲間と信頼
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第27話 真相

【天】

 朝起きて、処置室に行くとすでにみんな集合していた。マネージャーを囲うようにしている。マネージャーは椅子に座らされていた。目は開いているのに、誰とも視線が合わない。悪い人だと分かってはいるが、酷い顔色をしていて同情しそうになった。翔さんが煙草をふかしながら蘭さんに質問する。


「外傷はない……みたいだが、どんなエグいことをしたんだ」

「やだ。翔、子どもたちをビビらせないの」


 バシィっと翔さんの肩を叩く蘭さん。俺は虎の横にそそくさと近づき、耳打ちをする。


「……何したんだ?」

「知らねぇ方がいいぞ」


 くぁー。と猫のような欠伸をする虎。昨日あまり寝ていないのか、目が半開きで眠たそうにしている。


「……さて、手筈通りお話しして頂戴?」

「……奏は知りすぎたんです。アイコーポのことを」


 誰一人、口を開かない。処置室を支配するのは、マネージャーの声だけだった。


「児童養護施設の子たちが実験に利用されていること、国に内緒でAI人形を日常に紛れさせていること。そして、自分がAIであること」


 奏は俯き、下唇をぎゅっと噛んでいる。


「だから、俺は、指示を受けたんです。嵐山管理者にスクラップにしろ、って……」


 校長の奴……。俺は奥歯を噛みしめ怒りを堪える。


「マネージャー。私があの日、相談した時。もうその指示が出てたの……?」

「仕方ないじゃないか。俺にだって養わないといけない家族がいる! 上の命令には逆らえない! それに……」


「——ただの人形だろ」


 と、マネージャーが言った。……頭の中の何かが切れる音がした。

ゴッ。

 …………? 拳がひりひりする。


「おい、天。そういうのはオレの役目だぞ」


 気づくと、マネージャーがソファに横たわっていた。……初めて人を殴った。…………全然すっきりしない。嫌な気分だ。


「人形だって? 笑って、泣いて、悩んで、苦しむ奏が人形……? ふざけるなよお前……」


「アイコーポが作った人形だ! それをアイコーポの人間がどう使おうが自由だろ!」

「お前はマネージャーとして奏と長い間関わってきただろうが! それなのにそんな感情しか持てないのか!」


 マネージャーの顔は歪み、耳を両手で塞いでいた。まるで、自覚させられるのが嫌だと逃げるように。……前の俺の姿と重なって、俺はより苛立ちを感じてしまった。


「奏と積み重ねてきた時間を全部なかったことにしたんだぞお前は! 奏は……お前を、お前を信用して相談したのにっ……」

「……天。ありがとう。もう、いいよ」


 奏が赤くなった俺の手を優しく包む。


「……マネージャー。私は確かに人形です」

「奏……」

「だけど、私には感情も思い出も大切な人もいる」


 しっかりと意志を持って一言一言力強く話す。


「……そこに、人間とか人形とかAIとか関係あるんですか」

 マネージャーが泣き崩れた。ごめんなさい、とか本当はしたくなかったとか、どうすればよかったんだとか、嵐山管理者が人形だからどうでもいいだろって言ってきたからとか……ぐちゃぐちゃな言葉をとめどなく言っていた。横にいる奏を見る。奏も俺のことを見る。その顔は、やっと言いたいことを言えて満足している様子だった。


「……奏がベランダから落ちるように仕向けたんです。そして、その後の処理はアイコーポでやりました」


 マネージャーが落ち着いたころを見計らって再び独白が始まった。


「その後は、アイコーポへ疑念を抱く一歩手前の記憶データを持った奏のAIを、再び新しい人形に入れたんです。そして、暴走防止としてアイコーポへの疑心を抱かないように、アイコーポの秘密を言わないようにというコードを入力しました」


 ……独白が終わったようだ。マネージャーは魂が抜けたように項垂れている。


「じゃあ、奏は落ちた時の記憶はないんだな……」

「うん。その記憶を保持した私はベランダから落ちて亡くなってしまった」


 悲しそうな表情をする奏。


「……奏は奏だぞ」

「……うん」


 力なく微笑む奏。……こんな顔させたいわけじゃないのに。


「これが物語の真相か。全く、誰も幸せになりゃしないな」


 翔さんは頭を抱えている。自分が関係したAI技術がこうも紆余曲折して利用されるなんて思ってもいなかったんだろう。


「結局、人間の問題だな」

蓮は吐き捨てるように言った。

「……AIは悪くない。扱う人間がもう少し優しい人ばかりだったら、こんなことにはならなかったのにね」

愛は静かに瞳を伏せる。虎は何も言わない。ただ、どこか遠くを見つめていた。


「そうです。私みたいな思いをするAIが、人が……。これ以上でないようにしないとダメだと私も思います」


 奏は力強く言い放つ。


「私、みんなに……、人にもAIにも私の気持ちを聞いて欲しい。話し合いたい」





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