第11話 生け捕り
※AI生成のイラストを挿絵として使用しています。
【天】
AIが追ってきていないことを確認し、一度足を止めて呼吸を整える。
「はぁ、はぁ……。びっくりした。これから、翔さんの家に向かう、でいいんだよな? 蓮は生徒会が忙しいからもう少し時間かかりそうだけど」
「ふぅ……天の学校は変わりなかったの? 今みたいなAIいなかった?」
変わり……、まではいかないけど。少しだけ気になることはあった。
「あのさ……。さっき、校長に探りを入れたんだけど」
「あら、仕事が早いね」
「いや、接触はできなかったんだ。校長室の前にいたら、教頭が全く気配感じさせず近づいてきて」
とにかく、不気味だった。
「ふぅん」
愛が首をかしげながら俺の話を聞いてくれる。
「俺、びっくりしてそのまま逃げてきたんだけどさ」
「それだけ?」
「それだけなんだよ」
「……でも、天がそこまで言うなら少し気になるわね」
「限りなく材料は少ないんだけどな」
こんなことで疑ってたらキリがないなとは思う。愛はスマートフォンの画面を見ながらどうしようかと考えているようだ。
「まだ、奏ちゃんと会うまで時間があるし。グループにメッセージ入れといて調査継続しよう」
「ええ? 翔さんと合流してからの方が良くないか?」
「だって。もう16時だよ? 翔さんのところに行ってからだと教頭帰っちゃうでしょ」
「それは、そうだけど」
「善は急げ、よ。ほら、戻るよ」
生徒が下校して、部活動をしている生徒と教職員しかいなくなった。体育館からバスケットボールの弾む音。校舎外からは地面を蹴り上げる音、ボールをキャッチするミットの音。いろいろな部活の音が聞こえる。放課後の学校って割と賑やかなんだなと考えながら、校長室へ向かう。
「ここ、ね」
愛はトントンとノックをする。
「ちょ、ちょちょ! 何してんの!」
「ノックだけど?」
「いや、そうじゃなくて!」
ノックしても反応はない。……誰もいないようだ。
ギィィ
「いや。だからさ!」
勝手に校長室の扉を開ける愛。
「………。ずいぶん、綺麗に片付いているね」
愛が疑問を口にする。
「綺麗好きなんじゃないのか?」
「いつからいないのかな。校長」
「え……?」
窓のサッシを、ツーっと指でなぞる愛。
「綺麗すぎる」
自分の人差し指をじっと見つめて埃一つ付いていないことに疑問を感じているようだ。
「校長を最後に見かけたのはいつ?」
「校長って一般生徒の前になかなか出てこないから分かんないよ」
「そう。教頭はさっき天に校長は忙しいと言ったのよね? 忙しいのにこの綺麗すぎる空間……机の上も整いすぎている。普通、忙しかったらもう少し乱れているはずだけど。他の先生たちも校長のことよく知らないみたいだしね?」
愛は矢継ぎ早に推理を並べていく。ここに来るまでに他の教員に対して校長や教頭について聞き込みをしていた。校長は最近、学校に顔を出していないって。先生方、口を揃えて言っていた。
「なんか賑やかそうな人っていう印象は残ってるなぁ」
その時、背後に突然気配が現れた。
「勝手に入るのは感心しないね」
「うわっ! また!」
「なるほどね」
音もなく現れる教頭。まるで幽霊だ。
「校長は忙しいんだよ」
「へぇ。何に忙しいのかしらね」
愛がニヤリと微笑む。
「AWから戻れなくなっちゃったとか?」
教頭の顔が無表情になる。真っ黒な目。口は横に一と書いたような無表情。
「校長は、校長は、校長は、校長は、校長は、」
「ひっ……、愛、これ、やばい……」
愛はポケットに手を突っ込む。
「やっぱりね。翔さんの予想通りだったわ!」
ビリビリビリ、愛の手元から電流が迸っているのが見える。そういえば翔さん、朝、愛になんか渡してたな。……もしかして、スタンガン?
愛は教頭に向かってスタンガンを突く。
が……。
「女子生徒はお淑やかであるべきだ」
「ちょっと! 離してよ!」
猪突猛進過ぎたのか手首をガッツリと握られてしまい、まんまと捕まってしまう。愛は掴まれていない方の手で教頭の頬に平手打ちを喰らわせようとするもこれもダメ。両手首を握られ互いに睨み合っている。
「AWへ、行かないか?」
「そんな、まやかしの世界行くわけないでしょ!」
愛の手から落ちたスタンガンが床に転がっている。教頭は今、愛に夢中……!
俺は、その判断に至ると同時に床を蹴る。体勢を低くしてスタンガンを拾い上げる。
拾ったけど、このままスタンガンを使ったら愛まで感電しちゃうよな……!
「もう! 離してって……」
愛が足を振りかざす。
「言ってるでしょ!!」
教頭の金的へクリーンヒット。
「ぎ、ぎぎぎ!? ぎがが…、が」
愛が拘束から逃れた!
俺はスタンガンの電源を入れ、教頭の後頚部に向かって思い切りスタンガンを突き立てた!
バチッ! と鋭い音が一瞬、響き渡る。小刻みに体を震わせ、白目を剥き、床へ倒れ込む。
「お、わわ……」
なんとも言えない感触が手に残る。愛は教頭の顔をツンツン突っついている。反応はない。
「生け取り完了。天。翔さんの家に持って行くわよ」
「え、え、えええ?」




