表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わりの世界のリグレット。  作者: つい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/15

第7話 目標設定2

 ――さて、目をそむけるわけにもいかないだろう。


 この町が、ここまで崩壊している理由。私はエネルギー切れで、敵国の町で眠っていた。周辺は瓦礫がれきの山ばかりであり、私自身には一切の傷がついていない。


 ――これが、何を意味するか。


 ――――()()である私が敵国ですることなど、破壊以外に何があるだろうか? 


 初めは、リグレットを幼女型の人造人間だと警戒けいかいした。激しく撃ち合いかわし合い、その戦闘の余波よはでこうなったのだと予想した。


 だが、リグレットは人造人間ではなく、ただ巻き込まれた一般市民であった。


 ――私の記憶媒体きおくばいたいに保存されている、数多あまたの戦闘記録。当然、エネギリアとの戦いを記録したものも、数多かずおおく存在する。


 リグレットが母親と別れることになったのも。


 満足いく量の食事が出なくなったのも。


 外出を禁じられたのも。


 ――その全ての原因を辿たどっていけば、そこに私の影がある。


 ……私は、戦局せんきょくに大きな影響を与える『超兵器』である。それ一つで容易たやす戦況せんきょうをひっくり返し、相手に手立てだてが無ければ、必ず相打ち以上の結果をもたらす、『超兵器』である。


 私は超兵器として、激しくエネギリアを追い詰め、侵攻しんこうげ、堂々と休眠状態という隙をさらしても問題無いほど――全てを、破壊してしまったのではないか?


 ……現状、その記憶は無いのだから、分からないことだ。だが、仮に私の戦闘服分をふくめた最大容量のエネルギーが、完全にからになるまであばれたのだとしたら。


 ――エネギリアが完全に機能を停止していても、不思議はない。


 しかもそれなら、敵地で休眠状態になるというリスクのある作戦も、一応は納得なっとくできてしまう。敵を全て破壊してしまえば、私の回収にリスクなど無いのだから。




 私は兵器で、それが存在理由である。




 これで後悔だとか、自己否定だとか、そういった気持ちは起こらない。自分を激しく疑い、責め立てるその行為こういは人造人間にとって、非常に危険であるのだから。よっぽどのことがない限り、それは起こらない。


 戦闘で敵を破壊し、敵国を追い詰め、自国に勝利をもたらす。それだけが私の存在意義だ。これを否定してしまってはいよいよ、私は所属も存在意義も失って、自己が崩壊ほうかいするだろう。


 ――思考停止。再起動。


 ……分からない事ばかりだ。だが、私が一切の無関係とは思えない。それだけは、確実に言える。


 長い旅のすえ、記憶を取り戻したその時。私とリグレットの関係は、どうしようもなく残酷なものになるかもしれない。だが……それでも、私は、記憶を取り戻す必要がある。


 何があったのか。何をしたのか。何をするべきなのか。


 私は、何者であるのか。


 これらが曖昧あいまいなままでは、人造人間は生きられない。


 これらを生きながら探し、その曖昧さすら、生きる醍醐味だいごみの一つである人間と違って、人造人間は生まれたその瞬間から、明確に役割が決まっている。それ以外の生き方はできず、求められておらず、人造人間自身ものぞまない。ただ、自分はそうあるべきだと思うのみである。


 ――さて、リグレットの母親を探すと言うのは、達成できるかという事を考えなければ、目標として色々とてきしている。


 仮にリグレットが、母親が来るまでこの町で待つと言い出せば、私はそれに従うしかない。なぜならリグレットが居なければ、私は動くことができないのだから。


 だが、母親を探すのであれば必然ひつぜん的に、あちこちへと移動をすることになる。それは情報収集をおこないたい私の目標とも合致する。それに、リグレットの興味を広めると言う意味でも、この町にとどまらずに移動をしたいとは考えていた。


 ……達成できないかもしれないと言うのが、大問題ではあるのだが。


「……では、改めて。今後の目標を整理しましょうか」


 なんにせよ、私は、『記憶を取り戻す』。リグレットは、『母親を探す』。目的地は、『エネギリアの首都』。それぞれの目標と、この旅自体の目的地。それが決まった。問題はあるが、世の中、大抵たいていそうであるように、まず行動を起こし、適宜てきぎ調整をしていくのが一番だろう。


 今後の計画としては、まず、しばらくは、私の回復に専念。そのあいだに消費する物資は、この施設に残されていたものを使用する。


 少し私が動けるようになったら、この施設の外の探索をし、物資と情報を集める。


 私のエネルギー、物資、ともに余裕ができたら、町を転々とし、そこでリグレットの母親探し、物資調達、情報収集をこなす。


 それで、エネギリアの首都に着いたとき。――そこが、旅の終わりだ。どういう形になるかは分からないが、私とリグレットの旅に、絶対的な()()()が来ることだろう。


 それまで私は、リグレットを守り続けよう。


 ――流石さすがにそろそろ、自分の所属が不明瞭ふめいりょうなのも、落ち着かない。だが、こうして目標が合致したおかげで、ようやく自身の存在を定義できる。


 ――人造人間にとって、所属は大切だ。『私』を形作るものとして、絶対に必要な要素だ。


 私は、私の記憶を取り戻すその時まで、リグレットを守る。


 リグレットの存在は、私が目標を達成するのに必要であり、この兵器の体は、リグレットを守るのに、十分な力をゆうしている。


 ……定義するにあたって、不合理な点はない。守るという目的と、そのための、兵器という手段。すじは通っているだろう。


 改めて、そして明確に。今の自分の存在意義を定義する。


 私は『記憶を取り戻す』という、目標を達成するために、この終末世界のあらゆる脅威きょういからリグレットを守る。それが役割であり、私が今ここに存在している理由である。


 ――そう、定義する。これからは、それが基準になる。私のこれからの行動指針こうどうししんは全て、『別れるその時まで、リグレットを守る』。それを基準にして、物事を判断し、行動を起こす。


 ……これで、リグレットと別れるまでは、判断に迷うことがない。自分の存在意義を、疑うこともない。――リグレットを守るためには、今どう動くべきか? と、全ての思考がそこに集約しゅうやくされ、常に最善をくす。人造人間とは、私とは、そう言う存在であるのだから。


「――――では、リグレット。よろしくお願いしますね」

「……うん!」


 私の差し出した手を、リグレットは両手で掴み、ぎゅっとにぎった。


 ……そう言えば、ひとまずの友好関係が確定したわけだが……リグレットは愛称あいしょうで呼ばれたがっていた。


「……リグレット。早速ですが、魔力の補給をお願いしてもよいでしょうか?」


 ……ただ、一度拒否しておいて、今さら急に「リグ」などと、呼び方を変えるのも変かもしれない。リグレットももう、それほど気にしていないようであるし。


「うん! エフがはやくげんきになるよーに、リグもがんばる!」


 張りきった声を上げて、リグレットが抱き着いてくる。


 ……呼び方はともかく。この補給の時間も、私は、いつも直立不動を維持いじし、されるがままだった。だが、協力関係が決まった今、私もあゆみ寄る姿勢しせいを見せるべきだろう。


 私は自分のうでを、リグレットの背中側に回し、腰のあたりを支える。姿勢が安定したところで、私は腰を引いて、ひざを曲げて――。


「……わっ! ……えへへ」


 リグレットを抱き上げた。


 嬉しそうに笑うリグレットを抱きかかえたまま、移動し、ベッドに腰を下ろす。


 リグレットの尻を、私の膝の上に安定させて、リグレットが倒れないように、背中側から腕で支える。


 ……合っているのだろうか、これで。


 もちろんこんなことをした経験も、された経験も無い。私の中に蓄積ちくせきされている知識の中から、最適だろうと判断できる行動を選択し、実行しただけなのだが……。


 ――リグレットは喜んでいるようだし、まあ、いいだろう。


 それからしばらくの間。たわいない会話にきょうじながら、リグレットの疲労感が出るまで、私の魔力の補給を続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ