表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わりの世界のリグレット。  作者: つい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/15

第5話 施設探索

「あっ! ここ! ここだよ!」


 目的地に到着とうちゃくしてすぐに、リグレットは明るい声でそう言った。


 どうやら、合っていたらしい。先ほどの場所から十五分ほど歩いた所で、公園の入り口――であっただろう場所――の向かいに、くずれた建物が存在していた。リグレットの様子を見るに、ここが目的地の避難所で間違いないようだ。


「……まったくの反対方向でしたね」

「……ごめんなさい」

「あっ、いえ……怒っているわけではないのですが」


 私としては軽口かるくちのつもりであったが……私に愛想あいそが無いからだろうか。なごむどころか、リグレットがおびえる結果になってしまった。……まだ、先ほどの失敗を引きずっているのかもしれない。


 崩れた建物の中に入ってからは――中に入ると言っても、壁も天井も穴だらけで、建物としての機能は失っている――またリグレットの先導せんどうに戻り、地下へ続くとびらの前まで案内してもらう。


 扉は、ひらきっぱなしになっていた。リグレットがここから出たさい、閉めずにそのままにしておいたのだろう。


 リグレットと二人で扉に入ったあと、閉めようとしたのだが……よくリグレットはこの扉をけられたものだと感心するほど、扉には重量があった。本気で取り掛かれば開けることはできただろうが、それでもかなり力が必要だったはずだ。


 ……リグレットの態度たいど露骨ろこつに現れているわけではないが、起きたら自分一人で、誰も居ないと言うのは、心細く、強い焦りがあったに違いない。必死だったのだろうと、想像がつく。


 地下の空間はそんな重量のある扉で守られていたおかげか、それともやはり、地下という条件が良かったのか。階段を降りた先は荒れておらず、私とリグレットの二人が雨風をしのいで過ごすには、十分な環境があった。


 階段を降りると通路に繋がり、その通路をはさむようにして、左右に部屋がある。ただそれだけの、シンプルな構造だ。リグレットはその通路を歩いて、通路の右側、一つの部屋の前に来ると、「リグ、ここでねてたの!」と言い、扉を開けて中に入っていった。


 部屋の中は白を基調きちょうとしており、下にカーペットが引かれた、丸いローテーブルが一つと、ベッドのそばには、大きい椅子いすと小さい椅子が、一つずつ。ベッドは頼りない、折り畳み式の、簡易ベッドだ。


 白く無機質なこの感じは、病室のような雰囲気があった。


 ローテーブルの上には、リグレットが飲み食いしたのであろう、簡易食の包装紙ほうそうしや、飲料水の空のボトルが散乱していた。


「あっ……おかたづけしてない……!」

「……別に、怒りませんよ?」

「ホント……? よかったぁ」


 やはりどこかズレた呑気のんきさを感じる。……完全に気落ちしてふさぎ込んでしまうよりは、それぐらい気楽でいてくれた方がいいだろう。


 ――そう言えばと、リグレットはのどかわきを訴えていたことを思いだす。


「リグレット、教えてください。これらの水などは、どこで手に入れたのですか?」

「えっとねー……うえのへや! ゆかにね、おちてたの」


 上……というと、完全に崩れて、建物としては成立していない地上部分のことだろう。崩壊ほうかいした室内に散乱していたものを、回収したのだろうか?


「この食料や水は、まだありますか? それと、できれば、この建物全体を案内していただきたいのですが」

「うーん……リグもよくわかんない。はいっちゃダメってところ、いっぱいあったし。このごはんもね? たまたまみつけたの」


 リグレットはこの建物にくわしくないようだが……まあ、それは問題ではない。なんとなくいてみただけだ。仮にここで案内を受けたとしても、後で、私自身の足で探索はするつもりであった。


 ――とは言えこの感じ、施設としての機能はほとんど失われているだろう。よって、探索で得られる情報や利益は、それほど期待できない。最低限、食料などは見つかるとは思うが……。


 これで例えばシャワー室などがあり、それが生きていれば――。


 そこまで考えて、この部屋は電気がついていることに気づく。


「リグレット、この電気は?」

「でんき? ……あー、えっとね……なんだっけ」


 必死に「あー」「うー」と言いながら、リグレットは頭をひねっている。そして――。


「そう! じん、かん、せんさー……? ってゆーので、リグたちがおへやにはいると、でんきがついて、いなくなると、きえるの!」


 ……違う。知りたい情報はそれではないのだが、まあいい。


 地上部分はどう見ても崩壊しているが、地下はまだ電気が生きているのかもしれない。


 世情せじょうを考えても、停電や断水が起きたところで、それなりの対策がなされているはずだ。


 一般家庭なら限界もあるだろうが、リグレットの話を聞く限り、ここは子供の教育もねた避難所と言った場所のようであった。よって、今日明日のすぐさま、何もかもが止まるという事は、ないかもしれない。


 食料も同じく、まだ貯蓄ちょちくはあるだろう。


 リグレットが言うには、食事が出ない日もあったそうだが、本当に、一切の貯蓄の全てを放出していたとは考えにくい。


 貯蓄を切り崩しながら、それでも、これ以下には絶対に減らさないという、基準があったはずだ。


 気になるのは、リグレットが起きると誰も居なくなっていた、という話だ。事実、この場所に人の気配は無い。


 この施設を放棄ほうきしたのであれば、食料は持てるだけ持っていかれた可能性が高い。……それでも、少しはこの施設に食料類を残しているだろうと私は考えているが。


 そして、保管場所として考えられるのは……。


「リグレット、また少し、魔力をいただいていいですか?」

「うん、いいよ!」


 抱き着くリグレットの体から、私の中に魔力が流れ込むのを感じる。その状態で、しばらくして、全体の三パーセントほど回復したところで、リグレットに離れるように伝える。


「少し、食料を探してくるので、リグレットはこの部屋に居てください」

「うん……。で、でも……エフ、ばしょわかるの?」

「まあ……予想ですが、なんとなく。そこに無ければ、外を探してきます。どのみち、一度この部屋に戻ってきますから、動かないように」

「わかった!」


 ピッと音がしそうなほど、大袈裟おおげさ姿勢しせいをよくするリグレットを見てから、私は通路に出て、各部屋を見て回る。


 ――――いくつか見て回ったことで、部屋の使われ方の傾向けいこうが見えた。


 階段の降り口から見て右側の部屋は、リグレットが隔離かくりされていた、病室的なインテリアの部屋。子供たちに、何かあった時に使用する空き部屋だろう。


 それに対して左側は、書類や様々な物品が保管されている、この施設の大人たちが管理運営のために使っていたであろう部屋。リグレットが言う「入っちゃダメな所」に該当がいとうする部屋たちだと思われる。


 ――つまり、食料保管庫があるとしたら。


 施設運営の機能を持つ左側の部屋に探索をしぼり、各部屋を見て回る。


 そして、一番奥まった部屋に着いたとき、その部屋だけかぎが付いていることに気づく。私の予想が正しければ――ここだ。


 普通であれば管理室的な部屋から、鍵を探すところではあるが……その鍵も、持ち出されている可能性がある。よって今回は、別の方法でこの扉を開けることにする。


 私は、人造人間型『兵器』である。よって――扉を破壊するだけだ。この程度、少し力をかけるだけで十分だろう。爆発を起こそうと言うわけではない。よって、この地下空間が崩れる心配も不要だ。


 扉に、左右の手のひらを押し当てて――出力強化。


 勢いよく押し込むと、扉はわくから外れて、バタンと倒れる。


 ……扉は金属製だったので、かなり大きな音が出たが、リグレットが飛び出してくる様子はない。私との約束を、しっかりと守ってくれているようだ。


 そんなことを頭の片隅かたすみで考えてから、すぐに破壊した扉の先、部屋の中へと意識を向ける。


 部屋の広さは、他の部屋と全く同じ。内装は通路を確保しつつ、いくつも木棚きだなが並んでいるだけで、木棚以外に家具らしきものは無い。


 木棚のほとんどはからだが、上も下も注意深く見ていると、残されている食品を見つけることができた。


 ――予想通り、ここが食糧庫で間違いないだろう。


 木棚の間を歩いてさらに探索すると、一箱分ではあるが、水の入ったボトルも発見する。


 水と食料の存在が確認できて、ひとまず安堵あんどする。最悪の場合はすぐにでも物資調達に出る必要があるかと思ったが、数日はまだ、エネルギーの回復に専念できそうだ。


 改めて残された食料類を確認すると、食事とするには調理が必要な食材や、量を持ちはこぶには重たい食材が中心に残されている。これらは大抵たいてい、その代わりに腹持ちがいので、ありがたい。


 ――リグレットの話では、子供の数はずいぶんと減っていた。これが戦争の激化を理由にするのであれば、管理側の職員だって、子供たちと同様に、様々な要因でその数を減らしていたことだろう。


 仮にこの施設が放棄され、根こそぎ物資が持っていかれていたとしても、それでも、少しは残っているだろうという確信が、私にはあった。


 例えば、水などは数を持てばその分、重量が出る。屈強くっきょうな兵士の集団であるならともかく、リグレットと同年代の子供たちと、少人数の大人の集団だ。民間の施設だろうし、大規模な車両などでの運搬うんぱんも不可能と考えると、持ち運びできる荷物の総量は、それほど多くない。


 だから、無理をせずに持ち運び可能な分だけを運び出し、必要であれば、あとからこの施設に戻って回収すればいい。そう考えるはずだと予想していた。


 鍵をかけておけば、盗まれることも無いだろうという対策だったかもしれないが……残念ながら私の前には、鋼鉄こうてつの扉であろうと無力だ。


 扉を破壊してしまったことで、稼働かどうしていたかもしれない空調設備は無駄になるが……見たところ、鮮度が落ちやすい食材は無く、むしろ、多少雑な管理でも、鮮度が落ちにくい物ばかりだ。……まあ、私はそれを想定していたので、問題無いと判断し、壊したのだが。後で回収も視野しやに入れていたなら、電気が止まる可能性もあるわけで、そのあたりも、選んで残されているのだろう。


 ひとまず、箱から水のボトルを一つ取り出して、リグレットのもとに戻る。食材ははリグレットの、空腹の具合を一度確認し、それから量を選べばいいだろう。……残念ながら、種類の方はほとんど選べない。


 雨風をしのげる拠点きょてん


 少しの間の、食料類。


 リグレットの生存のために必要な、すぐに解決すべき課題は、拍子抜ひょうしぬけするほど簡単に解決した。


 ――さて、ここからだ。


 ここから、具体的にどう動いていくのか。リグレットの、今の意向いこうも気になるところだ。


 その辺りは食事の際に、リグレットと話しながら、詰めていくとしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ