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終わりの世界のリグレット。  作者: つい


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第14話 探索2

 一時間ほど進んだところで、遠くに、形の残った、大型の建物が見えてくる。


 ――今のところ、それは病院であったり、大学であったりするのだが、今回はどうだろうか。


 さらに近づいていくと、どうやら大学や病院とも、雰囲気が違いそうだと分かる。


 そして、入り口が見えたところで、確信する。この施設が私が求めていたものであると。


 ――時間としては、ギリギリか。


 ここまで一時間。という事は、往復で二時間。昼間の探索は、短ければ三時間、長くても五時間程度で考えている。そのうちの二時間をただの移動で使うと言うのは、かなりの無駄むだではある。


 同心円状どうしんえんじょうに探索範囲を広げてきたわけではなく、拠点からただひたすらに、一方向に進んで来た。なので、別方向の探索に行けば、もっと近場で同様の建物が見つかるかもしれない。


 だが、ここまで来て、なおかつ、目的の建物を見つけて。それで何も持たずに帰ると言うのも、馬鹿な話である。


 ここはむしろ、成果ゼロの手詰てづまりという最悪を回避できたと、喜ぶべき場面だろう。


 私は急いで入り口から離れ、近くの瓦礫がれきに身をひそめる。


 ――目的の建物は発見した。あとは、あそこを拠点にしている人間たちがいないか、それの確認が必要だ。


 警戒は強めに、敵対存在が占拠せんきょしているという想定で、必要なら、排除も視野に入れる。


 ――聴力強化。


 …………人間の、話し声のようなものは聞こえない。


 室内で、座ってごく穏やかな会話などなら聞き取れない可能性もあるが、今の聴力強化は、かなりエネルギーをつぎ込んだ。これで聞こえないのであれば、この建物内に人間はいない可能性が高いと言ってもいいだろう。


 聴力強化も一応、『超人的機能』の一つではあるのだが、その中では消費が少ない部類だ。その使いやすさから、索敵さくてきや情報収集なんかに重宝ちょうほうする。小さい音も大きい音も、一定にして拾うので、聴力強化中に大きな音がしても、聴覚ユニットが馬鹿になる、みたいなことは起こらない。


 ――さて、聴く限りでは人の気配けはいが無かったが、それでも、目視で確認しながら、慎重しんちょうに進む。


 私はいよいよ、ショッピングモール跡地の建物へと、足を踏み入れる。


 ――中は想像よりも、綺麗に残っている。


 広範囲を探索して分かったのだが、やはり破壊の度合いにはムラがあるようだ。流石さすがに無傷の建物は見かけなかったが、このショッピングモールのように、それでも建物と言える形を残している地域もあれば、完全に瓦礫の山と崩れた建物ばかりになっている地域もある。


 初めは、エネギリアの都心近くほど壊れているのかと思ったが、そうでもないようだ。比較的破壊が少ない――比較的と言う話であって、都市機能は完全に沈黙している――地域が続いたと思ったら、また破壊の激しい地域になったりする。


 それで言うと、特に、私とリグレットが出会った町は、破壊の度合いが大きい地域のようであった。


 意識を探索に戻して、様々な店を見ていく。


 形が残っているとは言ったが、それは外観の話であって。中に入れば、完全にもぬけのからとなっているスペースもあったりするのだが……。


 止まっているエスカレーターをりて、地下に向かうと、食品売り場に当たる。




 ……こんなに残っているとは。




 冷蔵冷凍が必須ひっす生鮮せいせん食品は、どれも大変なことになっているが、そうではない非常食などは、残っている。


 流石にこのお店の平時の営業時に比べたら、たなはスカスカと言っていいだろう。だが、確実に『残っている』と断言できる程度には、食品類が残っている。


 ただ、それは今はいい。実際、食品類は種類にとぼしいというだけで、量自体は現段階でも、そこそこ足りてはいるのだ。


 私は飲料を販売しているフロアに向かう。


 そして、




 大きく安堵あんどする。




 これだけで、何日分になるのだろう。食料類の棚の様子から、飲料はそれほど期待できないと思っていたが――なんということか。むしろ、飲料の方が充実している。


 水、炭酸飲料、コーヒーに紅茶。それと、アルコール……は、除外するとして。


 ――これは、どういうわけだろうか。


 人間にとっては食料よりも、飲料の方が重要であるから、真っ先に無くなるものだと思ったのだが……どういうわけだか、棚の半分を埋める程度には、残っている。


 さかんに生産された結果、消費が追い付かず、売れ残っている……などだろうか? それにしても、今なおこれだけ残っているのだとしたらまるで――。


 ――世界の崩壊ほうかい後、誰もここに来ていないみたいだ。


 そんなにも急速に、ことごとく、人類は滅んだというのだろうか。


 判断が難しい。人類は想像以上にあっさりと滅ぶ気もするし、想像通りに、しぶとく命を繋ぐ気もする。


 ――まあ、今はいい。私の不完全な記憶で、戦争が与えた影響を考えたところで、結局、記憶を取り戻してみないと答えが出ないという結論に行きつくだけだ。


 これまで人が来た痕跡こんせきが無いということは、今日明日で物資がれる心配は、無いかもしれない。


 もちろん、いつまでもここが見つからない保証は無いが、思えばここは、街中からは離れている。この大きな建造物を後から建てるために、適当な山でも切り開いて、スペースを確保したのだろう。平時であればバスなり各自の車なりで来れただろうが、現状、普通の人間が歩きでたどり着くのは、かなりしんどい。


 それに、仮にたどり着いたとしても。


 私の写真記憶能力を使えば、飲料のボトルが減っているとか、配置が変わっているなど、すぐに分かる。非武装の人間相手なら、私の力でどうとでもなる。


 人の痕跡を確認したら、待機し、捕縛し、状況次第ではそのまま殺害。もし仮に何か、生かすメリットがあれば、その限りではないが。


 ……()いて言えば、リグレットの精神的支柱になれるような人間であれば――思考停止。再起動。


 私は地上部分に戻り、大型ショッピングモールならあるだろうと考えていた、服を探す。


 言うまでもないが、ファッションと言うものを知らない。


 よって、適当に目に入った、貫頭衣かんとうい……ではなく、白いワンピースを手に取る。理由は、着脱が被るだけで、楽そうだからだ。


 そう言えばと、リグレットもボロボロの服を着ていたことを思い出す。


 リグレットにオシャレをしたい気持ちがあるかどうかは分からないが……例えばこのボタンが付いている服は、一人で着脱できるか怪しい。シャツだズボンだスカートだとか、細々(こまごま)と別れているのは、管理が面倒だ。


 私はすぐ近くにあった、サイズ違いの、同じ白いワンピースを手に取る。


 あとは地下のフロアで、飲料をバックパックに、詰め込めるだけ詰め込んだら、潮時だろう。探索は大成功であった。


 そう考えながら、地下に戻り、水を中心に詰め込む。


 一応いちおう、コーヒーや紅茶も一本ずつ入れて、リグレットの反応を探ってみることにする。炭酸飲料は明らかな嗜好品しこうひんであるし、反応を探るまでもなくリグレットはこのむだろうから、持ち帰るのは次回だ。……アルコールは論外ろんがいである。


 持ち帰るべきものを持ち、現状の棚の様子などを記録し、いよいよ、私はリグレットの待つ拠点へと帰る。


 大きく跳躍ちょうやくをすると、着ているワンピースが激しくはためくが……まあ、この程度なら、行動の阻害そがいにはならない。


 行きよりも物資が増えた分、背中に頼もしい重みを感じながら、私は拠点への道を急いだ。

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