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終わりの世界のリグレット。  作者: つい


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第13話 探索

 ――大きな事件もなく、順調じゅんちょうにまた一日を終える。


 今日で、エネルギーの回復期間として想定していた、三日目が終わった。リグレットと出会った初日も加えると、もう四日も、リグレットと行動を共にしていることになる。


 ……まあ、エネルギー状況の改善がされたくらいで、現状を理解する情報に関しては、なんの進展しんてんもない。よって、リグレットとは四日どころか、もっと長い期間を共にすることになるだろうが。


 今まさに、夕食を終えて、魔力の補給も終えて、眠りについたばかりのリグレットを見る。


 今日もよく眠っている。


 夜の探索のことを考えて、眠りに入ったリグレットの、中途覚醒ちゅうとかくせいがあるかどうか。毎晩確認をしていたのだが、少なくともこの数日では、一度も無かった。


 私の現在のエネルギー残量は、六十パーセント程度。――普通規模の作戦を終えた後と同等、と、言ったところだろうか。


 普段であれば補給に戻るが――正確に言えば、私にあるはずの、『基地で補給を受けている記憶』は封印されているので、戻っていたはずだが――場合によっては、そのまま作戦に行くこともある。


 ――続けて作戦に行くと言っても、いざと言う時は、戦闘服にある追加エネルギーを当てにしてそういう行動を取るので、現状はやはり、エネルギー不足ではあるのだが。


 それでも、これはちょっと驚くべき事態だ。


 一日十パーセント、合計で、三十パーセントでも回復すればいいと思っていたが――まさかその倍量も回復するとは思わなかった。


 ……これなら、少しくらいは無計画に使えるかもしれない。


 ……いや、別にエネルギーがあるからと言って、それ相応そうおうに、派手はでに使う必要はなく、基本は無いものとして、節約を意識するべきではあるのだが。


 なんというか――咄嗟とっさの判断は、しやすくなると思う。


 例えば先日の、リグレットの母親の写真が、風で巻き上げられた時。


 私は一瞬とは言え、莫大ばくだいなエネルギー消費と写真を、天秤てんびんにかけた。


 結果、写真は取り返しがつかないと結論を出して、行動に移せたのだが――もしあの時、今ほどのエネルギーがあったら。飛行機能は使わず、跳躍ちょうやくで届く範疇はんちゅうを写真がただよっているうちに、同じように回収ができただろう。


 あの時はとにかく、エネルギーの消費をおさえることを目的としていた。そのため、行動に移す前に、判断の時間を挟むことになった。


 もちろん、私の主目的は『リグレットを守る』ことなので、リグレットに危険がおよぶ事象――例えば、瓦礫がれきの山がくずれるなどがあれば、思考する間もなく動く準備はあった。


 だが、「写真が風にさらわれる」というのは、直接リグレットに危害が及ぶものではない。写真が回収不可になったそのの影響を考える必要があり、その思考を挟んだ結果――それでも、決断は早い方だったと思うが――対応が遅れたといっていい。


 また何か――「すぐさまの危険ではないが対応すべき事態」に遭遇そうぐうした時、エネルギーに余裕があれば、先のことを判断材料として検証する前に、「とりあえず」で、動ける。


 そういう意味で、少しは無計画に、理由をる前に、エネルギーを消費できる。そういう話だ。


 さて、探索自体は今夜からでも可能だが……まあ、今夜はまだ待機するとしよう。


 急ぐ理由はあるが、あせってもいいことはない。これだけエネルギー残量があれば高速移動もできるし、視力強化もできるし、腕力わんりょく強化で瓦礫の除去じょきょも可能。


 当初とうしょは、跳躍で移動の効率化をはかれたら良い程度に考えていたが、それよりも圧倒的な効率が出せそうだ。


 ――それに、万が一リグレットが起きないとも限らない。


 もちろん、リグレットに、私は探索に出るという話はしている。だが、今日から出るとは言っていない。


 ――起きたら、誰もいない。これは軽く、リグレットのトラウマになっているかもしれない。


 明日ちゃんと、昼間に探索に出て――「エフは探索でいなくなることがある」と、リグレットがしっかりと認識をしてからの方が、リグレットの精神的にも安全だろう。


 リグレットの穏やかな寝顔を、もう一度確認してから。


 私も待機状態に入り、三日目の夜を終わらせることにした。






*****

「うん! わかった!」


 元気がい、リグレットの返事。


 ――リグレットが「一緒に行く」と言い出す可能性も、ゼロではないと考えていたが……想像以上に物分かりがいい。


 リグレットとしてはやはり、一人残されるというのは、不安で、それは間違いないだろう。――ただし、そこは私が思っているよりもずっと大人おとなで、もう一歩進み、それを言い出すと、私に迷惑がかかる。そう、思っているのかもしれない。


 ……そうだとして、その我慢がまんは、どうやっていてやればいいのか。事実、リグレットを連れていくよりは、私一人の方が、圧倒的に色々と都合がいい。


 ――思考停止。再起動。


 まずは、物資の確保だ。初めての、本格的な探索である。今日がダメでも、あと二日。夜も行くなら、さらにその倍以上の探索機会が残っていることになるが、早く安定するにしたことはない。


 それに、早くに安定すればその分、そのリグレットの我慢を解いてやることにもつながる。今、明確に判断できて、リグレットのためになる事と言ったら、それだろう。


 リグレットに見送られながら、胸のうちに、そのようなことを考えて。


 私は探索に出た。






 外はよく晴れていて、明るい。


 度々(たびたび)リグレットと散歩には出ていたので、久しぶりの外だという感じもしないが――完全に一人で外に出るのは、リグレットと出会った初日、周辺の敵対存在を取り急ぎ確認する必要があった、あの時以来である。


 ――さて、闇雲やみくもに瓦礫の山を一軒一軒、回っていくのは効率が悪い。


 探すべきは、大型の瓦礫。形が残っていれば、なお良いのだが。


 狙うのは、大型のショッピングモールなどだ。過去の作戦でも、物資を現地調達するとき、食品工場であるとか、ショッピングモールであるとか、そういったところを襲撃し、回収することがあった。


 ――と、言うのは人間たちも同じように考えるだろうから、ライバルが多そうで、もっと言えば、そこを拠点に大人数おおにんずうが集まって立てこもっているような場合も考えられるが……。その時はその時で、様子見だ。


 ――私はまだ、素体そたいを隠せていない。リグレットが寝ている間に、軽く今の拠点も見て回ったのだが、服のようなものはなかった。


 やろうと思えば布をいてマントのようにし、体を隠すことも可能ではあるが……それは動きが阻害そがいされそうなので、やめておく。隠していた方が都合が良さそうと言うだけで、絶対に隠したいというほどではない。


 敵対存在を確認した時に、半径五百メートルは確認済みで、暗かったとはいえ、大型のショッピングモールのような建物は無かったと記憶している。


 よって、探すなら、遠出とおでをする必要があるだろう。


 当てはないので、なんとなくで方向を決めて、私はあしにエネルギーを込める。


 大きく跳躍をして、移動を開始した。

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