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終わりの世界のリグレット。  作者: つい


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12/15

第12話 存在の定義

昨日は投稿できなかったので、本日は二回投稿です。二話目は夕方頃に投稿します。

 私とリグレットに、別れは必ず来る。これは確定事項だ。本来はまじわることがない立場同士であり、このままいつまでも一緒というのはありえない。


 親密になれば、その別れ自体が、リグレットの心を深く傷つける可能性がある。――なら一定以上、リグレットからの信頼を得るべきではない。


 ……だが、リグレットのことを突き放しながら今後を過ごすというのも、現実的な話ではない。


 リグレットは今、不安定で、何か寄るを求めているのは明らかだ。


 それに、別れが来るとは言っても、先の話で。その時までは少なくない時間を二人で過ごすのだし、私自身も、リグレットの助けが無ければ、行動不能になってしまう。そう考えるとやはり、ある程度は良好な関係をきずいていた方が、色々と具合がよく日常が回るだろう。


 ……今、一つ言えるのは、距離感を間違えてはいけない。私は、自分がどう言った存在であるか。それを忘れてはいけない。


 ――私は何もかもを破壊し、戦争を動かす『超兵器』だ。おさない少女の心の支えになれるような、そんな殊勝しゅしょうな存在ではない。それは、私にはできないことであるし、私自身も、そうなりたいとは思わない。


 もし――もしもだが……リグレットが少しでも私に、母親の面影おもかげを見ているのなら。


 ――私は、母親の代わりにはなれない。


 これだけは、はっきり意識をしておく。


 ひとりで心細い思いをしたリグレットは、過剰かじょうに私になつきやすくなっているふしがある。あの歳で、このような経験をしているのだ。それは仕方ないだろう。


 リグレットは今、寄る大樹たいじゅを選べない。別に私でなくても、なんなら、大人おとなですらない、同年代の子供であっても。


 とにかく、()()が必要だったのだ。


 だから私が、距離感を間違えてはいけない。私は、私自身の目的を達成するその時まで、リグレットを守る存在、兵器である。


 道中どうちゅう、良好な関係を築くのはよい。だが、分不相応ぶんふそうおうに、他人の心の支えになろうなど、考えてはいけない。


 




*****

 リグレットによる絵本の読み聞かせが終わり、それから少し、とりとめのない会話を楽しんで。


 リグレットにまた、おかゆと、茹でたいもを作り。


 リグレットがそれを食べ終えたのを確認してから、私の食事――魔力補給をしてもらう。


 ある程度補給を続けたところで、リグレットに限界がきたようで、あっと言う間に眠ってしまった。


 ――今日は散歩で体を動かしたり、精神的にも、色々と激しい日であった。かなり疲れがあるのだろう。


 ――さて、幼い少女と言うのは、理論上、最も魔力の保有量が多い存在ではあるのだが……それにしたって、かなりのものだ。


『超人的機能』のうち『飛行機能』は、エネルギーの消費量が高い部類の機能である。それを一瞬の使用ではなく、滞空たいくう、加速しての高速飛行など、その機能を存分ぞんぶんに使った。


 それでも、私のエネルギー残量は、この一晩、探索できそうなほどある。


 今はエネルギーをためる時期なので、今晩こんばん、探索に出ることはないが……この回復量は、完全に想定外だ。もちろん、いい意味で。


 瓦礫がれきの山で、初めて会った時。


 あの時――リグレットがこわごわと私に抱き着き、魔力補給をしたあの時に、私に流れ込んできた魔力の量と、今の魔力の量。


 比べると明らかに、今の方が、効率がくなっている。


 魔力はまだ、その仕組みなどは解明されていない。


 ただ、数少ない判明している事実の中に、魔力の放出量は、その人間の状態に左右される。と、言うのがある。


 肉体的な健康などが一番分かりやすいが、それ以外にも、人間にとって『不調』と言うものは色々ある。


 ――初めて出会った、あの時。リグレットは孤独こどくで、どうしようもなく不安であっただろう。


 それが今は、少し安定している。


 そう考えると、リグレットの放出魔力が増えている――正確に言えば、元の出力に戻っている――と言うのも、説明がつく。


 もう一つ、リグレットの魔力放出量が増えた理由として、可能性があるとしたら――これはまだうわさ程度の話で、解明されてはいないのだが――。


 歴史書などの過去の文献ぶんけんをみると、当然そこにも、『魔力持ち』であったのだろう人物たちに関する記述を発見することができる。


 そう言った人々は宗教関係者に多く、例えば人の手をにぎりながらいのることで、その人の怪我けがや病気がなおった。――と、いったような記述がある。


 当時はもちろん、『魔力持ち』なんて言葉はなかったのだから、「神の祝福しゅくふくを受けた者」だとか、それが女性なら、最も多い呼び方が『聖女せいじょ』であった。


 この話から飛躍ひやくして、魔力の放出には、『気持ち』が大切だとく集団がいた。


 相手のことをおもい願う力。それこそが魔力の大きさに関わる要素であるという主張だ。……結局けっきょくそのまま、「だから、とうとい魔力を単なるエネルギーとして利用するのはやめろ」だとか、もっと直接的に、「兵器利用をやめろ」だとか。……私にとっては都合の悪い主張に繋がるわけだが。


 ――まあ、そのような理由の特定はともかくとして。実際に、リグレットの放出魔力量が増えていると言うのは、ありがたいことである。


 正直、私のエネルギーの回復が十分にさえできれば、大抵たいていなんでもできると言っても過言ではない。


 魔力が十分にあれば、夜の探索も、夜目よめかせた視覚強化で強引にできるし、町と町の移動だって、高速移動、必要があれば飛行も可能。腕力わんりょく強化で大抵は突破でき、高速演算こうそくえんざんによる、疑似的ぎじてきなな未来視――本当に、なんでもだ。


 すでに何度か利用して確認が取れていることだが、私の『超兵器』としての機能などは、そのままそなわっている。――ただ、エネルギーだけが枯渇こかつしていたので、きびしいやりくりを考えなくてはいけなかったのだ。


 ……こうなってくると、戦闘服の追加エネギーパックが無いことがやまれる。


 我ながら贅沢ぜいたくだと分かってはいるが、探索の進み具合、物資の貯蓄ちょちく量などの状況次第では、もしかすると、私の本体分のエネルギー容量を完全に埋めることも可能かもしれない――。


 ――服。


 そう言えばと、自分の身体を見下ろす。


 完全に露出ろしゅつした、素体そたい


 何か、隠すものが欲しい。


 私は普通の兵器型なので、乳首も生殖せいしょく器も存在しない。どちらも体のごく一部の話で、要素としては細かい部分だが、一目で分かる部分である。


 それに、やっぱりどこか、人間とは違う印象がある。


 大まかな造形は同じだし、人工皮膚もあるので、見た目はそこまで機械然とはしていないのだが……なんとなく、メリハリが無いと言うか……のっぺりとしているのである。


 生物的なゆがみが無さすぎるせいだろうか? 作られたのだから当然だが、人間の体に比べるとやはり、ととのいすぎていると言うのが、違和感に繋がっているのだと思う。


 ――この体をさらすのは、余計なトラブルを引き起こす可能性がある。だから、隠すものが欲しい。


 この時世じせいなら、人造人間と言うだけで警戒けいかいされるだろう。基本的には無警戒でいてくれた方が、色々と都合がいいので、体は隠しておいた方が良いだろう。体さえ隠しておけば、ただの少女にしか見えないはずだ。


 この後、例えばどこかの避難所にうまく合流をしたとして。私とリグレットは……髪色も顔だちも違うので、姉妹には見えない。――このあたりの上手い嘘も、リグレットと口裏を合わせておいた方がよさそうだ。


 ――それにしても、まさかここで『少女型』の空気と化しているメリット、「民間人にまぎれる時、警戒されない」と言うのが生きてくるとは思わなかった。


 大義名分用の、それっぽい理由だろうと思っていたが、こんな風に、本当に役立つ可能性が出てくるとは……。


 私は探索する物品リストに、手ごろな服を追加。


 やるべきタスクに、私とリグレットの、対外たいがい的に表す関係の整理、および、共有。

 

 探索に出ない。リグレットも起きていない現状、私が今できることは無くなった。


 そう判断し、私は待機状態に入った。

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