TEXT54:Scylla~進行度3~
---- 同時刻
ベルベットの床には割れたワイングラスや高価な酒瓶が散乱し、それに交じるように薬莢も散らばっていた
「くそ・・・玉切れ狙うしかないのかよ・・・」
バーカウンターの物陰に潜み、深く深呼吸をする美琴は近くに転がっていたコルク瓶を手に取り高く上空へと投げる。するとすぐさまソレに反応したアルバは搭載された自動小銃の銃口を向け発砲を開始した
「ーーー っ!!」
もちろん、これは囮である。その隙にバーカウンターの脇から転がり出て、刀を構えたまま美琴はアルバに襲い掛かった。
ーーー 並みの人間では到底不可能な動き。しかしそれも【神結システム】が成せる技なのである
神経に同調するように張り巡らされた粒子の欠片、その一つ一つが神経、そして脳に直結し自分とシンクロするデウスロイドの動きを可能な限り模造する
サイバーネクス技術が当たり前になったこの時代で、今だその技術を独自に作り上げたのは日本以外存在しないだろう
・・・ 経済や発展に対しては他の国に劣ると馬鹿にされてきたが
ーーー その〝神の座に届かんとする精密な技術力〟は誰にも負けなかった
「ーーー 一刀、一閃。」
美琴の切っ先がアルバの側頭筋に狙いを定める。ここを貫きさえすれば脳と直結するCPU部分にダメージを与えられるはずだった
「ッ!?」
しかし、その瞬間アルバの節足部分に鈍く光る鋭い鎌のような刃が美琴に襲い掛かった。澄んでの所でその攻撃を避け、また物陰に隠れるが右の額を切ったらしく赤い血がだらりと流れて皮膚や衣服を濡らした
「ヴィクターの外道・・・・用意周到ってわけかよ」
ぐい、と血を拭い美琴は物陰に隠れながら静かに思案する
ーーー 予定通りなら、おそらくツヴァイが戻ってくるはずだ。
そして、フランチェスカは無事に逃げ切れたのだろうか・・・。
「(冷静に考えれば・・・フランもああなるってことだよな)」
そう思案すれば、心の中に怒りの炎が静かに燃え上がっていくのを感じた
「・・・・・・恨まれるよなぁ。たぶん」
刀を構えて静かに目を閉じれば、アルバと楽しそうに会話をする廻の姿。どこまでも幸せそうな、温かい笑顔
「・・・・・・」
ーーー 嫌、それでも止まるわけにはいかないのだ
あの日、あの業火の中で
全てを奪った奴らに復讐すると決意した時から
自分はもう、止まるわけにはいかないのだ
『ーーーー 美琴、おい、聞こえるか、美琴』
不意に、脳内にツヴァイの声が響き美琴の意識が浮上する
『今、そっちに向かってる。坊やのメンテナンスも完了だ。こっから一気にーーー』
「ツヴァイ、お願いがあるの」
静かに、美琴の声が響く。通信先のツヴァイは怪訝そうに声を漏らした
『・・・あぁ?お願い?』
「うん。」
静かに目を開き、握られた日本刀を抜き放つ
「ーーーーーー とどめは、私にやらせて。」




