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自作ダンジョンで最終ボスやってます!【動く挿絵付き】  作者: ITSUKI
第一章:ダンジョンできました
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第12話:魔物ハンター組合へ行こう(1)

 ヤトカイの町。

 ここからそう離れていない場所に、通称で「魔物の森」と呼ばれる場所がある。

 魔物が大量に生息し、強力で凶悪な魔物も頻繁に現れる。

 それら魔物を倒して得られる魔石を求めて、魔物ハンターが集まって来る町。


 この町にある魔物ハンター組合。

 町の防衛としての魔物の狩りと、主な産業といえる魔石の収穫。

 ふたつの重要な業務を仕切る組合である。


 ここは、その組合の本館。町の中心街にある大きな建物。

 今日の業務が始まって間もなくの頃。


 一階フロアにある受付前の待合席にいるのは十数名の男女。

 それぞれの理由でそこに待機している魔物ハンターたち。

 騒ぐ者もおらず、人数の割には静かな館内だった。


 そこに玄関扉に取り付けられている来客を知らせるベルが鳴る。

 受付の女性が顔を上げて、館内に入ってきた人物を確認する。


 十代前半の少女。右肩の側で人形が浮いている。

 少女はシェリル。浮いている人形はソラだった。



挿絵(By みてみん)



 その時突然、男性の叫ぶ声が館内に響く。

「うおぉ!」

 声を上げたのは、待合席の傍で立っていた男。

 もちろん魔物ハンターであろう。精悍な顔つきの見た目二十代前半の男性。


 その男はシェリルの方を向いて、顔色を蒼くして数歩後ずさる。

 そのままフロアの壁に背中をぶつけ、ずり落ちてフロアの床に座り込む。

「どうした!」

 仲間らしい男性が声を掛けるが、座り込んだ男の耳には入らない。


 別の方向からも女性の声が聞こえる。それは言葉にならない声。

「あ……っ、あああぁ……」

 と、待合席で座ったまま、怯えた表情でシェリルを見ている。

 長髪をうなじの位置で束ねた若い女性。女性二人組のひとりのようだ。

 相方の女性が、怯える彼女の肩を抱きながらシェリルに不審げな視線を向ける。


 ――あの二人、御主人様の能力を感じたようね。


 男と女が見せた反応からソラはそう判断する。

 ただ、知られて困るモノでもない。

 御主人様の威光が知れ渡るのなら悪くない。

 揉め事にならなければそれでいい。


 ――取りあえず釘を刺しておこうかな。


「はーい、静かに。武器とか出さないでね」と全員に聞こえるようにソラが言う。


 さすがに魔物ハンター。喋る人形に驚きはしても狼狽する者はいない。

 しかし、シェリルの力を感じた二人の男女の様子が、彼らに緊張を強いている。

 原因がこの少女と人形にあると薄々と感づいているハンターたち。

 彼らは不測の事態に遭遇した時の対応を、職業柄しっかりと身につけている。


 そんな周囲の騒ぎを気にも留めないシェリル。

 待合席の間を真直ぐ進み、館内の様子にキョトンとしている受付嬢の前に行く。

 そして元気よく「はい!」と両手で大事に持っていた手紙を差し出す。

 ここまでソラとの打ち合わせ通り。


 その手紙の表書きには――、

『ダンジョンできました。シェリルより』と大きく書かれている。


「とりあえず中を見てから、対応できる人を呼んでちょうだい」


 シェリルに代わって、ソラが戸惑っている受付嬢に伝える。

 その言葉を受けて、オドオドと手紙を開封して内容に目を通す受付嬢。


『ダンジョンを作ったので来てください。あたしが最終ボスやってます――』


 手紙の出だしを読んだ受付嬢がシェリルの顔をマジマジと見つめる。

 そして右に浮いている人形に視線を向けて無言で首を傾げる。

 先を促す様に頷くソラ。


『場所はここからあっちの方にまっすぐ行けばあります。よろしくお願いします』


 読み終えた受付嬢が首を傾げたまま席を立つ。

 それから窓際にいた恰幅の良い中年男性の席に行き、何やら相談を始める。

 ソラは受付の前で浮かんだまま、その様子を眺めていた。


 しばらく話をしている中年男性と受付嬢。

 やがて説明を聞き終えたのだろう、中年男性がこちらに視線を向ける。

 それは、まるで胡散臭いモノを見るような目であった。


 その態度を見たソラ。途端に表情を険しくする。


 ――あいつが相手だとちょっと面倒になりそうね。


 そう考えて隣りを見ると、シェリルがニコニコ笑っている。

 あるじの笑顔を見て心を落ち着けるソラ。


 ――まぁ、なるようにしかならないか。


 そんな風に思い直して、しばらく待っていると……、

 戻ってきた受付嬢に「こちらに」とシェリルと共に奥の部屋に案内される。



 ◇ ◆ ◇



 シェリルとソラが視界から消えた受付前の待合席。

 緊張の原因が去ったと思い、一息つくハンターたち。

 壁際では、未だに床に座り込んでいた男を相方の男が椅子に座らせている。


「すまない、バルド……」

「グレイ、どうした。お前がそんなに狼狽うろたえる姿は始めてだぞ」

「あ……、あの少女は……魔族だ。それも桁外れの魔力を持った……」


 そう告げた男の声は震えていたが――、

 静まり返っていたフロアに響き、そこにいたほとんどの者の耳に入った。


 そしてもう一組の方、言葉にならない声を上げていた女性とその相方。

 男性二人組の会話を耳にして、相方の女性が話を切り出す。


「シオリさん、あっちのふたりの会話って本当っすか……?」

「本当よ……。アカネ、あの魔族が暴れたら、……この町は一瞬で壊滅よ」


 その話を傍で聞いていた年配の男。

 魔族と思しき少女に怯える男と女――グレイとシオリを交互に見て話しかける。


「あんたたち二人とも相手の能力ちからがわかるスキルを持っているのか」

「……そうだ」「……そうよ」


 自分のスキルを白状するグレイとシオリ。

 これだけ目立ってしまい、もう隠しても意味がないと悟ったのだろう。

 いや、今そこにある脅威を皆に知らせるには、それしかないからだろうか。


「能力のない俺が見た限りじゃ、悪さをしに来たようには……」

「目的が何だろうが、あの魔族の少女の機嫌を損ねたら、この町はお終いだ……」


 グレイの言葉に、成り行きを見守っていたハンター達の顔に動揺が浮かぶ。

 その時――、

 誰もが押し黙った静寂の中、フロアの奥からけたたましい音が鳴り響く。

 それは誰かが物凄い勢いで階段を駆け下りてくる音。


 現れたのは二十代後半に見える長身の女性。二階から血相を変えて降りてきた。

 そして、そのままの勢いで、近くにいた職員に声を掛ける。


「おい、強烈な気配を感じているのだが、何かあったのか!」

「あっ、組合長! 先程手紙を持った少女が現れて……」

「それで!?」

「ハンターの方が云うには魔族のようだと……、今は部長が話を聞いています」

「あの能無し部長が相手をしているだと!」


 組合長と呼ばれた女性と職員との会話の内容。

 そして彼女の悲壮感溢れる声は、受付前の待合席にも届き――、


「能無し部長が相手……?」「機嫌を損ねたら町が終わる……?」


 その場にいた魔物ハンターたちの緊張がさらに高まる。



 第十二話お読みいただき、ありがとうございました。


 なお次回の更新は9月1日を予定しています。


※11月4日 後書き欄を修正


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