表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/13

伊織、頑張りなさいよ

 私こと柊紗奈は、今日もミスコンの委員会に出ている。


 うちのクラスの代表は伊織だ。私は本気で、あの子が優勝するんじゃないかと思っている。本人は「僕なんか」と言って首を振るだろうけど。まあ、元々男の子だし、わからないんだろうなぁ。


「じゃあ、以上十五名が参加ですね。一組は――」


 配られた名簿に目を落とす。お、蓮君のクラスの代表は天音ちゃんか。


 あの子も可愛いのよねえ。ふわふわした栗色の髪で、女の私でも抱きしめたくなっちゃう。

 男の子的に、守りたくなる感じかな?

 天音ちゃんのこと好きな男子、私は何人か知ってる。


 蓮君はどう思ってるんだろう?


 ※


 委員会が終わって、資料を抱えて廊下を歩いていると、向こうから見慣れた男の子が歩いてきた。


「お、蓮君」

「ああ、柊か」

「そっちのクラスのミスコン、天音さんなんだね」

「そうだな」


 丁度いい。天音さんのことを聞いてみよう。


「天音さんのこと、どうお――」


「伊織って、お前のクラスの男子に人気あんの?」


「え、あ……」


 思わず言葉が止まった。

 天音ちゃんの話を、まるっと聞いていない。というか、頭に入ってすらいない顔をしている。


 ……これは、思っていた以上だった。


「やっぱ、みんな伊織を推薦したのかよ?」


 あら。


 あらあら。


 伊織のことが気になっているのね。ミスコンに参加することには何も言わなかったけど、蓮君は何か思うところがあったみたい。


 伊織、私はあんたの友達として援護射撃するわ。


「まあそうね」

「やっぱりかよ」

「クラスの男子は満場一致。反対ゼロだったわ」


 蓮君の眉間に皺が寄る。


「授業中も、伊織を見てる男子、多いわよ」

「……」

「あの子、元は男の子でしょ? 結構隙が多いのよね」


 途端に不機嫌になるのが目に見えてわかる。


「どんなだよ」

「男の子と話す時、距離が近いの」

「近いって、どのくらいだよ」

「肩が触れちゃうくらい?」

「はあ!?」

「平気で目の前でかがんだりするしね。この前なんか、消しゴム拾うのに男子の机の横でしゃがんでたわよ。制服の襟、開いてるのに」


 蓮君の顔から表情が消えた。


「それであの子、見上げて笑うのよ」

「……」

「あと、」

「あと!?」

「体育から教室に戻ったとき、男子のグループで話すのね。その時、髪をこう、まとめ直すの。首筋出して。あれ絶対わかってやってないわ。だって本人、汗かいて暑いって顔しかしないもの」

「……あいつ」

「それとこの前なんか――」


 言い終わる前に、蓮君は走り出していた。廊下を、教室のある方へ。先生に見つかったら怒られるわよ、と言いかけて、やめた。


 まあ、半分くらいは話を盛ったけど。

 あの二人には、これくらいでちょうどいい。


「伊織、頑張りなさいよ」


 ※


 教室に戻ると、伊織が蓮君に怒られていた。


「お前、自分ってものをだな!」

「うう、なんで急に怒られてるの?」

「近いんだよ距離が! 男子と話すときはもっと離れろ!」

「え、そんなに近くないよ?」

「近いだろ! 今も近かったじゃねーか!」

「どうして蓮が決めるの?」

「それは……危ないからだ!」

「何が?」

「お前はわかんないだろうが、今の男ってのはだな!」

「ううう」


 肩を落として黙り込む伊織の横で、蓮君は真っ赤な顔をして怒っている。教室の男子たちは全員、見て見ぬふりを決め込んでいた。賢明ね。


「紗奈ぁ。僕、何か悪いことしたのかな」


 すがるような目で見上げてくる。ああ、この顔よ。この顔で男子の隣に立つんだから、そりゃ蓮君も走るわ。


 私は伊織の頭をぽんと叩いた。


「愛されているのよ」

「え? どういうこと?」

「そのうちわかるわ」


 わかんないだろうけどね、この子は。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ