中川邸・ダイニングキッチン
「顔色、だいぶ悪いわね」
刹那が気遣ってくれた、彼女には今朝の夢の内容を伝えてある。
闇に包まれてすぐに、朝香は眼を覚ました。そして玄関を確認すると血のように朱い彼岸花が一九本置いてあった。
明日は朝香の誕生日。駆け出しの声優は貧乏と相場が決まっていて、彼女も例外ではない。それでも、自宅で友だちが持ち寄ったお菓子でバースデーパーティーをする予定だ。
でも、できるのかな……
窓から夕陽が差し込み、部屋の中を茜色に染める。ここは好恵の自宅だ。
「もう少しだけガンバって、明日の朝までには必ず解決するから」
今日はバイトを休んで、先程ここに着いた。刹那も仕事を早退してきたらしい。
「はい、ご迷惑をおかけします」
「そんなに堅くならないで。今日はあたしたちだけだし、ちょっと早いけど夕食&作戦会議と行きますか!」
刹那がテキパキとカレーライスの準備をする。
「腹が減っては何とやらよ。食事をする気分じゃないかも知れないけど、しっかり食べておいてね」
夕食を食べながら、朝香は刹那と現状の確認をした。今晩この家にいるのは朝香と刹那、そして座敷童子の三人だけだ。好恵は事務所に泊まり、遙香も自宅へ戻ってしまったらしい。
「あの人、頼りになるけど当てにはならないから……
あッ、でも安心して! 朝香ちゃんはザッキーが守ってくれるわ。それに、いざと言う時は切り札があるし」
そう言いながら、刹那は胸元から何かを引っ張り出した。
「ネームホルダー?」
「まぁ、使わないで済むことを祈るけど、いわゆる変身アイテムよ」
自信満々にニヤリと笑う。
「はぁ」
ネームホルダーでヒーローに変身するのだろうか? やはり不安は拭えない。
「永遠さんも事務所に泊まるんですか?」
「あ~、あの子は実家に帰ったわ。明日、学校あるし」
御堂永遠は現役高校生だ。あくまで学業優先で声優活動をしている。
「あの男の子……魔物はこの家に来るんでしょうか?」
「実家じゃなく、上京した部屋で怪異は起っている。つまり、魔物は朝香ちゃんを追って来ている、と考えられるわ。魔物の行動範囲は判らないけれど、恐らくここに来たぐらいじゃ逃れられない。
まぁ、全部、師匠の請売りなんだけど……」
出来れば何も起らずに終わって欲しいのだが。
「でも、悪いことばかりじゃないわ。この手の呪いは、遺伝することがあるらしいから、ここで決着をつけたほうがいい。」
つまり朝香が逃れても、彼女の子どもや孫が犠牲になる恐れがあるのだ。
「どっちにしろ、何か起るのは深夜から朝方にかけて。今のうちにシャワーを浴びて仮眠を取っておきましょ」




