コンピニ
「おはよう……朝香ちゃん……調子……どう?」
待ち合わせ場所のコンビニで待っていると、マネージャーの御堂刹那が声をかけてきた。少し息が上がっている、約束の時間まで少しあるが、どうやら急いできたらしい。
「あ、マネージャー……お、おはようございます……」
朝香は刹那の足下に視線が釘付けになった。ブレーブは声優事務所以外に、業界専門の拝み屋をしているとの噂を聞いたことがある。そして、その担当がマネージャーの御堂刹那だというのだ。朝香はそれが事実だと、今、確信した。
「どうしたの? 」
刹那が朝香の顔を覗き込むようにして尋ねる。
「あ、いえ……」
無視しようとすればするほど、刹那の足下にいるそれから目が離せない。
「ホント? 顔色が悪いわよ」
「だ、だいじょうぶです、緊張しているだけですから」
朝香は、ハハハ……とわざとらしい笑い声を上げた。役者なのだから、もっと上手く演じるべきだ。だが、信じられないモノを目の当たりにして、冷静でいられない。
「朝香ちゃん、ザッキーが視えてる?」
ドキリとして眼を見開いてしまう。刹那の足下には、猿に似ているけれども明らかに違うナニかがいる。
「あ、あの……」
「恐がらせてごめんなさいね。でも、ザッキーは良い子だから安心して。って言っても難しいか……
あとでちゃんと説明するから、今はオーディションに集中して」
もちろん集中したい。しかし、周りがそうさせてくれないのだ。夢や彼岸花のことだけでも手一杯なのに、どうして不可解なモノがさらに加わるのだろう。




