第4話
ドラクレスが咆哮を上げる。
突然魔法戦を繰り広げている方を向くと口を開きエネルギーを溜める。
「っ!」
次の瞬間。
破壊のエネルギーそのものが戦場を染める。
爆風が吹きすさび、全てを吹き飛ばす。
敵味方関係無かった。
破壊の後には巨大なクレーターのみが残り、焼け焦げた地面には人影は無かった。
「おのれ!イタチども!」
リックが唸る。
「くそっ、こうなったらドラゴンをエサにして何としてでも本隊に…っ!」
俺はリックに飛び掛かると締め上げ昏倒させる。
「三つ巴はごめんだ。しかし、アイツどうすればいいんだ…」
空のドラクレスを見て呟く。
『シュウ、ゾ・ラースの出力は20%までで押さえて下さい。でないとまた装備が壊れます』
「くそっ、やるしかないよな」
能力を開放する。
その時、上空を旋回していたドラクレスの動きが止まる。
「?」
ドラクレスは一点を見つめていた。
視線を追うと、逃げているドラゴン達だった。
「マズい!」
ドラクレスが降下の体勢に入った。
俺は地面を蹴り、ドラゴン達の逃げる方向へ走り出した。
加速する。
『ドラクレス降下開始しました。目標到達まで3秒!』
「やらせん!」
地面を蹴り、矢の如く空に飛ぶ。
そして、降下していたドラクレスの頭に横から斬り込む。
ドゴンッ。
鈍い音と共に大気が震える。
「硬い!」
ドラクレスが悲鳴を上げ、地面に墜ちる。
数千トンの質量が地面を揺らす。
まるで災害だった。
俺は自由落下で地面に向かう。
「ステラ!斬れないぞ!」
『弱点の首の根元を攻撃して下さい』
「首か!」
地面に落ちた。
「ペッ、砂が凄いな」
舞い上がった砂が大気に舞っている。
大気の震えと共にドラクレスが再び空に舞った。
「飛ばれると攻撃のしようがないな」
『警戒しているようですね。降下する様子がありません』
飛んでいたドラクレスが、再び口を開けてエネルギーを溜め始める。
「引き付けないとマズいな」
走り出す。
取りあえずイタチ族のキャンプの方へ向かう。
ドラクレスもこちらに合わせて向きを変える。
「こりゃ…受けることになるのか…」
『ですね……さよなら装備…』
「チクショー!!」
更に加速する。
『来ます!出力を上げて下さい!』
俺は更にエネルギーを開放する。
『出力40%!いけます!』
ドラクレスのブレスが再び大地を襲う。
破壊のエネルギーが直撃してくる。
全身をジリジリと焼けるような痛みが走る。
辺りの物が蒸発するのが見えた。
ブレスが終わるとまるで草木のない焼け焦げた地面。地獄のような光景だった。
この中に人影が1つ、またしても全裸の男だった。
「お、俺の装備を……」
『言っている場合では無いです!……シュウ、アレを!』
ステラの言う方向を見ると巨大なバリスタ用の矢があった。
『剣も溶けた今、アレしかありません!』
俺は駆け出すと、巨大な矢を掴む。
「後はどうやって当てるか……っ!」
再び駆け出した。
そして、力を開放しながら円を描くように走る。
『なるほど熱上昇気流ですか』
俺を中心に巨大な竜巻が発生する。
そして、そのまま竜巻はドラクレスを呑み込んだ。
走るのを止めると竜巻の中心で矢を構える。
力を溜めつつ、タイミングを待つ。
竜巻に捕らわれていたドラクレスが翼を広げ、風を起こし竜巻を吹き飛ばした。
『今です!』
「見えたっ!」
ドンッ。
大気を震わせ矢が飛ぶ。
煌めく閃光となり、ドラクレスの首元を貫いた。
静寂。
ドラクレスの巨体が落下していく。
ドンッ。
轟音と共に再び大地が揺れた。
風が巻き起こり砂を巻き上げる。
風が収まると、ドラクレスが静かに横たわっているのが見えた。
「ふう…」
能力を収める。
『お見事です……また、全裸ですけどね』
「はは……」
笑えない。
『シュウ、左を見て下さい』
「ん?」
視線を向けるとそこにいたのはドラゴン達だった。
「逃げなかったのか」
『まあ、逃げるところも無いでしょうから』
「…そうか」
シュウはアイテムの入ったキューブから服を取り出すと着替える。
そして、彼女達の方へ向かって行った。
彼女達の前に行くとキューブからダンのポシェットを取り出した。
中身を取り出して入れ替えると、ポシェットを彼女達に差し出した。
「これに現金とカードを入れてある。カードには後でヴァイキングからの報酬を入れておくから確認しといてくれ。それと、ここに書いてある場所に行けば良いよドラゴン達は保護してくれるから」
そう言って行き方の書いた紙も渡す。
「あ、ありがとう」
「良いよ、例は…ダンに言ってやってくれ…どっかで君達を見守ってるだろうから…」
そうして彼女達を送り出す。
「彼女達大丈夫だよな…」
『大丈夫ですよ、ドラゴンですからね』
「そうだな、さてと」
しぶとく生き残ってるリックは連れて帰らないとだし、ドラクレスは高く売れるだろうから後で業者を呼ばないといけないし忙しくなりそうだ。
リックの足を掴むと引きずりながらヴァイキングのキャンプへ向かうのだった。
流石にあの騒ぎに気付いたのか途中まで来ていたヴァイキングに会い、帰りはヴァイキング達の乗っている馬に乗せて貰ったのだった。
キャンプに着くとすぐに呼ばれ、1番大きなテントに向かう。
そこにはトカゲ族のリーダーの他数人に、リックも居た。
リックは俺を睨み付けている。
「話は聞いた、現場も部下に見させた。何か言いたい事はあるか?」
「強いて言うならドラゴンを全部開放してくれ…かな」
「この裏切り者が!」
リックが吠える。
しかし、リーダーに制された。
「ドラゴンを逃がしたそうだな」
「ああ」
「ふむ、本来なら殺しているが……貴様が居なければドラクレスのせいで我々も甚大な被害を被っていたのも事実……よし、貴様の要求飲んでやろう」
「エシャム様っ!」
「黙れリック。ドラゴン達は貴様が先に送り出した者達と同様にしよう。それに、報酬も払おう」
『以外ですね』
正直ひと暴れしないといけないかと思っていたので肩透かしだった。
「もう帰って良いぞ」
そう言って退去を促す。
俺は背を向けると出口に向かって歩きだす。
「そうだ、改めて名乗っておこう。俺はエシャムだ。また、どこかで会うかもな傭兵」
「…俺はシュウだ」
それだけ言ってテントを出た。
テントの出口ではすでに報酬が準備されていた。
「エシャム王の言葉通りにドラゴン達は送らせて頂きます。お帰りは自由にしてくれとの事です」
そう言ってトカゲ族の男が去っていく。
「くえないタイプの奴だな」
『ですね』
ドラクレスの回収をして貰う為に連絡を済ませると、スペースステーションに帰るのだった。
数日後、ドラクレスの査定が終わったと連絡を貰いギルドに向かった。
「いやー素晴らしい素材ですよ。異能ゲノムも獲得出来ましたし、素材もほとんど無傷。言うこと無しでした。ええ」
俺はセールスマン風のアリ族の男と向き合って座っていた。
「ゲノムの異能は高出力のブレスが撃てる能力ですね。売りますか?」
「ブレス!」
ロマンだ。
「い、いや貰うよ」
「ですよね。それで素材はいかほどお売りになりますか?」
「素材か~」
『ドラクレスの素材は耐火性能に優れているため装備を造れば、ほぼ全力を出しても大丈夫かと……必要な部位と場所は……』
ステラの説明通りに伝える。
「はいはい、承知致しました。それではですね残りを全部売るとですね……1兆9000万クレジットになりますね。はい」
「い、いいい1兆?」
「ええ、はい」
「ふ、船が!とうとう宇宙船が買える!」
「ええ、ええ船は大体1兆クレジット程ですからね。それではこちらにサインをお願いします」
サインをするとカードを渡される。
「こちらに全額入っております。そして、こちらがゲノムですね。それでは、また素材屋アリアリをよろしくお願いしますね、ええはい」
そう言って去っていった。
「す、スゲーな一気に金持ちだ!ドラゴン達に5000万ほど余分に送れるし、何よりブレスだ!」
『あの熱線は強力でしたからね』
「早速!」
ゲノムを打つ。
「………なんか変わった気がしないな」
『スキャンの結果、ゾ・ラースに異能ごとエネルギーとして喰われたようですね……しかし、身体強化ランクは2に上がっていますし、出力の最大値も上がっているようです』
「そ、そんな俺のブレスっ!って待てよ。と言うことはこれからもゾ・ラースに勝てる異能じゃないと吸収されるのか?」
『ですね』
ひ、ひどい。
『複数の異能は難しくなりましたが充分強いと思うので大丈夫ですよ』
「ま、確かに…」
『気を取り直して船を買いに行きましょう』
「だな」
カードをしまうとギルドを後にする。
ディーラーを探して街に繰り出すのだった。




