第3話
翌朝キャンプの入り口でトカゲ族のチームと会うことになった。
「傭兵、これが今回の作戦のメンバーだ。俺はリーダーのリックだ」
人数は20人。
昨日気になったトカゲ族の兵士も混ざっていた。
しかしそれよりなにより気になることがあった。
「何でその子に首輪と鎖何か着けてる」
首輪を着けているのは3人居たが、その少女には鎖までされて囚人のようだった。
3人共、人族の姿をしている。
「あぁ、コイツらはドラゴンだよ。躾が出来てないのには鎖を着けてある。勿論魔法の鎖だから外れる心配はない」
リーダーのリックは自慢げに言う。
不快だった。
『落ち着いて下さいシュウ。ここでもめるのは得策ではありません』
「ああ、分かってる」
怒りを堪える。
「さっさと行くぞ傭兵」
そう言ってリックは前を歩き出す。
首輪をしている彼女らも着いていく。
「ちっ」
俺は舌打ちをしながらも後を着いていくのだった。
しばらく進むと、小さな野営地が見えた。
「止まれ」
リックが指示を出す。
「お前の力を見せてみろ傭兵」
「…分かった」
俺はそう言うと1人で野営地に向かった。
『シュウ敵の数は32人です』
「了解、一気に制圧する」
向こうの視認距離に入る前に駆け出す。
「敵襲!」
向こうから声が上がる。
剣と銃を構える。
走りながら銃を撃つ。
弾丸はイタチ族の男の肩を貫く。
よろめいたところに剣の柄で顎を打ち抜く。
銃を素早く麻酔モードに変え、3人を続けて撃った。
野営地にある木造の家からワラワラと出てくる。
乱射される弾丸を躱し、距離を詰めると1人目の腹に蹴りを入れて数人を巻き込むように吹き飛ばす。
3分の2程度倒すと手を止める。
「降伏しろ!全滅したいか?」
剣を地面に突き刺し大声で叫ぶ。
しばらくすると武器を捨て投降してきた。
「よし」
照明を上げ、リック達に合図を送る。
『いい腕前でしたね』
倒れた奴も集めて全員を並ばせる。
しばらくするとリック達が来た。
「ほう、やるな傭兵」
「まあな」
「さてと……全員殺せ」
リックは仲間に命じる。
「おい!」
「なんだ?」
「何でわざわざ殺す必要がある!」
「決まってるだろ。敵だ殺すしかない」
「捕虜だぞ!」
「だからなんだと言うんだ傭兵。コイツらを還しても何の利もないぞ」
リックの部下達が銃殺を済ませた。
「くそっ!」
腹は立つが彼らの戦争なのも間違いではない。なんとも言えない気持ちだった。
「うっ」
1人のトカゲ族が口を押さえつつ向こうへ走っていく。
いつぞやの項垂れていた兵士だ。
「はっ、根性無しのダンか。まあいいお前達!死体は焼いておけ、少し先でキャンプを張るぞ!」
そう言うとリックは向こうへと歩いて行った。
『大丈夫ですか?』
「ああ」
俺はダンが気になり彼の方へ行ってみることにした。
ダンが走っていった方へ進むと荒野の木のそばで休んでいるのを見つけた。
「ダン…だっけ?大丈夫か?」
「あ、あはい。すいません、あーいうのは苦手で」
「いいさ、俺もだ」
「……殺したり殺されたりするのは好きじゃないんです」
「じゃあ、何でここに?」
「父がヴァイキングに居て僕も流れで……でも、父も戦闘中に死んで…今は止める勇気が無いだけなんです」
「そうか」
「でも、決めました。さっきのを見て。もう続けられない」
「いいんじゃないか?」
「あはは、聞いて下さってありがとうございます」
「気にするな」
「…行きましょうか」
2人はリック達の後を追った。
さいわいすぐに追い付くことが出来た。
「ダン、お前は昼間作業しなかったんだ。夜の警備を1人でやるんだな」
「は、はい…」
「…俺もやるよ。1人より2人の方がいいだろ?」
「好きにしろ。しかし、支障が出るようなら報酬の査定に響くぞ」
「分かってる」
リック達はキャンプに入る。
ドラゴン達は木に鎖で繋がれていた。
「胸くそ悪い奴らだ」
「ははは、ですね……」
外で焚き火をして暖を取る。
ドラゴン達にも焚き火を用意して、荷物から毛布を1人づつ渡した。
「済まんなテントは無いんだ」
買い忘れていた事をこれ程後悔するとは思わなかった。
「傭兵さんは優しいんですね」
「そうでもないさ。自分の好きにしているだけだ
」
「そうですか…」
「お前はここを出たら何をするんだ?」
「そう…ですね。僕も冒険に出てみようかなとは思ってます。夢なんですよねいろんな所を旅するの…」
「いいな、お前なら出来るさ」
「はい…でもその前にここでやっておかないといけない事があるんです」
「なんだ?」
「あ、いえ。個人的な事です」
「ふーん」
夜は更けていった。
襲撃もなく朝を迎える。
「今日で大方辿り着くだろう。明日はいよいよ奴らの基地に攻撃を仕掛ける。キャンプはギリギリの見えない場所でするぞ、今日は夜に光や火を使うなよ出発だ!」
リックの号令と共に出発する。
野営地も無く、襲撃も無かった。
上手く間を通っているようだ。気に食わないがリックの作戦遂行能力は確かなようだ。
「ここでキャンプだ。武器の手入れをしっかりしておけ、明日は潜入する」
リックはそう言うとテントに入っていく。
俺は近くの木にもたれ掛かり眠ることにした。
日付が変わる頃だろうか物音で目が覚める。
『警備が倒されています』
ステラの声で倒れた警備に近づいて確かめる。
気絶しているだけで死んではいないようだ。
か
「誰がこんな…んっ?」
テントから男が出てくる。
ダンだった。
「ダン?」
「っ!」
ダンはまるで見つかってはいけなかったかのような表情で固まる。
ダンは倒れた警備を一瞥すると肩を落とした。
「全部話します」
そう言うダンの手には鍵束が握られていた。
「その鍵…ドラゴンのか?」
「はい、彼女達を逃がそうかと…」
「……いいんじゃないか?」
「えっ?」
「俺も気にくわなかったしな。手伝ってやるよ」
「いいんですか?」
「まあな、さてと。あと2人警備を倒さないと彼女達に近付けないからな。待ってろ」
そう言うと闇から闇へと移動しながら警備2人を絞めて気絶させる。
「一丁上がりってな」
「凄いです!傭兵さん」
「っとそうだったな俺はシュウだよろしくな」
「はい、あ!それとこれお礼です」
そう言って肩に掛けたポシェットを外してこちらに突き出して来る。
「これ、お礼の地図と鍵です。ヴァイキングであちこち行ってた時に見つけた物です。いつか冒険に行く時にいいかなって思ってたんですけど…なんだか彼女達の面倒をみるのも悪くないかなって」
「ふっ」
思わず笑みが零れる。
思ってた以上にいい奴だ、そう思った。
ポシェットを掴む。
「じゃあ…」
目の前を業火が走る。
強烈な熱気と共に炎が目の前を通り過ぎて行った。
焼け焦げた匂いがした。
ダンの突き出した肘から先以外は一瞬で炭化していた。
黒く炭化したダンが力無く崩れ落ちる。
ポシェットを掴んでいた指は力無く離れた。
「ダン!!」
俺の叫びは、夜の荒野に虚しく響く。
しゃがみこみダンに触れる。
そこにはただの焼け焦げた肉しか無かった。
「この裏切り者めが!」
声のする方を向く。
リックが杖を構えこちらを睨んでいた。
「傭兵!お前も裏切り者か?」
リックの怒号が聞こえる。
「裏切り者かだと!だったらなんだ!」
怒りが込み上げる。
視界が赤く染まるような気がした。
力が湧いてくる。
身体から熱気が上がる。
『シュウ、ゾ・ラースの能力をコントロールして下さい、このままではドラゴン達にも被害が及びます』
「くっ!」
「全員起きろ!裏切り者だ!」
リックが皆を起こす。
その時だった。
閃光が上がる。辺りが光に照らされる。
夜の闇を裂くようなけたたましいサイレンの音が鳴り響く。
「ちっ見つかった!野郎共、作戦が優先だ!このまま奴らのキャンプに向かえ!」
「「「お~!!!」」」
攻撃が始まった。
あちこちで破壊音が鳴り響く。
『シュウ今のうちに!』
「ちっ」
ダンの持っていた鍵を取り、ドラゴン達の元へ走る。
魔法の鎖を外すと逃げるように促した。
「逃がすか!」
リックだった。
「ソイツらも戦力だ。元の姿で向こうの基地に攻撃を仕掛けて貰う」
「させると思うか」
お互いに武器を構える。
だが、その時ーーー
轟音と共に向こうのキャンプの地面から何かが飛び出した。
夜の闇でも赤く輝く。
山よりも大きな巨体。
巨大なドラゴンだった。
『あれは、巨竜種ドラクレス!別名竜喰らいです!』
「まさかアレが秘密兵器か!」
「バカな!竜喰らいだと!イタチの糞共が共倒れする気か!」
リックが叫ぶ。
『このままでは星が滅びます』
ステラの冷たい声が頭の中で反響した。




