3.始まりの5人
畑のそばに集められた五人の若者たちは、アルクスに不審の視線を向けていた。その表情に好奇心はなく、こうして集められたことで戸惑っているようだった。彼らにとって傀儡は異質な存在である。しかし、アルクスにとって特に気に留める必要はなかった。
「まずは名前を教えてくれ」
毅然として言うアルクスに、若者たちは困惑した様子で顔を見合わせる。総意を集めたように最初に口を開いたのは、短く整った明るい茶髪の青年だった。
「あんたは村の外から来た人形だろ。何をしようとしているんだ?」
「私は名前を訊いている」
アルクスは不敵に胸を張る。青年は少し怯んだ様子で口を閉ざし、他の四人に視線を巡らせた。それから、小さく舌を打つ。
「……ホープだ」
青年――ホープが観念するのに続いて、背の高い金髪の男性が口を開く。
「ウォーカーよ」
「イヴと申します」
長い青みがかった黒髪の女性が丁寧に辞儀をする。その隣で短い茶髪の少女が元気に手を挙げた。
「マークちゃんです!」
「僕はハンターです」
最も背の低い少年が応えると、アルクスは満足して頷く。五人はこの村の民の中でも綺麗な身形をしていた。服装は粗末であることに変わりはないが、先ほどの子どもたちと比べて健康的な手足をしている。この村の中で貴重な働き手たちなのだろう。
ぐるりと五人を見回し、アルクスはラプトールを振り向いた。
「彼らの能力値盤を出してくれ」
ラプトールが軽く手をかざすのに合わせ、五人が自分の体を見遣る。「鑑定」の感覚に驚いているのだろう。それも一瞬のことで、ラプトールの手には五人の能力値を書き出した板が現れた。順番に能力値盤を眺めると、ふむ、とアルクスは頷いた。
「ホープ、お前の名はお前に相応しいようだ」
眉をひそめるホープに小さく笑いつつ、アルクスは手にしていた五枚の板を消す。
「お前の力があれば村は蘇る」
ホープは目を丸くするので、アルクスはまたくすりと笑った。他の四人の視線が集まる中、ホープは怪訝な表情になりつつ興味を惹かれているようだった。
「どういうことだ?」
「お前の能力は『再生』だ。まずは畑を耕すところから始めよう」
「再生……。俺はどうすればいいんだ?」
ホープは身を乗り出し、他の四人は期待に満ちた視線をアルクスに向ける。アルクスにとって懐かしい光景だった。
「お前たちの力を開放するためには、条件がある」
「条件……?」
「私との契約だよ」
五人は困惑した様子で顔を見合わせる。いまのアルクスは、彼らにとってはただの人形でしかない。仰々しい鎧を身に纏った騎士のラプトールがこの言葉を口にすれば、彼らの印象はまた変わっただろう。だが、主はアルクスである。
「魔力回路を繋ぐ契り……従属契約。私の能力値をお前たちに分けてやることができる」
五人はまだ状況を把握できていない表情をしている。アルクスの言葉の意味を理解できず、口を開くことができないようだ。
「お前たちの魔力は都市の子どもより低い。私との契約で能力値を伸ばしてやる」
「どうして人形にそんなことができるんだ? あんたは何者なんだ」
怪訝に問うホープに、他の四人の表情も追随している。人形の顔でどれだけ再現できているかはわからないが、アルクスは不敵に微笑んで見せた。
「我が名はエヴム・イモータリス」
その言葉にウォーカーがハッと息を呑むので、アルクスはまた小さく笑う。
「そんなまさか……!」
「知ってるのか?」
ホープが驚いた表情でウォーカーを振り向いた。ええ、と重く頷くウォーカーは、恐れをはらんだ表情をしている。
「王都の研究室にいた頃に聞いたことがあるわ。世界史に名を刻むほど……そうね、天災級とも言える……厄災と称された魔王よ」
「ほう、よく知っている。賢い者は好きだ」
五人の視線がアルクスに集まる。その表情は不審に満ちていた。




