大学でも思うのは・・・
もちろんです。
大学の講義中。
もうすぐお昼が近いこともあって、ノクティスは窓際の後ろの席で頬杖をつき、ぼんやりと外を眺めていた。
近くの女子学生たちは、そんな横顔に思わず見とれている。
「今日もかっこいい……」
「ねえ、横顔だけで絵になるんだけど。」
小さな声が飛び交うが、本人の耳にはまったく届いていなかった。
ノクティスの頭の中を占めているのは、ただ一つ。
(まりさんのホットケーキが食べたい。)
ホットケーキではない。
まりさんのホットケーキが食べたいのだ。
学食にもカフェにもホットケーキはある。
もっと豪華なものだってある。
それでも違う。
あの家で焼いてくれる、あの優しい甘さのホットケーキが食べたい。
今まで食べたチーズケーキも、サンドイッチも、アイスミルクティーも、アイスコーヒーも、どれも驚くほどおいしかった。
最近では、自転車に乗ると、気がつけばあの赤い屋根の家へ向かいたくなる。
もっとも、若い女性の家に何度もお邪魔するのは迷惑ではないだろうか、と理性も働く。
それでも。
まりさんのホットケーキが食べたい。
そういえば、近くのカフェで新作スイーツが始まったと聞いた。
この前は洗車のお礼にホットケーキまでごちそうになった。
今日は午後の講義もない。
せめて、お礼に何か買って行こう。
そう決めた瞬間、ノクティスの表情がふっとほころんだ。
「えっ……今、笑った。」
「うそ、すごい……。」
教室のあちこちで小さな歓声が上がる。
だが、その中心にいる本人は、そんなことなど何一つ気づいていない。
講義が終わると、ノクティスは赤いママチャリにまたがった。
坂道を軽快に駆け下りる。
ラピスラズリの髪飾りを留めた金髪が、風を受けて犬のしっぽのように楽しげに揺れていた。
その行き先は、もちろん赤い屋根の家だった。
こうして、このゴールデンレトリバーは、何かと理由をつけて彼女の家へ足しげく通うようになる。




