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狂った弱肉強食世界で最強の俺は、魔力ゼロの妹のためにすべてを壊す  作者: 黒海苔
一章:教祖誕生編

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二話:街

「というわけで、久しぶりに街に行きたいから案内してくれない?」


「はぁ、また急ですね……今度は何を思いついたんですか?」


挿絵(By みてみん)


 めんどくさそうにため息をつくのは、俺の専属メイド、レイナだ。


「いや〜、ちょっと魔力トレーニングの限界が見えてきてね……外の世界が気になったんだよ」


「まだあれやってたんですか。あんな拷問みたいなこと」


「拷問って……」


 魔力を解放して脅し、レイナが本性を明かした時、なぜそんなに魔力量が多いのかと聞かれた。

 そして一度だけ、一緒にトレーニングをやらせたことがある。


「普通の人間なら三日で倒れますよ、あれ。よく毎日続けられますね」


「慣れればなんとかなるって」


「その“慣れ”に至る前に、大抵の人はやめるんですけどね」


 ぐうの音も出ない。


「でも、一緒にやったとき、レイナの魔力量も少し伸びただろ?」


「ええ、まぁ……誤差レベルですけど」


「一日で見ればな。でも、それを十年続けたらどうなると思う?」


「さあ? 普通の人はそこまで無駄な努力を続けませんから」


「ひどいな」


「事実です。……まぁ」


 レイナは一瞬だけ言葉を区切り、


「そこまで続けられるのは、少しだけ評価してますけど」


「お、デレた?」


「調子に乗らないでください。取り消しますよ」


「はいはい」


「それで? 街に行くんですよね?」


「ああ。貴族ってバレたら面倒だし、変装して行こう。準備頼む」


「言われなくてもやりますよ。あなたが外で問題を起こす前に対処しないといけませんから」


「俺、そんなトラブルメーカー?」


「自覚なかったんですか?」


「……なかった」


「でしょうね。だから私がいるんです」


「頼りにしてるよ、レイナ」


「はぁ、めんど……」


 そう言って、レイナは準備に向かった。


 -------------------------------------


 準備を終えたレイナと共に廊下を歩いていると。


 ――ぱたぱたと、小さな足音が聞こえた。


「お兄さま!」


 振り向くと、そこにいたのは。


 白銀に近い淡い髪を揺らしながら、こちらに駆け寄ってくる少女。


 柔らかく広がるドレスの裾を両手で少し持ち上げ、一生懸命に走っている。


挿絵(By みてみん)


 ……相変わらず元気だな。


「走るな。転ぶぞ」


「えへへ、ごめんなさい」


 少し息を弾ませながら、嬉しそうに笑う。


 紫がかった瞳が、きらきらと輝いていた。


 ――リリアナだ。


「どうしたんだ?」


「うん、ちょっと廊下を歩いてただけ」


 楽しそうに答える。


 特に変わった様子もない。


「お兄さまは?」


「これから街に行く」


 そう言うと、リリアナは目を少し丸くした。


「……街に?」


「ああ」


「そっか」


 小さく頷いてから、ふわっと笑う。


「お兄さまが街に行くなんて、珍しいですね」


「まあな」


「じゃあ――」


 にこっと笑って。


「楽しんできてくださいね」


 明るい声だった。

 いつも通りの、何の曇りもない笑顔。


「……お前は来るか?」


 なんとなく聞いてみる。


 するとリリアナは、少しだけ考えるようにしてから、


「ううん、私はいいです」


 あっさりと答えた。


「私がいたら、気を遣わせちゃいますし」


「別にそんなことは――」


「大丈夫ですよ」


 やんわりと遮られる。


「私はここにいる方が好きですし」


 そう言って、軽く肩をすくめた。


「お兄さまの話、後で聞かせてくださいね」


「ああ、それくらいならいくらでも」


「楽しみにしてます」


 嬉しそうに微笑む。


「いってらっしゃいませ、お兄さま」


 小さく頭を下げる。


 まだ少しぎこちない仕草だが、本人は気にしていない様子だ。


「気をつけてくださいね」


「ああ」


 短く返す。


 リリアナはそのまま、くるりと背を向けて。

 ぱたぱたと軽い足音を立てながら去っていく。


 リリアナの姿が見えなくなってから、


「よし、じゃあ変装に着替えて街に行くか」


「……はい」


 -------------------------------------


 街は、思っていたよりも騒がしかった。


 人の声。

 笑い声。

 硬貨の触れ合う音。


 どれもが混ざり合って、妙な熱気を作り出している。


「……こんな感じなのか」


「初めてですか?」


 隣を歩くレイナが、呆れたように言う。


「まあな」


 視線を巡らせる。


 店が並び、人が行き交う。


 一見すれば、普通の街だ。


 ――だが。


「……なんか、変だな」


「何がですか?」


「いや……分からん」


 言葉にできない違和感。

 だが確実に、何かが引っかかる。


 そんな時だった。


 ――……たす、けて……


 ふと。


 耳の奥で、かすかな声がした。


「……ん?」


「どうしました?」


「いや、今……」


 気のせいか――?


 だが、もう一度。


 ――……ここ……


「……レイナ」


「はい」


「ちょっと裏、行くぞ」


「は?」


 返事も待たず、足を向ける。


 人通りの少ない路地裏へ。


 光が届かず、空気が一気に淀む。


 ……さっきまでの賑やかさが嘘みたいだ。


「こんなところに何が――」


 レイナが言いかけた、その時。


 ――見つけた。


 地面に置かれた、大きなガラス瓶。


 鎖で封じられ、重しが乗せられている。


 そして、その中に――


「……なんだ、これ」


 少女がいた。


 いや、人間じゃない。


 透き通るような肌。

 淡い光を纏う髪。

 小さな体。


 ――精霊。


 その少女は、瓶の内側からこちらを見ていた。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

↑没になった挿絵


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