三十六話:三年
――三年。
最初の三ヶ月で“折れなかった者たち”は、
そのまま三年、止まらなかった。
結果は、単純だ。
――別物になった。
アルセリア平原。
訓練場。
そこに立つ十二人は、もはや“元奴隷”ではない。
動きが違う。
魔力の密度が違う。
立っているだけで、周囲の空気が歪む。
「……始めるぞ」
レオンの一言。
それだけで、全員の魔力が揃う。
次の瞬間。
爆発した。
ルミナが消える。
踏み込み。
加速。
――見えない。
次に見えた時には、標的が吹き飛んでいた。
「速っ……!」
後方の新人が思わず声を漏らす。
「今の見えた?」
「いや無理……」
ミレイナが笑いながら前に出る。
「ほら、ボーッとしてると死ぬわよ!」
拳を振り抜く。
衝撃。
地面が割れる。
「うわっ!?」
「だから下がるなって言ってんの!」
怒鳴りながらも、視線は全体を見ている。
――回している。
(役割が固定されたな)
レオンは静かに見ていた。
前衛。
制圧。
撹乱。
暗殺。
支援。
回復。
分析。
構築。
すべてが噛み合っている。
その中で。
「……そこ、甘い」
シエルが呟く。
次の瞬間、背後を取る。
音がない。
気配がない。
だが、確実に“いる”。
「……また取られた」
リゼが小さく息を吐く。
だが、次は外さない。
反応。
即座に反撃。
二人の間に、言葉はいらない。
「撃ちます」
ルシア。
魔力収束。
圧縮。
解放。
一直線。
誤差なし。
破壊。
「……精度、問題なし」
レティシアが呟く。
全体を見ている。
動き。
流れ。
隙。
すべてを把握している。
「そこ崩れる、支えて」
「了解」
リュシエラが即座に対応する。
流れを整える。
止めない。
崩さない。
その後方。
「大丈夫、まだ動ける」
フィリアが支える。
回復。
安定。
「……うん、いける」
アルティナが頷く。
最も弱かった少女は、もう崩れない。
支える側になっている。
その横で。
「これ、使って」
エルミナが装置を渡す。
「効率、上がる」
「助かる」
即採用。
無駄がない。
「いきます!」
セラフィナが飛び出す。
荒い。
だが――
止まらない。
折れない。
それがそのまま“強さ”になっている。
カルネリアは無言で動く。
一撃。
それだけで、終わる。
全員が動く。
噛み合う。
止まらない。
(……完成してる)
レオンは判断した。
そして。
「止め」
全員が止まる。
息は上がっている。
だが――余力がある。
その時。
レオンが言った。
「教えろ」
全員の視線が集まる。
「お前らがやってきたことを、下に流せ」
「……え?」
ルミナが首を傾げる。
「教えたら、弱くなるんじゃない?」
「逆だ」
一歩踏み込む。
「教える側も、精度が上がる」
「言語化することで、理解が深まる」
「無駄に気づく」
「つまり――」
一拍。
「教えた方が、強くなる」
沈黙。
そして。
「……なるほど」
レティシアが頷く。
「合理的です」
「いいじゃん」
ミレイナが笑う。
「全員強くなれば、楽できるし」
「それな!」
ルミナも笑う。
その日から。
“拡張”が始まった。
十二人が、それぞれ教える。
最初はバラバラだった動きが。
徐々に揃う。
組織が、大きくなる。
強くなる。
そして――
この十二人は。
自然と、こう呼ばれるようになった。
――《聖鎖十二》。
中心。
核。
最初の十二。
誰もが、その名を知るようになっていった。
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