表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂った弱肉強食世界で最強の俺は、魔力ゼロの妹のためにすべてを壊す  作者: 黒海苔
一章:教祖誕生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/44

十四話:拠点探し

 その日の夜。


 屋敷の自室。


 灯りは一つだけ。


 机の上に広げられたのは――世界地図。


「……」


 レオンは、黙ってそれを見ていた。


 指を動かす。


 自分の領地のヴァルディス侯爵領は、シルディア帝国の端の辺境に位置する


 そのすぐ外――


「……ここか」


 視線が止まる。


 アルセリア平原。


「よし、一回見に行くか…」


「どこ行くの?もう夜だよ?」


 シルフィアが尋ねる


「拠点の場所を探しに」


「拠点?なんで?」


「まぁ、ちょっとな」


「ふーん、よく分からないけど心配だからついて行く。」


「そうか。まぁ、何も起こらないと思うけどな」


 -------------------------------------


 屋敷が眠りについた頃、レオンは静かに動き出す。

 本棚の奥に隠された仕掛けを作動させ、誰にも知られてはならない裏道へと足を踏み入れた。


 この隠し通路は、侯爵家でもごく一部の者しか知らない。

 有事の際、当主や血筋の者を逃がすための道。


 湿った石の通路を、シルフィアと二人で進む。


「へぇ〜こんなところあるんだ…」


「誰にも言うなよ?」


「は〜い」


 やがて辿り着いたのは――領地の外れ。


 見張りの目が届かない、完全な死角。


 だが――


 目の前に広がるのは、闇に沈む森。


 風に揺れる木々が、不気味な音を立てている。


 シルフィアが、少しだけ声のトーンを落とす。


「……ここ、あんまり好きじゃないかも」


「奇遇だな。俺もだ」


「帰る?」


「帰らない」


 一歩踏み込む。


 森の中は、別世界だった。


 月明かりはほとんど届かず、視界が極端に狭い。


 湿った土の匂い。


 どこかで、何かが動く気配。


「……いるね」


「ああ」


 気配を読む。


 複数。


 しかも――


 強い。


 ――ガサッ。


 草むらが揺れた瞬間。


 低く唸る獣型の魔物が飛びかかる。


「っ!」


 レオンは一歩踏み込み、迎え撃つ。


 拳を叩き込む。


 骨が砕ける感触。


 一撃で沈む。


 だが――


「……終わりじゃないよ」


 シルフィアの声。


 次の瞬間、左右から気配。


「ちっ……!」


 回避。


 すぐに反撃。


 二体目を沈める。


 だが血の匂いが広がる。


 それが“合図”だった。


 ――来る。


 木々の奥から、次々と気配が増えていく。


「増えてない……?」


「寄ってきてるな」


「え、やばくない?」


「大丈夫だ」


「ホントに!?」


 シルフィアが慌てる中、レオンは冷静だった。


 呼吸を整える。


 視線を動かす。


 敵の位置を把握。


 最短で仕留める順番を組み立てる。


 斬る。


 避ける。


 叩き込む。


 動きに無駄はない。


 だが――


 数が多い。


 徐々に、削られていく。


「レオン、右!」


「分かってる!」


 横から飛び込んできた魔物を蹴り飛ばす。


 その隙に背後から一撃。


「っ……!」


 浅いが、傷。


 血が滲む。


「大丈夫!?」


「問題ない」


 即答。


 だが、完全に余裕ではない。


 それでも、進む。


 やがて――


 魔物の気配が、減る。


 木々の密度も、薄れていく。


 空気が変わる。


 風が通る。


「……抜けるぞ」


「うん」


 最後の木を抜けた瞬間。


 視界が一気に開けた。


 どこまでも続く、月明かりの平原。


 アルセリア平原。


 風が強い。


 草が揺れる。


 広い。


 肥沃そうだ。


 水もある。


 拠点としては理想的。


 だが――


「……誰も使っていない?」


 おかしい。


 それも、これほどの場所が。


 ふと、記憶が蘇る。


 幼い頃、誰かが言っていた。


 ――あそこには近づくな


 ――帰ってこない


 ――“空を裂くもの”がいる


「……」


 一拍。


「ここはやめといた方がいいと思う」


 肩の上から声。


 シルフィアが、覗き込んでいた。


「危ない匂いがする」


「……そうだな」


 レオンは考える


「嫌な予感するし一旦帰るか…」


「……うん」


 その時風が、止んだ。


「……?」


 レオンは顔を上げる。


 さっきまで揺れていた草が、ぴたりと動かなくなっていた。


 音がない。


 静かすぎる。


 ――次の瞬間。


「……っ!?」


 影が落ちる。


 巨大な、あり得ないほどの影。


 反射的に振り返る。


 そして――見た。


 空を覆う、黒き翼。


 そして金の瞳。


 大気そのものを震わせる咆哮。


 竜。


挿絵(By みてみん)


「……なんだ、あれ……」


 思わず、声が漏れる。


 理解が追いつかない。


 だが本能が告げていた。


 勝てる相手じゃない


 竜が翼を振るう。


 ただそれだけで――


 風圧が、地面を削り取った。


「っ!!」


 体が浮く。


 叩きつけられる。


「レオン!!」


 シルフィアが叫ぶ。


「くそっ……!」


 レオンは立ち上がる。


 魔力を展開。


 拳に集中させる。


「……やるしかないだろ」


 地面を蹴る。


 一気に跳躍。


 だが――


 届かない。


 竜は、空。


 圧倒的な高さ。


「当たらねえ……!」


 空中で無力に落ちる。


 その瞬間。


 竜の口が開く。


 魔力が収束する。


「……まずい!」


 閃光。


 爆音。


 地面が抉れる。


 視界が白に染まる。


挿絵(By みてみん)


「がっ……!」


 衝撃で吹き飛ばされる。


 転がる。


 血の味。


「……っ」


 立ち上がる。


 だが、足が震える。


 魔力量はある。


 だが――


 攻撃が届かない


「……このままだと死ぬ」


 シルフィアの声が低くなる。


「レオン」


「……あ?」


「お願い」


 一瞬、間。


「……信じて」


 次の瞬間。


 シルフィアが――


 近づいた。


「――え?」


 触れる。


 唇が。


 一瞬。


 だが、確かに。


 ――ドクン


 心臓が跳ねる。


 世界が、変わる。


「……っ!?」


 視界が拡張する。


 風が見える。


 空気の流れが“理解できる”。


「……契約、完了」


 声が、重なる。


 外からではない。


 内側から響く。


「これで――」


「一緒に戦える」


 冷たい魔力が流れ込む。


 氷。


 精霊。


 空。


 すべての“概念”が理解できる。


「……なんだ、これ……」


「飛べる」


 直感する。


 レオンの体が浮く。


 地面を離れる。


 これでようやく戦える


 竜が咆哮する。


 再びブレス。


 だが。


「遅い」


 消える。


 いや――


 空を滑った。


 一瞬で間合いに入る。


 拳に氷の魔力を集中。


「はぁっ!!」


 叩き込む。


 轟音。


 竜の体が揺れる。


 翼。


 爪。


 牙。


 すべてを躱す。


 読める。


 見える。


 理解できる。


「遅い」


「浅い」


「雑だな」


 淡々と叩き込む。


 氷の刃。


 拳。


 蹴り。


 連続で炸裂。


 竜が後退する。


 初めて。


 明確に。


 恐怖を見せた


 レオンは止まる。


 空中で。


 静かに。


「……終わりだ」


 魔力を収束。


 氷の槍が形成される。


 巨大な、殺意の塊。


 その瞬間。


 竜が、動きを止めた。


 翼を畳む。


 頭を下げる。


 ――敗北の意思。


「……は?」


 レオンが呟く。


「……降参、ってことか?」


 シルフィアの声。


「うん」


「完全に負け認めてる」


 レオンはゆっくりと降りる。


 そして言う。


「ここは使う」


 一拍。


「文句あるか?」


 低く、唸る。


 だが。


 逆らわない。


 アルセリア平原はレオンの縄張りになった


 ふっと力が抜ける。


「……っ」


 体が重くなる。


 地面に着地。


 シルフィアが分離する。


「……はぁ……」


「一日一回が限界だからね、それ」


「……とんでもねえな」


 空を見上げる。


 さっきまでの絶望が嘘みたいだ。


「でも」


 少し笑う。


「これで、ここは誰も手出しできない」


「……ああ」


 静かに頷く。


「拠点としては――」


 一歩踏み出す。


「悪くないな」

面白いと感じましたら、ブクマ、評価、コメント等をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ