表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂った弱肉強食世界で最強の俺は、魔力ゼロの妹のためにすべてを壊す  作者: 黒海苔
一章:教祖誕生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/44

十二話:狂ってる世界

 屋敷に戻った後。


「すみません、リリアナ様。この後、少しお話が――」


 レイナがそう切り出すと、


「はい。大丈夫です」


 リリアナはすぐに頷いた。


「私はシルフィアさんと、どこかで待っていますね」


 柔らかく笑って、精霊の手を引く。


 シルフィアも一瞬こちらを見て――何も言わず、そのまま連れて行かれた。


 扉が閉まる。


 静寂。


「……で」


 先に口を開いたのは、俺だった。


「さっきのは、どういうことだ」


 短く、低く。


 レイナはわずかに視線を落とし――


「……説明いたします」


 静かに言った。


 ------------------------------------


「まず、前提からお話しします」


 感情のない、いつもの声音。


「魔力は――減るものです」


「……知ってる」


「そして、魔物と戦うには魔力が必要になります」


 一拍。


「ですが、回復には限界があります」


「……回復方法は?」


「三つです」


 迷いなく。


「睡眠、食事、そして――性行為」


 わずかに、空気が冷える。


「……」


「騎士のような限られた者であれば、十分な食事によって回復は可能です」


「ですが、冒険者は違います」


「数が多すぎる」


「全員分の食料を用意することは、現実的ではありません」


「……睡眠は?」


「魔物が出る場所で、無防備に眠る者はいません」


 即答だった。


「よって――」


 一拍。


「彼らは、“それ以外”を選びます」


「……」


「戦いの合間に、すぐに中断できる方法」


「効率が良く、継続可能な方法」


「それが、性行為です」


 淡々と。


 まるで事実を並べるだけのように。


「……」


 言葉が出ない。


「では、そのための“相手”はどう確保しますか」


「……」


「安定して供給できる仕組みが必要になります」


「……まさか」


「はい」


 レイナは、少しも揺らがずに言った。


「それが――奴隷制度です」


「……っ」


 喉が、詰まる。


「魔力回復のための“資源”として、人を管理する」


「それが、この世界の一部では、常識になっています」


「……ふざけてる」


 思わず、漏れた。


 だが――


「ですが、合理的です」


 間髪入れず、返される。


「……っ」


 理解は、できる。


 できてしまう。


 だからこそ――気持ち悪い。


「感情より、効率が優先されるのは当然かと」


「……」


 反論できない。


 理屈は、通っている。


 だからこそ、否定しきれない。


「……じゃあ」


 絞り出す。


「女は全員、そうなるのか」


「いいえ」


 レイナは首を振る。


「魔力を持つ女性は、“価値ある存在”として扱われます」


 一拍。


「ですが――」


 ほんのわずか、間を置いて。


「魔力を持たない者は、価値が低いと判断されやすい」


「……」


 視線が、自然と逸れる。


 ――街でのあの視線。


 あの、囁き。


「……そうか」


 低く、呟く。


「全部、繋がるな」


「……はい」


「……リリアナは」


 言葉が詰まる。


「……いつからだ」


「……」


 レイナは、少しだけ目を伏せて。


「……慣れておられます」


 そう答えた。


「……っ」


 胸の奥が、嫌に重くなる。


 気づいていたはずなのに。


 見ようとしていなかった。


「……クソみたいな世界だな」


「否定はいたしません」


 静かな肯定。


「ですが」


「それが、現実です」


 ------------------------------------


 その夜。


 ベッドに横になっても、眠気は来なかった。


 瞼を閉じても。


 浮かぶのは、あの光景。


 あの言葉。


 ――合理的。


 ――効率的。


 ――仕方がない。


「……」


 理解は、できる。


 理屈も通っている。


 だが。


「……だからって、いいわけがないだろ」


 小さく、吐き出す。


 感情が、拒絶する。


 だが――


 理屈が、それを押し返してくる。


 この世界では、それが“正しい”。


 そうしなければ、成り立たない。


「……」


 なら、どうする。


 どうすれば――


 一度、あの男に聞くしかない。


 ------------------------------------


 翌朝。


 空気は、妙に澄んでいた。


「レオン様」


 準備を終えたレイナが声をかける。


「どちらへ向かわれますか?」


「本邸だ」


「……」


 一瞬だけ、間。


 だがすぐに。


「承知しました」


 何も問わず、頭を下げる。


 ------------------------------------


 馬車に揺られながら。


 窓の外を、ぼんやりと眺める。


 見慣れた街並み。


 昨日と同じはずなのに――


 どこか、違って見える。


「……」


 もう、知らないでは済まされない。


 見てしまった。


 理解してしまった。


 ――だからこそ。


 目を逸らすことはできない。


 ------------------------------------


 やがて。


 巨大な屋敷が視界に入る。


 本邸。


 この家の中心。


 そして――あの男がいる場所。


「……」


 馬車が止まる。


 扉が開く。


 ゆっくりと降りる。


 足を踏み出すたびに、空気が重くなる。


 五年前の記憶が、脳裏をよぎる。


 ――殺されかけた場所。


「……関係ない」


 小さく、吐き捨てる。


 今の自分は、あの頃とは違う。


 ------------------------------------


 重厚な扉の前で、レオンは一度だけ息を整えた。


 ――迷いはない。


 ノック。


「入れ」


 短い声。


 扉を開けると、父は書類から目を離さぬまま言った。


「……レオンか。久しぶりだな」


 ゆっくりと視線が上がる。


挿絵(By みてみん)


「それで、なんの用だ?」


 レオンは一歩踏み出した。


「父上。私は、あなたに話があります」

面白いと感じましたら、ブクマ、評価、コメント等をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ