22話
目の前でスレイブとマキナが取り囲み交戦している一際大きいソレは狼をまるでそのまま大きくした様な姿をしていた。
金色の毛並をしていながらも肌は黒く瞳は紅蓮の様な赤、そして全てを焼き尽くす様な白色の炎を纏っているその姿は魔獣というより物語の中の神獣の様だ。
そんな異様なものに周りが二の足を踏みながら交戦する中凄まじい剣閃で戦闘を繰り広げている一機の獅子の姿のスレイブがいるのが見える。
「--、全員離れろ!!ここは私が引き受ける!!他の者は障壁を、巻き込まれても知らんぞ!!」
そうアイラさんが叫びその場に居る全ての視線が此方に向くがお構いなしにアイラとオーディンは突っ込む。
「ね、姉さん?!」
「さあ、食らえ犬っころ!!これがグングニルだ!!」
アイラさんから膨大な魔力が溢れると共にオーディンがその右手を天にかざす。その先に魔方陣が構築されるとまるで違う次元の彼方からこちら側へゆっくりと黒く赤黒い血錆の様なものが目立つ刃こぼれの凄まじい槍が現れる。それをオーディンが掴みすぐさま魔獣に目掛け投擲する。
「ね、姉さん、無茶な!!総員障壁を張って衝撃に備えろ!!」
レイラさんのその声と共に凄まじい衝撃と爆炎が魔獣を中心に巻き起こる。
暫くの衝撃と爆炎の後砂埃が視界を覆う。
「ちっ、流石に一撃とはいかなかったか・・、」
ーーグオオオオオオオオオン!!!
アイラさんのその言葉と共にけたたましい叫びが大気を揺らし舞い上がる砂埃を一蹴する。
しかし再び現したその姿は全身の至る所からどす黒い血を垂らし無傷という訳ではなさそうだった。
「さあ、これからが本番だな。」
と、臨戦態勢を取ろうとする所で声がかかる。
「姉さん!!なんでここに?って、いうか・・」
「細かい事は今はいい!!下がっていろ!!どうやらコイツ相手に加減は無理そうだ」
そう、姉妹の簡単なやり取りの最中目の前の魔獣は金色の毛並を逆立て最大の脅威とこちらを定め伝わってくる程の殺意を向けてくる。
「ほう、先程は犬っころだと称したがその殺意に振る舞い、獅子の類であったか。貴様が何故ここに居るのか?現れたのかは今はいい、全力で相手してやる。いくぞ!!我が友よ!!」
「承知!!」
その合図と共にオーディンはこれまた刃こぼれの多く赤黒い錆の目立つ刀の様な剣をどっからともなく抜いた。
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ゴクリっ、
アイラさん越しに緊張感が伝わってくる。目の前にはまるで抜身の様な殺気を向けている魔獣、そしてそれに構うことなくその一瞬を待つアイラさん。
同じ空間にいる私はまるで場違いに思えてくる。確かにこの場には沢山の人達がいるのだが、その誰もが微動だに出来ない。
「さあ、いつまでもつまらん睨みを向けてないで私とこのオーディンを殺すつもりでかかってこい。一刀で斬り伏せてやる。」
いきなりこの張り詰める緊張感の中アイラさんが挑発する。
しかし、どうやらそれに乗るほど敵も一筋縄ではいかないようだ。小さいうなり声を上げながらこちらへの視線を外さないまま機を伺っている様だ。
「やはり、コイツただの魔物ではないな。これほどの奴が何故ここに急に現れたかますます解らんな。」
そう言いアイラさんが一呼吸する。
「だが、なんであれ私の前で私に殺意を向けている以上斬り捨てるまでだ!!!」
その言葉を皮切りに凄まじい魔力と闘気が立ち上る。
「ーーもういい!!我が元へ戻れ獅子王レグルス!!」
突如謎の男の声がその場に響くと共に目の前の魔獣はすうーっとそのサイズを狼程度のサイズにちじめた。
「誰だ!?いきなり無粋だぞ!!」
アイラさんがそう叫ぶとその魔物の前に何時の間にか一人の男がいた。
「無粋とは言い掛かりだろ!!まあいい、兎も角んなおっかない神剣で俺の大事な子を傷つけられても困るんでね。」
飄々とその男が答えたと同時に隣の魔物が眩い光を放つと同時に変化した。その姿はまるで巫女服のようなものを纏った幼女だ。
「来るならもう少し早く来てくださいませ兄様!!流石に私もアレ、戦神相手には死ぬ覚悟致しましたよまったく。まさか本当にオーディンと契約している者が居るとは思わないですし。」
「すまんすまん、ちーっとばかりあのクソ女に手こずった。」
さっきまでの緊張感はやれどこに?と言わんばかしに目の前で会話が進む。その二人以外誰一人理解が追い付かない。
「貴様・・・、いや、貴様らは一体・・、」
アイラさんが問いかける。
「お前らの国を助けようと頑張っていた妹に暴れていると勘違いして集団で襲ってくるお前らなんぞに名乗るのは酌だがな、まずはそのデカブツから降りてこい。人を見下したままモノを尋ねるな!!」
「な、なんだと!!」
男の言葉にアイラさんは怒気を高める。
「やめておけ、今ここに居る誰一人俺には叶わんぞ?例えお前の戦神、主神オーディンをもってしてもな。」
その言葉と同時にオーデインが言葉を発する。
「主、あの男の言葉は真だろう。まずは話すのが得策だ。」
「それほどか?」
「あの男、竜の息吹を纏っている。まず只者ではない。」
「なんだと?ではまさか・・・」
「見た所武装、帯剣すらしていのでそこまでは今は解らないが資格無き者が竜の息吹を纏うことは有り得ない」
そのオーディンの判断に従いアイラさんと私は機体を降りる。
「うお!!すっげー美人が降りてきた!!」
「兄さま!!!弁えて下さい!!!」
「全隊警戒体勢のまま待機!!」
素早くアイラさんが指示を出す。と同時に男に向かい語りかける。
「では改めて、先に私が名乗ろう。私は聖王直下騎士団クロスナイト、長のアイラ・ハートだ。」
「私は冒険者フェリス・ナナリーです。」
私もアイラさんと共に名乗る。
「なんだと?「ナナリー」だと?」
男はそう驚きの声を上げたかと思いきや急に顎に手をやりぶつぶつとなにやら独り言をはじめる。
「そうか・・・、だから・・・あのクソ女・・・」
そうして何かを己の中で納得した後此方へ顔を向け改めて名乗った。
「俺の名前はルーク・ミス・ナナリー、こっちのがティオ・ミス・ナナリー、だ」




