17話
「私の想像が正しければレオン、貴方の存在はまずい。完全でない今全力で貴方を殺します。」
あの優しく俺の育ての親であるシスターが戦意剥き出しに俺へ「殺す」と言う。
あれ?
どうしてこんな事になっているんだっけ?
もうなんでもいいや
どうでもいい
考える事も理解する事も煩わしい
ただ、帰りたい・・
フェリスが居る場所へ・・
その為には目の前にあるもの全てが邪魔だ・・
早く帰らなきゃ・・
だから・・・
消えろ
俺の行く手を阻む全て
「只帰す、先に光も闇もない。あるのは静寂響く虚無。我は無への導き手。あるもの全てを導こう・・」
何故だか頭の中に浮かぶ詩の様な言葉を自然と俺は口にした。
「その「詠唱」まずい!!レオン!!やめるんだ!!」
アルがこれから起こる事に先んじて叫ぶも遅かった。
「全てを無へ・・バニシュ」
それを唱え振り払った剣閃の向こう側の視界に見える全てがその言葉と同時に一瞬で消え去った。
先程まで敵意剥き出しだったシスターもそれを囲うような瘴気も魔物も。それこそまるで「存在しなかった」かの様に。
何をしたかは解る、だが理解はできない。
と、同時にフッとまるで糸が切れた様に俺は意識を飛ばしそのままそこへ倒れた。
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「やはりこの子はただのマスターではないのですね・・」
しばらくの静寂の後どこからともなく集まった黒い霧がシスターの形をとりそう言った。しかしその姿は最早陽炎の様に薄く今にも消えかかっているようだ。
「私にも詳しい事はわからない。ただあれは私が知るバハムートの権能ではない」
アルが倒れ意識のない俺を膝に乗せ警戒しながらそう言う。
「安心してください聖王、もう私に貴方方をどうする事も出来ない。今の私はかすかな残り火みたいなもの。」
「それをバカ正直に信用しろと?」
「無理もありませんね、しかし私は最早あの魔法で存在そのものを「消されている」のです。今の私はもって後数刻も無い残留思念みたいなもの。消される寸前に私の良心が切り離した言わば遺書みたいなものなのでしょう」
その言葉を表すかの様に刻々とシスターを形取るものが霧散していく。
「私はどうやら元々この子の覚醒を促す様に「呪い」を身に宿していた様です。それがこの子が旅立ってから直ぐに発動した。きっと聖都で覚醒の片鱗を見せたのでしょう。「呪い」自体何時私にかけられていたのかは解りません。遅かれ早かれこういう結末は逃れられなかった・・・、今となればもっと時間があれば抗えたかも知れないし関係ない人を巻き込まずに済んだかも知れない。でもこれで私はこれ以上愛する人等を手にかけなくて済みます。時が残されていればもっと・・・、もっと伝えたい言葉が・・・、しかしこれから先彼が迷わない様に伝えて下さい、「私は貴方に救われたと・・・」」
そう言って緩やかに穏やかに笑ったシスターは晴れる蒼天の空に消えていった。
「ーー、確かに貴方の思い、言葉は受け取った。必ず私が伝えよう・・」
一辺の曇りも無い晴れた空に向かいアルはそう誓ったのだった。




