15話
序盤の大切な部分になる為に後ほど大幅に加筆します。申し訳ないですが少々おまちくだしゃ・・
「--っ痛、」
目を覚ますとそこは凄まじい勢いで揺れる馬車の中だった。
「おや?目を覚ましたのかい?」
俺の目覚めにそう優しげに声を掛けてくるのはアルだった。
「ここは何処だ?っていうかなんで俺は・・・、てかフェリスは?なにがどうなって・・・、」
「落ち着きたまえ、ここはアーカムに繋がるメルベル街道。ボクと君は今アーカムへ向かっている。」
状況が飲み込めない俺がした矢継ぎ早な質問にアルそう答えた。
馬車の窓から外を見れば俺とフェリスが聖都まできた道を凄まじい速度で逆走してるのが解った。それを確認した後、馬車の中を見渡すも違和感がある。それはこの馬車には俺とアルしか居ない事だった。
「おい!!フェリスは?フェリスはどうした!!しかもアーカムって・・・、お前何を考えてる?」
俺は怒気を含ませアルに詰め寄る。
「すまない・・・、本当なら君が起きた後に君の同意を得てから出発する予定だったんだが急を要する事態が起きてね・・。それとフェリスの事はこの件というかこれから起こるだろう事に居ない方がいいとボクの判断で置いてきた。警護にクロスナイトをつけてあるから問題はないだろう。」
怒気を含ませ詰め寄る俺にアルは本当に申し訳なさそうに言った。だがそれでも納得はいかない、仮に事が起きているとしたらそれは俺達が育ったアーカムの事なのだ。人に勝手に決められてどうこうという話ではない。
その俺の心情を悟ったのかアルが言葉を続けた。
「勝手な事をしたかも知れない、だが解って欲しい。これから向かう場所には恐らく君の・・・、いや君達の運命の一端がある。そしてそこで君はとても酷な決断を迫られる事になるだろう・・・。そしてそれは君にしか出来ないものでもある。」
何故俺なのだろう?と、思う前にアルの言うそれは俺にも予感というか確信というかがあった。それはアーカムであの黒い少女に出会った時から漠然と感じていた。事実その時から色々な事が目まぐるしく起きている。そう、まるで何かに導かれる様に惹きつけられる様に。
だからアルのその言葉を聞いてるうちに何時の間にか俺の怒気は治まっていた。
「取合えず俺はなにをすればいい?」
怒気は治まったものの態度を急に変えるのもアレなんで我ながら幼稚だなとは思いいつつぶっきらぼうに聞く。
すると急にアルが俺を抱き締める。その意図が解らず不意を突かれた形なので俺は慌ててそれを振り解こうとするも抱き締められ微かに伝わるその震えにそれを躊躇してしまう。
「ちょ、おま、いきなりなにを・・・、」
「ボクなりの君への願懸けだ。どうだい?聖王に抱き締められるとは御利益ありそうだろ?」
そういって抱き締めていた腕を離し悪戯っ子みたいに笑う。
その笑顔の裏に抱えたものをその時の俺は解ってやれなかった。
*******
この世界の馬車等は技術が進み所謂オートマタに近いものだ。勿論本物の馬に引かせるものもある現在の世界では利便性からあまり使われない。制御も魔力等で出来たり出来る為に特別な技術等も必要が無い。なので本物の馬の様に上がった体温を下げる為等休ませながら道中進む必要が無い。
その利便性を最大に生かし見慣れた街道を爆走すると次第に外の景色が変わっていく、瘴気を含んだその不吉な空気が次第に増していきそれと同時に目的地が近い事を肌を通し本能的に知らせる。それは良く知った村のものではなく正しく戦場が近いという類の感覚だ。
「もう着くよ、準備はいいかい?」
変わり果てた村の入り口に馬車を止めアルが俺に問いかける。
「ああ、行こう。」
そう俺はアルの問いに言葉少なめに答え馬車を降りた。
馬車を降り周りを注視すると空気は瘴気で淀み建物は見渡す限り崩れている。俺とフェリスが発つ前の面影等微塵も無く過疎村と言えど見渡せばどこかに誰かが居た優しく穏やかな景色は何処にも無かった。
そして更によく見れば炭化した人の形をしたなにかがあちらこちらにある、それを見た瞬間胃液がこみ上げてくる。
「--、くっ、ここまでなのか、」
こみ上げる胃液の逆流をなんとか押さえる。
「恐らく、一瞬の出来事だったろうね。そして生きている人は・・・、」
アルが言い澱む。
皆まで言わなくても解る、解ってしまう。それ程の惨状が目の前に広がっているのだから。
そしてその惨状の中一際強い瘴気が俺の良く知る建物跡から漂うのも解る。きっとあそこにここでの出来事の答えに至るものが居る。
その建物跡へ俺達は歩みを進めた。
*****
ーー惨状を尻目に歩みを進めた先でその建物はあった。孤児院だ。
建物は礼拝堂以外は半壊しており見る影も無い。そしてその礼拝堂から一際強い瘴気が流れ出している。
俺はゆっくりと礼拝堂の扉を開ける。
扉を開けたその先には何かに祈りを捧げているシスターがいた。
「来ましたね・・・、待っていましたよ」
そういうとシスターは立ち上がりゆっくりと此方に振り向いた。
「何が・・・、何がどうなってるんですか?」
俺は冷静にシスターに説明を求めた。普通なら感情のまま問いかける事だろう、しかし俺がかえって冷静になる位にここにある光景は異常なのだ。
扉を開けた瞬間、祈りを捧げていたシスターは神々しい良く知るシスターのままなのに漂う空気に混ざる一際強い瘴気の発生源もシスターなのだ。そして更に村はあの惨状なのにシスターの身形には埃や塵一つ見当たらない。
その事実が俺を感情のままではなく冷静に、いや、警戒をさせたのだろう。
だから今こうやって冷静に問えるのだが、同時に背中を伝う悪寒も増していく。
「何が・・・、ですか・・。まずはレオン、貴方の事から順に話しましょう。」
そう前置きをし、シスターはゆっくり語りだした。
「まず貴方は「人」ではない。」
‥
は?
何を言っている?
シスターの言葉が俺は理解が出来なかった。
確かに魔力はないが怪我をすれば赤い血は流れるし腹が減れば物も食べる、眠くなれば寝るし排泄だってするし性欲だってある。
だが、シスターはそんな俺を「人」ではないという。
何を言っているのか解らない、理解が出来ない。
「いきなりそんな事言われても混乱するでしょう。では解り易く説明しましょう。まず「魔力」とはなんだと思いますか?」
シスターが混乱している俺にそう問いかける。
しかし生まれて覚えがある限り魔力が無かった俺はそんな事考えた事が無い。だからその問いに俺は答えられない。
「何も難しい事ではないのですよ。「魔力」とはそもそもその者ないし物のプラーナの余剰分というべきもの。この世界では生きとし生けるものはその「魔力」を行使出来るし術を持っている。その事は人が生まれた時誰に教わらずとも呼吸が出来る等と同じ様に当たり前の事。ではプラーナの余剰分である「魔力」を持たないという事はどういうことなのでしょうか?確かに「魔力」はそのものの資質等に依存したりしますがこの世界において少なくとも人に限定するのならそれは「死人」を意味します。では「死人」ではなくそれでいて「魔力」を持たない貴方はなんなのでしょうか?」
そんな事考えた事も無かった。
心のどこかで俺と同じ様な奴は居るだろうとしか思っていなかった。
しかし、シスターの言葉はそんな「人」は存在しないと言っている。
この世界を端から端まで確かめた訳ではないしにわかに信じられない、いや、信じたくはないが否定出来る様な根拠もない。
じゃあ仮にシスターの言葉が真実だとして俺はなんなのだ?
それと今ここで起きている事と何が関係あるというのだろう?
もうなにをどう理解していいのか解らず俺はその場に膝つく。
「ーー、これは少し黙ってはいられないかな~ボクとしては。」
突然後ろでやり取りを黙って見ていたアルがそういい膝つき錯乱寸前の俺に近寄る。
「いいかい?レオン。あのシスターはもう君が知っているシスターじゃないんだ。見た目や話し方等似ているかもしれないけど断じて違う。」
そう言ってアルは俺に肩を貸し立たせる。
「言いますね聖王アルクエイド。しかし、彼が「人」でないのは事実。その事は貴方もご存知でしょう?」
「さーてね、ボクとしては彼は彼だしそんな事些細な事だと思ってるけどなあ~、全てひっくるめてどう思うかなんてのは彼が決める事。少なくとも7剣の資格者やマスターなんてのは普通の人の理から大なり小なり外れてるんだから。」
そういってアルはニヤリと口元に笑みを浮かべる。
「やはり聖王、貴方は捨て置けませんね。」
そういってシスターは漂わせる瘴気を強め戦意を強める。それに呼応するかの様に異形の魔物の様なものが集まってくる。
「んー、今の言葉のやり取りで何故そうなるかは意味解らないけど・・・、」
そういいアルは肩を貸し辛うじて立たせた俺の方を向く。
「君が今何に混乱しているかは正確にはボクには解らない。だけど君が今やらないといけない事、君しか出来ない事は今ここにある。訳も解らない事や納得できない事なんかもあるだろう。でも今君が戦わなければここの惨状より酷い事が起きる。だから今は戦って欲しい、先々君が何を選び何をするにしても君が君の運命に立ち向かえる様にボクは今もこの先も力を貸そう。それがボクの「約束」だから」
その言葉と共に俺に貸している肩の反対のの腕で腰に下げた白銀の剣を抜く。
「聖王の名の下にその力、魔を打ち払わん威光をここに示せ!!デュランダル!!」




