13話
ハッ、と目を覚ますと顔の前には慎ましくも優しい二つの女性の象徴があった。
寝惚けた頭が状況を整理しきれず一瞬フリーズしたが、それも直ぐに解ける。結局俺はあのままフェリスに抱かれたままいつの間にか眠ったのだ。
お互いに抱き合って寝た形であった為少し気恥ずかしいが、昨日あれだけ荒れていた心は嘘の様に落ち着いている。
俺はまだ眠っているフェリスの腕の中をするりと起こさない様に抜け布団をかけ直してやる。すると閉められている窓から夜明けを知らせる朝日がゆっくりこもれて、その光が寝ているフェリスの横顔を照らす。
「綺麗だ・・・、。」
とても幻想的な光景に見えた俺は思わず言葉を発していた。彼女の横顔はまだ薄暗い部屋の中で照らされその髪や白い肌が時折射し照らす光に呼応するかの様に空気中に光の粒子をにキラキラと蒔き輝いている様に見えた。
ボーっと見惚れてしまう自分をイカンイカンと、頭をブンブン振り俺はその場を静かに後にし音を立てない様に部屋を出た。
部屋を出て落ち着かない俺はまだ朝早く人気の無い街を歩いた。
昨日荒れだけ心が荒れていたというのにフェリスに抱き締められ眠り、あまつその寝顔に見蕩れてしまった事を思い出すとなんともいえない気恥ずかしさで悶えそうだ。
しかし思い返してみるといつもそうだった。まだ幼く孤児院に居た頃から何かあった時等はああして慰めてくれたのはフェリスだった。
まあ、この歳でその時と同じ様にされるとは思ってもいなかったのだが。
だが救われた、黒い感情が心の中を荒れ狂っていて今にも何かが噴出しそうだったのを。
今落ち着いてこうして考えてみれば、きっと俺はあの時「恐怖」を感じていたのだろう。アーカムで出会った少女の時とは違う「恐怖」をだ。
その正体まではハッキリしない、だがその事にいち早く気が付き自分も怖かっただろうにそれを抑え気丈に振舞い俺を救ってくれたのだ。
それは俺が彼女の腕の中で意識を飛ばす前に感じた押さえきれずに時折感じた震えからも分かる。
そんな彼女だからこそいつしか異性として俺は惹かれていたのだろう、彼女はどう思っているのかは分からないが。
そんな事をぼんやり考えているといつの間にか宿の前まで戻ってきていた。もうすっかり日が上がりきり調度いいので中に入るとカウンターの前に数名の騎士と青ざめたフェリスが居た。その様子にただ事ではない雰囲気を悟り問う。
「どうした?なにがあった?」
俺の問いにフェリスではなく騎士の方が答えた。
「レオン様ですね?火急の命の為フェリス様にはお伝えしましたが改めてレオン様にもお伝えします。今すぐここを引払い城までお越し下さい。」
はぁ!?
理由が思いつかない。
「城に?なんでまた急に?」
当然理由を尋ねる。
「詳細を話す権限を与えられていませんので詳しくはここでは申し上げられませんが・・・、アーカム村についての事です。」
伏目で言う騎士の様子からそれがいい話では無い事が解る。フェリスも当然同じ事を言われたのだろう。
「兎も角早急に城までお越し下さい。そこでアルクエイド様がお待ちです。」
「わかった、直ぐに支度する。」
そう言って顔が青ざめ軽く放心しているフェリスの手を引き部屋に戻り支度を済ませ城に向かった.
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支度を済ませ用意された馬車に乗り込み揺られる事数分、俺達は聖都の中でも遠巻きでも解るこの聖都の象徴ニーベルング城に着いた。
観光であれば色々見て回りたくなる位様式美に尽くされた美しい城なのだが今はそれどころではない為早々に謁見の間に急いだ。
通された謁見の間には先日の様なラフな格好ではなく白銀の鎧で正装し玉座に座るアルがいた。
「アルクエイド様、お二人をお連れしました。」
そう言い俺達をここまで連れてきてくれた騎士達が片膝をつき頭を下げる。
「ご苦労、お前達は下がっていい。」
そう騎士達を労い下がる様に言うアルには先日の様な軽薄さを感じない。その空気というか雰囲気が更にこれから聞かされる事の重さを感じさせこの場の緊張感を増していく。
そうしてこの場にアルと俺達の三人になった所でアルが事の真相を話し出した。
「二人共・・・、心して聞いて欲しい。君達の村アーカムが・・、壊滅した。」
はぁ!?
俺は何かの聞き間違いかと思った。村を出てまだ数日、それこそ半月すら経っちゃいないのに何故そんな事になる?
叫びだしそうな感情を抑えて詳細を聞く。
「何が・・・、どうして・・、いや、それより被害は?村の人達は・・・、シスターはどうなったんですか?」
青ざめ今にも意識を失いそうなフェリスを支えながら詳細を更に聞くと答えは予想より遥かに残酷だった。
「--、知らせは昨日の夜、直ぐに兵を出したんだが・・・、結果は残念だが生存者は皆無だ。建物はほぼ全て倒壊し、あるのは死体のみだそうだ。」
そこまでの話しを聞いた時俺が支えながら只でさえやっと立っていたフェリスが気を失った。
「レイラ!!入室を許可する。今すぐフェリスを治癒師に」
足元からまるで糸の切れたマリオネットの様に倒れるフェリスを俺が抱き止めると同時にアルの声でレイラが飛び込んでくる。
「レオン殿、フェリス殿は私にお任せください。貴方はまだここでお話をお聞き下さい。」
そうレイラは言い残し倒れたフェリスを抱え謁見の間を出た。
「まだ話しを聞けとはどういうことだ?これ以上何がある?」
俺は倒れたフェリスが心配で感情が溢れそうになるのを更に抑えアルに聞く。
「レオン・・・、よく聞いてくれ・・、。このアーカムの事件を起こしたのは・・・」
そこまで言ってアルは言い淀む。その表情は沈痛を滲ませていた。
「そこまで言って口篭るな!!!!」
耐え切れずに俺は遂に感情高ぶるままアルに叫んだ。もう今は彼女がこの聖都の王等どうでもいい、ただ事実を知りそれを今ここで聞いていないフェリスにも伝えなければならない。
そういう焦りと倒れたフェリスへの心配、そして大切だった村の惨事のやるせなさ等様々な感情が渦巻いている中アルが遂にそれを口にする。
「今回の事件・・・、起こしたのは君達を育てたシスターなんだよ。」
・・・
・・・・・、
・・・・・・・
え!?




