4/57
第3話 花音という女
昼休み。
教室へ向かう途中、悠斗は花音を見つけた。
「花音」
「ん?」
花音はスマートフォンを見ながら歩いている。
「また読んどるん?」
「新作」
「昨日も読んどらんだ?」
「昨日は昨日、今日は今日」
悠斗は呆れたように肩をすくめた。
「毎日何作品読んどるん?」
「漫画とラノベとWeb小説合わせて十作品くらいかな」
「多すぎやろ」
花音は悪びれる様子もなく笑う。
「今期も豊作やなぁ……」
「収穫祭みたいに言うな」
「追放も増えてきたし、悪役令嬢も面白いし、転生も熱いし」
「あと主人公最強!」
「それ絶対外せやんの?」
「外せやん」
花音は満面の笑みで親指を立てた。
「主人公は強ければ強いほどええ!」
悠斗は小さくため息をつく。
「読む量も趣味も極端すぎるやろ……」
しかし、この時の悠斗はまだ知らなかった。
その膨大な読書量が、後に自分を設定地獄へ突き落とす原因になることを。




