第33話 主人公
放課後。
悠斗はノートをめくった。
「世界観もできた」
「ラスボスもできた」
「ほな、ようやく主人公を書こうか」
花音は目を輝かせる。
「待ってました!」
悠斗はペンを走らせた。
「主人公ルシウス」
「幼い頃から魔法の才能がずば抜けとる」
花音は嬉しそうに頷く。
「主人公っぽい!」
「ただ」
悠斗は続ける。
「才能だけやと面白くない」
「努力する主人公にしよう」
花音は首をかしげる。
「努力?」
「王城の魔法図書館へ通う」
「失われた魔法を調べ続ける」
「勉強もする」
花音は感心したように言う。
「ちゃんと努力してる!」
悠斗はさらに書き加える。
「そこで大魔法使いの師匠と出会う」
「一緒に研究するんや」
花音は嬉しそうに拍手した。
「師弟もの!」
悠斗は頷く。
「師匠がおると説明役にもなるし、成長も描きやすい」
花音は腕を組みながら感心する。
「そこまで考えるんだ」
悠斗は苦笑した。
「考えんと物語にならんからな」
最後にノートを閉じる。
「……ようやく主人公が主人公し始めたな」
花音は笑顔で頷く。
「ここから冒険だね!」
悠斗はため息交じりに笑う。
「その前に、設定ばっか増えて主人公が全然動けへんかったけどな」
花音はえへへと笑う。
「でも、ちゃんと動き出した!」
二人は顔を見合わせ、満足そうに頷いた。
こうしてルシウスは、長い準備期間を経てようやく物語の主人公として歩き始めるのだった。




