第31話 千年
放課後。
悠斗はノートを見返していた。
「……そういや」
「千年に一度、天使が攻めてくる設定やったな」
花音は元気よく頷く。
「そう!」
悠斗は思わずツッコんだ。
「あんたが言い始めたんやろ!」
「なんで千年に一度なんかくらい考えとけや!」
花音はてへっと笑う。
「かっこいいから!」
悠斗は頭を抱えた。
「またそれか……」
少し考え込んだあと、ペンを走らせる。
「人間界と天界では、時間の流れの感じ方が違うんや」
花音は首をかしげる。
「どういうこと?」
「天界では数年しか経っとらん感覚でも、人間界では千年経っとる」
「せやから天使からしたら」
「『久しぶりに人間界へ行くか』」
「そのくらいの感覚なんや」
花音は目を輝かせた。
「なるほど!」
悠斗はさらに続ける。
「人間からしたら千年に一度の大災害」
「でも天使からしたら、ちょっと時間が経った程度」
「世界が違えば、時間の尺度も違うってことやな」
花音は感心したように頷く。
「ちゃんと理由ある!」
悠斗は即座に返した。
「最初から理由付きで持ってこい!」
花音はにこっと笑う。
「そこお願い!」
悠斗は静かにノートを閉じた。
「……この一言で毎回ワイの仕事が増えるんや」
こうして”千年に一度”という一文にも、悠斗によってしっかりとした理由が与えられたのだった。




