30/57
第29話 転生
放課後。
悠斗はノートの新しいページを開いた。
「ほな、プロローグから作るで」
花音は机に身を乗り出す。
「お願い!」
悠斗はペンを走らせる。
「主人公ルシウス」
「実は天使の生まれ変わり」
花音の目が輝く。
「おぉ!」
悠斗は続ける。
「神の命で人間へ転生」
「目的は、来るべき天使との戦争に備えること」
「暴れ天使を討伐するためや」
花音は勢いよく頷く。
「いいね!」
悠斗はさらに書き加える。
「ただし」
「転生した時点で天使だった記憶は全部失う」
花音は首をかしげた。
「なんで?」
悠斗は即答する。
「覚えとったら物語にならんやろ」
「最初から全部知っとる主人公なんて面白くない」
「少しずつ真実を知っていくから面白いんや」
花音は感心したように拍手した。
「なるほどー!」
「転生きたー!」
悠斗は苦笑する。
「お前、『転生』って言いたいだけやろ」
花音は満面の笑み。
「うん!」
悠斗は天井を見上げた。
「素直すぎるんや……」
こうして主人公ルシウスの物語は、ようやく始まりを迎えたのだった。




