04 希望の光
小鳥の囀りが心地よく鳴り響く。硬い地面ではなく柔らかい何かに横たわっている感覚がする。少女は最後に見た記憶を思い出し、違和感で勢いよく起きる。
(早く家へ戻って家主に謝らないと...。)
目を開けるといつも寝ている場所より何倍も広く、綺麗な部屋が広がっていた。
強張っていた表情が柔らかくなり、思わず目を輝かせる。その瞬間、少女の顔は驚きへと変わる。
(ちょっと待ってここはどこ?)
目を開けると知らない光景が広がっていたのだ。少女は混乱した。広い部屋だが物は殆ど置いていない。しかし掃除は行き届いており、清潔感を感じる。
世間からみれば質素で小さく古い家だが少女にとってこの家はとてつもなく綺麗で広く感じた。
(ここはどこか確かめないと。それと迷惑をかけちゃいけないさっさとここを去らなきゃ。)
床に足をつけて立ち上がる。この家は古いため床がギシギシとなる。少女はお構いなしに歩き回りこの家の主を探した。
「すみませ〜ん!誰かいますか〜?」
いくら呼びかけても返事はない。
しばらく家の中を彷徨いた後、この家の玄関扉を開いた。するとそこには端正な顔立ちの美しい美女が草抜きをしていた。
「おはようございます...............。あの...助けてくださったのはあなたですか?それならありがとうございます。」
少女は綺麗な美女にドギマギし、つっかえながらも感謝を述べる。
「まぁ!起きたのね。よかったわ。それと助けのお礼なんて不要よ? それよりあなたお腹空いてない?」
妖艶な微笑みを浮かべ、気遣いを見せるその様子は女神ようであった。
「お腹は空いていますけど...。迷惑かけてごめんなさい。もう帰りますのでお気兼ねなく。助けていただいてありがとうございました!」
迷惑をかけてはいけないと早足で去ろうとする少女の腕をガッチリと掴む美女。華奢に見えて力は強い。
「待ってくださいな。せめてご飯を食べてちょうだい?」
美女は有無を言わせぬ口調で言い放つ。少女は驚きながらも言葉に甘えることにした。
台所で美女は忙しそうに動き回る。少女は言われた通り席に座り落ち着かない様子で周りを見渡していた。
ガチャガチャと鳴り響く食器の音がしてからしばらく経つと少女の目の前に食事が運ばれてきた。
湯気の立つ野菜のスープにいい香りのする柔らかそうなパン。それに温かいお茶。
質素だが少女にとってこのような食事は数年間食べていなく、全てが輝いて見える。少女の目は瞬く間に輝き始め、視線が釘付けである。
「さぁどうぞ召し上がってくださいな。」
「本当に食べてもいいのですか?」
上目遣いでチラチラと美女の方を見る。美女はおかしくて堪らなかったのか笑い出した。
「遠慮することはないのよ?気兼ねなく食べて?」
そう許可を出された瞬間、少女は物凄いスピードで食べ始めた。
「ご飯美味しい? よかったわ!頑張って作った甲斐があった!」
そう嬉しそうに微笑む美女はやはり女神だった。
「ところであなたお名前は?」
そう聞かれた直後少女の顔は強張り、真っ青な顔をする。
「...ありません。」
そうはっきりと告げる少女は悲しそうでありながら怯えていた表情をしていた。
そして微笑みを消し、一瞬のうちに驚く顔をする。
名前がないということは平民より低い身分の場合に限る。少女の一言は全てを察するのに十分だった。
「ごめんなさい。この事は忘れてちょうだい。」
辛そうな顔で少女に謝る。
「大丈夫です。お気遣いありがとうございます。名前に関しては気にしていません。名前がなくたって生きていけますから。」
過去の辛いことを封じ込めるかにような貼り付けた笑顔で答える。
「.....。」
何か言いたげな美女の名はレイナ・レグナムであった。彼女はレグナム王国の王女である。地位も財力も魔力量もトップであるが、重い病気を患っており、都市部より空気が綺麗な農村部で治療していた。彼女の寿命は残り3ヶ月だった。




