4-2 変化
翌朝。
城下には尚も留まる賊軍の姿。そして、大森林方面については動きは確認できなかった。
部隊長を集めての軍議では、当主帰還を理由に城を出ての戦い案が出た。城下から大森林一帯まで記述された地図を広げ、駒を配置しての話を聞く。
城門を出ての中央突破し、敵本陣へ突撃する案。その話を最後まで聞き、決断する。
「案はわかった。だが採用はまだその時ではない」
不満げな部隊長たち。散会してからほどなくして、北側の森林から賊軍らしき新手が一千、姿を現して包囲する賊軍と合流した。それも、軍議で突撃を決めていれば、突入開始後間もなくだったかもしれないタイミングで。
それを天守から眺めながら呟く。
「……これで、部隊長たちは納得するだろうか」
「半々、いえそれ以下でしょうね」
答えたのは許嫁のみ。オリバー、キースは無言だった。
その日は、防衛戦としての小競り合いがあり、五百ほどの賊軍が大森林方面へ動く様子も見られた。
さらに翌日、二千が西から現れ、帝国旗こそ掲げていないものの賊軍が帝国内の周辺貴族まで動いていることが確定した。
「…………」
「…………」
帝国貴族がサンフィールド領を襲撃している。その事実を前に作戦を提案する者は現れなかった。
一度の降伏勧告を拒絶し、三日三晩の連戦。そして五日目。
「申し上げます! 大森林に帝国旗が!」
「申し上げます! 西から帝国旗を掲げる騎士団が!」
急報を前に、許嫁と目が合い頷いた。
「キース、オリバー、出撃の準備を。決着のときだ!」
そうして集まったのは騎兵は百騎に他志願者も含めれば五百はあろうかという兵たちだった。
その瞳を見れば、覚悟を持った者たちだとすぐにわかる。敵からの攻撃を待つ、ひと時の静けさの中、集まった者たちへ告げる。
「ここに集まった者たちに告ぐ」
馬上から周囲を見渡し、一人一人の顔を眺めてから言葉を続ける。
その兵たちの中にはシトとランの姿もあった。
「時は来た。よってこれより城を出て突撃を行う。
これより先、過酷な戦いが待ち受けているだろう。だが、待ち受けるのは無謀な決死ではない。我らはサンフィールド地方の誇りとして賊軍を撃破する。
故に、貴様らには無駄死にすることは禁ずる。戦い、生きて、生きて、生き延びて、敵を一兵でも多く葬り、英雄となることを使命だと心得よ。
だから私、サンフィールド家の当主としてここに宣言する。この一戦は勝利が約束された戦だ。私を信じる者はそのあとに続け。疑う足手まといは今ここで残ることを許す。…………では行くぞ、城門を開門せよ!」
鈍い音をたてながら開かれる城門。
「突撃!」




