マッチングアプリでの出会い 7
結局、私は幸子さんに止められた後も純さんとのやりとりを続けてました。
日常的にやりとりしていたのは、本当に他愛ないことです。
「おはよう」や「おやすみ」と言った挨拶だったり、今日のお天気の話だったり、テレビ番組の話だったり。
純さんは夜のお仕事で生活時間帯が私とは全く違うので、返信はすぐに来るわけではありませんでしたが、それでもこちらの言ったことにはいつもちゃんと答えてくれました。
それに、純さんは意外にひょうきんな方で、ちょくちょくクスッと来るようなことを言って私をなごませてくれました。
考えてみたら不思議なことです。
純さんとお知り合いになる前は、日常的に連絡を取り合う相手もいなくて、LINEも仕事関係で使うだけでした。
でも別にそれを寂しいと思ったこともないし、話し相手がほしいと思ったこともありませんでした。
逆に、人と深い関係を築くのが煩わしいとさえ感じていたくらいです。
それなのに、今では純さんとのやりとりが日常的なはずせないルーティーンの一つになってしまっているのですから。
そして、やりとりを続けていくうちに、純さんに会いたいという気持ちが日増しに募ってきました。
いえ、もう最初からお会いしたいのはやまやまだったのですが、私の実物を目にした純さんに失望されるのが嫌でした。
「なんだ、可愛いと思ったのは勘違いだった、ただの地味子じゃないか」
って。
それに、LINEのやりとりは慣れてきたものの、本物の純さんにお会いしたら間違いなく挙動不審になる自信がありました。
純さんはおそらく「気にしない」と言ってくださるでしょうが、そんな自分をお見せするのも嫌でした。
だけど・・・そういった気持ちを脇に追いやってしまうくらい、純さんに対する興味は私の中で大きく大きく膨れ上がっていました。
だから、思いきって言ってみたんです。
『今度お会いできませんか』
って。
LINEでその一言をお送りした直後は、心臓がバクバクしていました。
「とうとう言ってしまった。もう後には引き返せない」
という感じです。
端からみたらそこまで大袈裟なことではないのかもしれませんが、私にとってはもうまさに、崖から飛び降りる心境です。
会うのを断られることはないでしょうが、それでも実際にお会いすることになったら・・・。
その先が考えられません。
純さんからの返信が来るのがとってもとっても長く感じられて、その間全く何も手につきませんでした。
LINEの着信音が鳴った時には、冗談じゃなく本当に飛び上がってしまったほどです。
『もちろん会おう! いつがいい?』
『私は土日がお休みなので、土日のどちらかがいいです』
『じゃあ今度の土曜日とかは?』
『大丈夫です』
『できれば俺の仕事の前がいいんだけど・・・17時とかでも大丈夫?』
『大丈夫です』
私、同じことしか言ってません。
待ち合わせ場所は、新宿にあるカフェに決まりました。
あ、お伝えするのを忘れていましたが、純さんは歌舞伎町にお勤めです。
『決まりだね! やっと愛香ちゃんに会える』
また・・・純さんは私の顔がにやけてしまうようなことをおっしゃる。
『私もずっと純さんにお会いしたかったです』
すぐにそう返信しようとして・・・手を止めてしまいました。
送信しようとしたのに、どうしても手が動きません。
その一言が、私にとってはとても重い言葉に感じてしまったのです。
それでもしばらく迷ってから、入力した文章を消しました。
『よろしくお願いします』
代わりに送信したのは、当たり障りのない一言。
『こちらこそよろしく! 楽しみにしてるね』
純さんのテンションは変わりません。
何はともあれ、こうしてお会いすることが決まったのです。




