入店5回目 1 ~泣きそうです・・・~
八月中旬。
世間ではまだ大半の方々がお盆休みの真っ最中。
私は例によって電車に乗って新宿に向かっていました。
これから夜になる時間帯だというのに、都心へ走る電車にはたくさんの乗客がいます。
中には夏休みらしい学生さんの姿まで。
今日は真夏にふさわしい猛暑日だったので、お店に行くための服装もそれらしいものにしてみました。
選んだのはオフショルダーのヒラヒラワンピース。
体の線がくっきり出ていて、胸元もちょっとチラ見え。
私にしてはかなり大胆な大人っぽいチョイスだと思います。
「いつもと雰囲気違うね」なんて純さんに褒めていただけたらなぁ、なんて淡い期待も・・・。
純さんとの待ち合わせはこれまでと同じ時間、同じ場所です。
私は自宅の最寄り駅から新宿までの直通電車を選んで乗ってしまうので、いつも待ち合わせ時間にはかなり早めに待ち合わせ場所のカフェに着いてしまいます。
その場合はもちろん、先にお店に入って純さんを待つことに。
その日もそうしてカフェでコーヒーを飲みながらのんびり寛いで純さんからのご連絡を待っていたのですが・・・。
『愛香ちゃんごめん! 今日同伴できなくなった!』
待ち合わせの時間に来たのは純さんご本人ではなくLINEの連絡でした。
『え、どうしてですか? 何かありました?』
『前に来てくれたお客さまが今から急に来たいって連絡があって・・・。他県の方なんだけど、東京に出てきたから久しぶりに店に寄りたいって』
『私の方が先にお約束してたのに・・・?』
『愛香ちゃん俺のこと応援してるっていつも言ってくれてるし、ここは譲ってもらえると助かる!』
そう言われて「はい、そうですか」って心よく譲れる女性がいったいこの世に何人くらいいらっしゃるのでしょうか。
それに、純さんの様子でピンときました。
おそらくその他県からいらしたというお客さまはいわゆる太客さんなのです。
だったら、繊維客の私なんて後回しにされて当然です。
少なくとも、夜の世界ではそれが常識です。
分かってはいるつもりですが・・・それでも惨めな気持ちになるのはどうしようもできません。
何よりショックだったのは、純さんがこんなにあっさり約束を破る方だとは思っていなかったのです。
不器用ながらも、もっと誠実な方だと・・・。
そんなことを幸子さんに言おうものなら、
「バッカじゃないの? 誠実なホストなんて、出会い系に登録してプロフで『自分は誠実です』ってアピールしてる既婚者くらいありえないわよ」
などと言われてしまいそうです。




