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入店4回目 4 ~痛客~

「お客さま、困ります」


 黒服さんはほとんど羽交い締め状態で女性を止めようとして、他のホストさんたちは二人の女性の間にどうにか割って入ろうとしています。


どう見ても“修羅場”という表現がふさわしそうな状況。


 ――結局、エースさんに喧嘩を売りにいった女性はそのまま退店させられてしまいました。


「皆さまお騒がせいたしました」


 騒ぎがすむと、ことの成り行きを固唾を飲んで見守っていた店内中の方々に黒服さんが頭を下げて回ります。


「ごめんね、愛香ちゃん。びっくりしたでしょ」


「いいえ・・・」


 純さんも申し訳なさそうに謝ってくださいましたが、私はただただ驚いてなにも言えませんでした。


「ホント、ごめんね。気を取り直してこれから楽しも」


 琳人さんもどこかばつが悪そうにそうおっしゃってくださるのですが、私は曖昧な笑みしか返せません。


 彼女たちを庇うわけではないですが・・・同じ女として気持ちは分からなくはないと思うのです。


ホストクラブのお姫に限らず、女性というのはマウンティングが好きな生き物です。


ましてホストクラブのように費やした金額が数字として目に見えるのあればマウンティングもしやすいかもしれません。


ただ・・・。


ネット上にはホストクラブの情報サイトなるものもあって、そこにはお姫たちが様々なことを書き込める掲示板もあります。


そういうところやTwitterなどでいわゆる「担当狂い」と自称するほど一人のホストさんにはまって入れ込んでいる女性たちの書き込みを見ていると何だか切なくなってしまうのです。


ホストと客という関係も、大まかに言ってしまえば人間関係の一つです。


ホストもお客さまも人間なのですから、そこに“情”が絡んでくることもあります。


「ホストに入れ込むなんて頭の悪い女だ」と一般的には侮蔑を持って認識されがちですが、例えば応援したい人、好きな人のために必死になるというのは、対象が誰であれ、女性であれば多かれ少なかれ経験したことがある、もしくは理解できるとおっしゃる方が大半なのではないかと思います。


お姫たちは心の底からホストさんたちを応援していて、あるいは本当にお相手のことが好きで、だからこそ日々ご自分たちの立場に思い悩まれることもあるのです。


マウンティングだって詰まるところ「あたしが一番彼のことを思ってるのよ!」「あたしが一番彼に尽くしてるのよ!」という心の叫びだとすれば、健気・・・と言えなくもないのではないでしょうか。


ただホストクラブの場合、費やされる金額と方向性が多少一般とは乖離しているというだけで。


 店内で騒ぎを起こしたお客さまは“痛客”と認定され最悪出禁になることもあるらしいですが・・・痛客の女性にもエースさんにも、何だか私は(変な言い方ですが)女として親近感を抱くことしかできませんでした。


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