初回 8 ~シャンパンコール~
チェックをお願いして、お支払をすませると純さんの後に続いて入り口へ向かいます。
「お客さまお帰りです」
帰る時にも店内にアナウンスされてしまうのですね。
純さんはお店の外までお見送りしてくださいます。
これはホストクラブでは当たり前のことで、担当ホストさんは必ずお見送りすることになっているようです。
ちなみに、ホストクラブには私のようにホストさんに連れてきていただくのではなく、自ら直接お店へ出向くいわゆる飛び込みのお客さまもいらっしゃいます。
そういう方はまず最初に三名のホストさんを選んで指名するのだそうです。
そして最後にお店の外までお見送りしていただくホストさんを一人指名します(これを「送り指名」というそうです)。
送り指名に選ばれたホストさんは、お見送りした時にお相手の連絡先を聞くなどして次に繋げるチャンスを得られるわけですね。
余談ですが、ネットで見た知識では「初回荒らし」なるものがいるらしいです。
これは、いろいろなお店の初回のみに行ってお安くホストクラブを楽しもうというある意味での裏テクですね。
ただ、次に繋がるお客さまにはならないので、ホストさんたちはあまりいい顔をされないそうです。
「愛香ちゃん、今日は本当にありがとう」
「いえ、こちらこそありがとうございます」
お店の外で、ほんの数分間純さんと二人だけで立ち話。
このまま帰るのはとっっても名残惜しいです・・・。
「気をつけて帰ってね」
「はい」
何か言わなきゃと思うのですが、言葉が出てきません。
「家に着いたら連絡して。無事に帰れたか心配だし。営業中は返せないけど、また連絡するね」
「分かりました」
あああ、もう。
私ってば本当に気が利かない。
「じゃあ、失礼します」
「うん。またね」
そう言って手を振る純さんを後に、私は歩きだしました。
よく考えたら、お店に行く時は純さんが一緒だったわけで、歌舞伎町の中を私一人で歩いていくのはなかなかのスリルです。
深夜にはまだ遠い時間帯ですが、それでもほろ酔いの男性やたむろする外国人もいて、私は自然と早足になってました。
駅に着いて自宅方面に向かう電車に乘った時には思わず深い溜め息が漏れたほどです。
電車のドアに寄りかかって流れていく新宿の街並みを見るともなく眺めていました。
とにかく疲れました。
それを自覚するとにわかにドッと疲労感が押し寄せてきます。
とにかくいろんな事が目まぐるしくて刺激的で、私のキャパは完全にオーバー。
脳みそから何かが溢れだしそうです。
まだ今日起きたことを反芻する余地もありません。




