初回 4 ~シャンパンコール~
またもやキョロキョロしていると目の前の席にどなかた座りました。
純さんが戻ってらしたのかと思ったのですが、そこにいらしたのは金髪の若い男性。
肌がやたら白く見えるのは、もしかしてお化粧なさってるんでしょうか。
「こんばんはー。初めてだよね。名前教えてもらっていい?」
・・・どなたでしょう。
よく分からないながら自分の名前を告げると、その男性は持っていたハート型の紙に私の名前を書き込みます。
「愛香ちゃんね」
そして、テーブルの上にあったメモクリップにそれを挟みました。
「おまたせ」
そこへ純さんが飲み物を持って戻ってらっしゃいます。
ところが私用のグラスに飲み物を注ぐとまたどこかへ行ってしまわれます。
「僕も飲み物いただいていいですかー?」
私がおろおろしていると、目の前の男性にそう聞かれました。
「えっ、あ、は、はい」
よく分からないままうなずくと、男性は小型のピッチャーからご自分が持ってこられたグラスに烏龍茶を注ぎました。
そして手に持ったグラスをこちらに傾けられます。
それが乾杯を求めているのだと分かるまでに少し時間がかかりました。
そうと分かって慌ててグラスを手に取り、軽く乾杯を交わします。
「ブルダへようこそー。僕は泰知っていいます」
ニコニコと笑いながら自己紹介するその方に、状況が掴めない私は半笑いを返しました。
「歌舞伎町とかってよく来る人?」
「い、いいえっ。全然ですっ」
「ホストクラブも初めて?」
「は、はいっ」
「休みの日とかって何してるの?」
「え、あ、あの・・・え、映画見たり・・・」
この会話何なのでしょう?
どうして私はこの方とお話しているんでしょうか。
純さんはどこへ行ってしまわれたのでしょう。
「映画かぁ。最近何見ました?」
心の中でおろおろする私をよそに、その泰知さんという方はお話を進められます。
「えっ、何・・・?」
注意力散漫になってる上、店内に流れる音楽が少々うるさくて私には泰知さんの質問がうまく聞き取れません。
「最近見た映画とかある?」
「あああ、あの、最近見たのは・・・」
泰知さんは少し声のボリュームを上げて聞き返してくださいましたが、とにかく答えなければと焦ってしまった私はとっさには何も思い浮かびませんでした。
「あの、その・・・忘れて・・・しまって・・・」
「あー、大丈夫。僕は最近初めて『スターウォーズ』見たんですよ。見たことあります?」
「あっ、ありますっ」
「あれ、すごいですよねぇ、世界観の作り込みとか」
好きな作品の名前が出てきたため、張り切ってお返事したかったのですが、うまく言葉が出てこなくてうんうんとうなずくことしかできません。
そこへ、黒服さんがそっと近づいてきて泰知さんの肩に軽く手を置かれます。
「あー、呼ばれちゃったのでここで失礼しますね」
それが合図だったらしく、泰知さんはそう言って立ち上がりました。
立ち上がる前にもう一度グラスを合わせます。




