第13話
時刻は昼を過ぎた時間、空は太陽がゆっくりと動いている。
そんな中、ガストラル城の出入り口でにらみ合う二人。
ベルジュとジラボック。
「始めましょうか、楽しい解体ショーを、ねぇ!」
「ええ、貴方の断末魔を楽しみにしていますわ」
ベルジュはジラボックの懐に踏み込んでから大剣の柄で殴ろうとしたが、スッと右側に避けられる。
ここまでは計算通りだ。
次の一撃は柄を両手で持ってそのまま切り払う、そうすれば上半身が下半身とお別れするはず。
しかしこの攻撃はすでにジラボックに見切られていた。
少しだけ飛び跳ねて前転で回避しながら、ジラボックは着地した。
振り向いたベルジュの胸元にナイフで切られた傷ができる。
カウンターされたようだ。
「このナイフね、君のために用意した新品なんだ。
斬られれば斬られるほど気持ちよくなる媚薬つきなんだからねぇ」
「それは、楽しみですね……ふふっ」
酒に酔ったような感覚がする、胸元にかすり傷ができて服が少し破れている。
「次は避けられませんよ?」
「いやいや、当たらないよー?ひひひっ」
青い髪のジラボックはずいぶんと余裕なようだ、先ほどからカウンターを狙っているように
じっと動かない。
次の攻撃はベルジュの大剣の縦斬りだった、しかしこれもまた右側に回避されナイフを突き刺そうと
ジラボックが刺してくる。
反射的に避けるが、今度は右肩をナイフがかすめた。
……手加減されている。そう気づいた。
この男、ジラボックは嬲るつもりのようだ。
再び、酔いが回るような感覚を覚える。
ナイフの痛みがだんだんと、気持ちがいいものになってくる。
「ほらほら、早く_殺してください_ってお願いしてきなよ」
「っ!」
大剣から右手を離して裏拳を顔に入れようとするが、ジラボックに懐に飛び込まれてしまう。
右の脇腹をナイフで軽く斬られる。傷は浅いが、黄色い液体が傷口に付着する。
なんて、甘美なんだろう。とベルジュは思う。
斬られるのが、気持ちいい。だんだん顔を赤らめていくのが自分でもわかる。
こんなにも殺されそうになるのが楽しいなんて、あの時 以来ではないだろうか。
「はぁ、はぁ……まずは、貴方が逝ってからにしますわ」
「じゃあ、ボクは君をイかせてあげるよ」
ちょっと、本気出すね。とジラボックが言った瞬間、姿を消した。
四方八方からナイフの攻撃が飛んでくる、
大剣を反射的に盾の代わりに使うが、その場所には攻撃がこない。
「きゃあっ!」
服が破られ、傷も増えていく。
「なんだ、可愛い声で喘げるじゃないか」
血の付いたナイフをペロリと舐めるジラボック。次に出た言葉はおいしい……だった。
「ボクは君を殺さないよ?君が自分で自分を差し出すまでね、ひっははは!」
「……それは、楽しい言葉ですわね。言ってみたいですわ」
体中が傷だらけで、もう酔いも回ってきた。
なんだか、生きていることもどうでもよくなってきたベルジュは、ルシオを思い出す。
もしここで死ねたら、ルシオに逢えるだろうと。
このまま気持ちよく死ねるだろうと考えると胸が熱くなった。
持っていた大剣、地面に落としたベルジュはゆっくりと両ひざをついた。
「……」
「あ、もうイきたい感じかな?いいよ……ひひ」
両手をだらしなく垂らし、ジラボックに頭を垂れる。
ゆっくりと、死の足音が近づいてくる。
あぁ、これでやっと終わる、そう思ったが
「まだ」
「んー?」
「まだあなたが逝ってない」
予想外だったと、ジラボックは驚愕した。
ナイフで胸の谷間を刺すつもりだったのに、ベルジュが隠し持っていた
銀のナイフで脇腹を刺されるジラボック。
「なっ!?」
「あなたも一緒じゃないと、死ねないわ」
「い、痛い……痛い!」
そのまま地面に引き倒されたジラボックは、ベルジュにナイフを奪われ
自分がたくさん殺してきた女たちと同じように、ナイフで滅多刺しにされた。
「あ、あが……こ、これってこんなに気持ちよ……かったんだ」
「ふふ、あはは!」
馬乗りで、破れた衣服で笑いながら
ジラボックのナイフを握りしめて体を滅多刺しにするベルジュ。
「この感触……いいねぇ……」
グサ、グサッ……。と、何度も、もうすでに心臓を刺し貫かれ死んでいるジラボックを刺し続けるベルジュ。
そしてそのナイフをジラボックに突き刺したまま、銀のナイフを片手で持ち自分の左肩を斬るベルジュ。
「これで私も……痛っ…!」
その銀のナイフがベルジュの目を覚まさせた。
ベルジュは、声が聞こえた気がした。
_ベルジュ、君だけでも生きて_
気が付けば、媚薬は抜けて正気に戻っていたベルジュは涙を流していた。
「……ルシオ?」
………
……
…
一方、スカームとザグナはお互いににらみ合っていた。
「おい、俺とお前の決着にやぁ武器は余計だろ?」
「それお前が有利になりたいだけじゃねぇのか?」
「まぁ、話そうや」
「そんな時間はねぇな」
「男同士、素手でやりあうってのはどうよ?」
ずいぶんと、ザグナ・ガンストックは口数の多い男だ。
だが、それもいいだろうと思ったスカームは盾を床に置いた。
ザグナも、両手にはめていたガントレットを外して床に置いた。
お互いに拳を構える。
「いくぜ」
「こいよ」
ザグナが先に手を出してきた。右ストレートだ。
すかさず左腕で右ストレートを叩き落すスカーム。
スカームはジャブを左で二回打つと右フックを出した。
ザグナは二回のジャブを受け、右フックを頭を下げて回避した。
次のザグナの攻撃は左アッパーだ。
スカームは斜め下に両腕を折り曲げて前にだし顎を守る。
アッパーがスカームの腕に当たるが、大したダメージではない。
外したザグナのアッパーの後に隙だらけの脇腹に蹴りを入れるスカーム。
蹴られた反動で距離が大きく開く。
「おい、蹴りは反則やぞ」
「知らねぇよ」
ん?何かおかしいと思ったスカームは地面がひび割れているのに気づいた。
スカームは察したように、その場から後ろに下がる。
「はっは、びびってんじゃねぇぞ筋肉野郎」
「あー、怖えよーーー」
スカームの怖いは、もちろん嘘である。
調子に乗ったザグナはつかみかかろうととびかかってくる。
「腰抜かしてんじゃねぇぞ弱虫野郎!!」
「……へっ!」
スカームが地面を殴った。
すると床にヒビが入っていた場所の上にいたザグナがハマる。
「お、お前汚ねぇぞ!」
「建物は大事だ、覚えとけ」
床から上半身だけを出しているザグナだったが、天井が崩れ
たくさんのガレキが落ちてきて
自分の頭に当たった。その衝撃でザグナは頭から血を流して
絶命した。
「お疲れ……」
そういって、スカームは盾を拾い上げてアレスたちのところへ走った。
ベルジュとスカームの見せ場の場面です。
そして、ジラボックとザグナの最期でもあります。
お疲れ……(笑)




