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プリンス&ビースト  作者: 森のうさぎ
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第12話


夜、真っ暗闇の中からぞろぞろと出てくる仮面とカギ爪を付けた集団。

帝国の暗殺部隊。無口な彼らは、旧タリアス共和国の市街地の中に立てた野営しているミメルト軍を

茂みの中から見ていた。


一人の暗殺者が腕を振り上げ、振り下ろすと、一斉に野営のテントや馬車を襲った。

しかし、テントの中には誰もおらず、馬車にも人がいない。

馬車の馬は恐怖を感じていななき、すでに斬られているロープを振り払って走り去っていった。


テントと馬車の中にあったのは兵士たちの脱ぎ捨てた鎧と兜。

全裸で逃げ出したのだろうか?


無言で見つめあう暗殺者たち、

すると、その暗殺者たちが次に見たのは月の光に照らされ光り輝く剣。

アレス陛下の空へと掲げた剣だった。


暗殺者たちがアレスを狙って、闇の中アレスを取り囲んだその時だった。


「お前らのカギ爪も光ってんだよ!」


そういって兵士たちが棍棒で暗殺者たちを次々と殴り殺していった。

兵士たちの体には黒い炭が塗られていて、そして裸だった。


そう、暗闇を利用したのだ。


………

……


次の日、ガストラル帝国に到着したミメルト軍が見たのは、無人と化したガストラルの城下町だった。

門も空いている。まるで入ってくるのを待っているかのように。


「おかしい、街に人もいなければ兵士の姿もないなんて……」


城門の入り口で様子をうかがっていたアレスとミメルト軍だったが、

意を決して兵士たちが突入した、そしてアレスたちもそれに続いた。


やはり誰もいない、静けさがとても不気味だった。

まるで嵐の前の静けさのような。


そう考えていたミメルト軍の部隊だったが

城門は勝手に閉じた。


ほぼ全軍が城の内部に入った後のことだ。


「ひっひ、待っていましたよ。ミメルト王国の方々」


遠くに見えるガストラル城の方から歩いてきたのはトーレイだった。


「もうお前たちに力はないのはわかっている、降伏しろ!」


叫ぶアレスだったが、トーレイは楽し気に笑い。


「いいえー、ここのあなたたちは全員死ぬんです。

 この私の傑作によって!」


トーレイが右手に持っている水晶玉を掲げると、その後ろからゆっくりと巨大で真っ赤な巨人兵があるいてきた。

巨大といっても5mほどだろうか。今までの巨人兵より小さい。


「巨人兵!」


スカームが叫ぶ。

それに対し、ブラムスが言った。


「お前、街の庶民を全員 食わせたな!」

「いいえ、それでは可哀想ではないですか。私がつぎ込んだのは、帝国の兵士たちも

 すべてですよ」


トーレイが笑う。

そしてトーレイはその場から立ち去って行った。


「陛下、ここは我々にお任せを!」

「しかし……」


騎士団長がアレスに言った。

ブラムスがさらに助言をする。


「陛下、あのトーレイを倒すことができれば

 おそらくこの巨人兵も消滅します。ここはお進みください」


剣を構えるブラムスと騎士たち。


「みんな……すまない。死ぬなよ!」


兵士たちが巨人兵に立ち向かう。

これまでの巨人兵と違い、弓を撃ち込んでも体に吸収してしまう。

剣で切っても、兵士たちが呑み込まれる。


アレス、エテリア、スカーム、ベルジュの四人は兵士たちの援護を受けながら

トーレイの後を追った。


先に進んだアレスたちは途中、ジラボックに遭遇した。


「ここまでたどり着きましたか、素晴らしいですねぇ」

「てめぇの相手をしてる暇は、ねぇんだよ!」


スカームが盾で殴り掛かったが、軽く避けられてしまう。


「ちっ……」

「スカーム、陛下を連れて先へ。彼の相手はわたくしがしますわ」


ベルジュがニコニコと笑いながら大剣を抜き、鞘を捨てた。


「お嬢さん、あなたを待っていましたよ。ひひっ、ひひひひっ!」

「私もあなたに逢いたかったですわ、ふふっ……」


城の内部へと簡単に侵入できたアレスとエテリアとスカームは、

大柄の真っ赤な髪をした男にであった。


「よう、兄ちゃん……ここを通りたきゃ俺を倒してからいきな」

「今度は、俺の番みたいだな」

「スカーム……」

「坊ちゃん、先にいけ。ザグナ・ガンストックとか言ったな?

 お前の相手は俺だ」


「いいぜぇ、こいよ筋肉野郎」

「そりゃお互いさまだろ!」


城のさらに奥に進んだアレスとエテリアは、ガストラル皇帝の玉座に到着する。


その王座に余裕そうに座っているガストラル皇帝。

そしてその側にいるのが側近のトーレイだった。


「ようこそ、ガストラル帝国の玉座へ。アレス・ミメルト国王」

「お前が、ロゲン・ガストラル!いさぎよく降伏しろ!」

「降伏?……はーっはっはっは!抜かしよるわ小僧。

 この私を前にしてもその勢いは褒めてやろう。

 だが、お前はすでに袋のネズミだということを忘れてはならん。

 トーレイ、例のものを」


「はい、皇帝陛下」


トーレイが水晶玉を掲げると、天井を突き破って人の姿をした何かが落下してきた。

その姿、鉄の仮面に獣の耳、そして尻尾。

あの時のフードをかぶっていた獣人だ。


その仮面がぼろりと落ちる。

その下の顔は、狼の顔をしていた。


「……パパ……!」


エテリアが叫んだ。

アレスが驚く。


「ひっひ、帝国兵の肉体と魂を使って再構成してみました。

 いかがですかぁ?

 さぁ、ダグラス・バークレイ。この二人を殺せ」


「パパ、やめて!」


風を切る速度でアレスに殴り掛かるダグラス。

アレスは抜き身の剣でその一撃を受け止めるも、後方へ吹き飛ばされてしまう。


エテリアは、必死にダグラスに呼びかけるが、なんの応答もしない。


「パパ、パパ!!」

「……」

「エテリア、近づいちゃだめだ……!」


裏拳でエテリアは右の頬を殴られ、吹き飛んだあと壁にめり込んだ。


「うあああっ!」

「エテリア!」


その様子を高みの見物のようにロゲンとトーレイが笑う。

ロゲンはワインをグラスで飲んでいた。


「はっはっは、愉快だ。実に愉快だ……。

 殺しあえ、親子でな……はっはっは!」


「ぐっ……」


エテリアがへこんだ壁からゆっくりと歩いてくる。


「ぱ、パパ……」


再び、ダグラスはアレスの方に向き直ると、構えた。

アレスも剣を正眼せいがんに構える。

ダグラスはその場から再び跳躍してかかと落としを決めようとしてくるが

アレスは間一髪のところで前方に飛び込んだ。


ダグラスが着地した場所の地面には巨大な穴が開いている。

冷や汗をかいているアレスは、どうすればいいのかわからない。

この獣人はエテリアの父親、殺すわけにはいかない、しかし

このままではこちらが殺されてしまう。

ロゲンたちに背を向けないようにさっと剣を構えたまま移動する。


「私の最高傑作の前に、死になさいアレス・ミメルト。ひっひ!」


トーレイの笑い声が響く。

再び向かってくるダグラス。

力の差がありすぎて、すでに危険な状態だ。


次とびかかられたら、間違いなく殺される。そう感じていたアレス。

そして、ダグラスに相手にされていないエテリアは、決断を迫られた。


アレスをこのまま死なせるか、父親を殺すか……。

もう考える時間など、なかった。


_…時として決断しなければならないときがあるんだ_


ダグラスがアレスにとびかかり、その爪を向けた瞬間。


グサリと、


ダグラスの左胸に、


エテリアの右腕が突き抜けていた。


「パパ……パパ……」


涙を流すエテリア。心臓を貫かれたダグラスは口から血を流しながらゆっくりと

振り返ると、エテリアに。


「そうだ、それでいい……」


といって、灰のように消えていった。


トーレイが驚愕する。


「そんなばかな、私の最高傑作が……!」

「自らの父親を殺すか、ふっふ……ダグラスの娘、お前はとんだ親不孝者だな」


父親を殺してしまったエテリアをあざ笑うロゲン。

エテリアは力なく膝をついてしゃがみこみ、虚空を見つめていた。


「パパ……」


アレスの目に怒りが燃える。


「どこまで、どこまで腐ってるんだ貴様ら!」

「ふん、くだらぬ。この世に腐っていない人間などいない。

 そう思わんか?アレス・ミメルト」


そんな会話の中、トーレイの水晶玉にひびが入り砕け散った。


「私の賢者の石が!ああ、あああああ!!!」


慌てるトーレイ、しかしそんなことはどうでもいい。

今、アレスに見えているのはロゲン・ガストラル皇帝ただ一人。

ロゲンは、漆黒の剣を抜くと

王座から立ち上がった。


「さぁ、続きを始めようかアレス」

「ロゲン、お前は……私が、俺が倒す!」



さて、最終決戦です。


ベルジュとスカームのほうはどうなってるんでしょうね?

そして、トーレイ(笑)


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