第11話
城下町はガストラル帝国からの襲撃で数十名が死亡、あの後、ひどくアレスは後悔した。
そして、エテリアもまた、心に傷を負ったのだった。
もう時間がない、このままでは再び襲撃されるかもしれない。
そう思った雨の止み始めたミメルト王国の会議室でガストラルに攻め込む作戦を立てていた。
集合しているのはアレス、スカーム、ベルジュ、ノレッジ、騎士団長と勝手に入ってきたエテリア、
そしてブラムスの7人だ。
「ガストラルに攻め込む!?」
驚いているのは騎士団長だった。
そう、ガストラルには攻め込むのが難しい理由がある。
ミメルト王国は西に、ガストラル帝国は東に位置している
この中央にあるのが旧タリアス共和国の廃墟だ。
「前国王エギル・ミメルト国王が何度も兵を送り込んでは全滅させていた場所ですな」
ノレッジが淡々と話す。
それに対してブラムスが口を開いた。
「あの場所は帝国の領土内ですからね、あそこにいって帰ってきたものは、ほぼいません。
おそらく奇襲か罠をはられているのでしょう」
ここで考えるのがアレスの仕事だ。
現在、帝国は兵が不足していると思われる、それに巨人兵を作るには庶民が必要だと
ブラムスから聞いた。つまり人手不足になっているということだ。
そうなると、おそらくガストラル帝国はミメルトを吸収するために、また攻め込んでくるだろう。
帝国まで行くには軍を引き連れて行くなら二日ほどかかる。
その一日目にタリアス共和国の跡地で野営することになるだろう。
一日目をあんな広い場所で野営すれば、当然ながら襲撃を受けることになるだろう。
何か方法は……。
そう思っていた時、アレスに考えが浮かんだ。
「私に一つ、策がある」
誰にもまだ言えない、一つの作戦を思いついた。
「その策というのは?」
「今はまだ言えない、だが必ずこれは使える作戦だ。
みんな、私を信じてついてきてくれるか?」
しばらくの沈黙、そのあとスカームがうなずきながら答えた。
「あぁ。この命は坊ちゃんに預けてるからな、その話 乗るぜ」
そして、そのあと皆もうなずいたがノレッジだけは首を縦に振らなかった。
「私は貴族たちが陛下のいない間に何かしないように見張る義務がありますので
お供はできません」
当然だ、王とほぼ全軍が帝国に総力を挙げて乗り込む。
そんなことをすれば、その隙に貴族たちが暴動を起こしたりする可能性は高かった。
「どうせ、陛下は言ってもきかないのでしょう?ならしかたありませんわ」
ベルジュがクスリと笑うと口元を手のひらで隠した。
「陛下、我々は陛下とともに」
騎士団長が力強く答える。
「……」
エテリアは、ずっと黙っていた。
「みんな、ありがとう!作戦は明日の朝だ、しっかり休め。
国王命令だ!」
全員の賛同が得られた。
後は明日になるのを待つだけだ。
その夜、ミメルト王国の廊下でスカームはエテリアとすれ違った。
「どうしたんだ、お前さん」
「……迷った」
しょうがない奴だなと思い、スカームはエテリアを王妃の部屋へと案内した。
そのあと、スカームはエテリアにたずねた。
「お前さんは、明日の作戦には参加するつもりなのか?」
「……あぁ、私の勝手だからな」
「……そうか」
王妃の部屋から出ようとした後ろ姿で、スカームはエテリアに話したいことがあった。
「少し、話をしないか?」
「……いいぞ、なんだ?」
ランプに火をつけて、小さな明かりのなか話を始める。
「エテリア、だったか?お前さんは坊ちゃんのことをどのぐらい知ってる?」
「坊ちゃん……アレスのことか」
エテリアは両手を腰に添え、そっぽを向くと語り始めた。
「いつも前向きで、無茶をして、ドジで、落ち込まず……誰よりも身内を大事にする。
そういう風に見えるな」
「おおむね正解だな、だが坊ちゃんには裏の顔もあるんだ」
「裏の顔?」
そう、スカームは知っていた、そしてエテリアに話しておきたかった。
「前国王と王妃、つまりアレスの両親を殺したのは、誰でもないアレス本人だ」
「……!」
「見ちまったんだよ、この目でな。
なんでだろうな、もしかしたらこれで俺も死ぬんじゃねぇかって思うと
お前さんに話しておきたくなってな」
話を聞いたエテリアは驚愕していた。あのアレスが自分の両親を殺していたなんて。
「なんで、殺したんだ?」
「ミメルトのみんなは、国王と王妃のやり方に納得してなかった。
納得してたのは貴族の連中だけでよ、騎士たちも兵士たちも……庶民たちもみんな反対だったんだ。
でもよ、逆らえば家族全員、罪にとわれて殺される。そんな国だったんだよ」
ため息をついたスカームは、エテリアから目をそらしてつぶやいた。
「あの時、見たんだ。アレス陛下の目を。
まるでゴミを見るような、ゴミを捨てるような……そんな冷たい目だった。……怖かったよ」
「……」
「だがよ、怖いものがあるっていうのは悪い事じゃないんだ。
みんな誰しも怖いものってのがある。俺は5年前の帝国の襲撃で弟を死なせた。
今は、アレスが……坊ちゃんが死ぬのが一番怖い」
「……私にそれを話してどうしろと?」
「あんたに頼めた義理じゃねぇが、陛下を……アレスを守ってくれねぇか?」
しばしの沈黙、エテリアはランプの火を見つめながら、そして目を閉じた。
「もういい、出ていけ」
「……わかった」
そういってスカームはランプの火を消すと、王妃の部屋のドアを開け、そして閉めて出て行った。
エテリアは窓の外の夜の街並みの光を見ながらつぶやいた。
「……怖いもの、か」
………
……
…
次の日の朝、空は晴れ、風は穏やかだった。
ミメルト王国の城壁の外で、そんな中、騎士団長が数千人の兵士と騎士を集め、号令をかける。
「いいか!今回の戦がおそらく決戦となる。
共和国と帝国の最後の戦いだ!」
そこへ、アレス・ミメルト国王陛下がじきじきにやってくる。
兵士たちが道を開けると、騎士団長と並び、号令をかけた。
「これまでの戦いで散っていった者たちのためにも、みんなの明日のためにも
この戦いでは必ず勝たなければならない、しかし。もっと大事なことが一つある。
_絶対に死ぬな_
そうアレスは叫んだ。
「危険を感じたら逃げてもいい、皆には帰る家や家族が待っている!
私、いや俺も一人でも多くの兵を死なせないように力を尽くす!
全軍、出撃!」
兵士たちの雄たけびがとどろいた。
そして、全軍は帝国を倒すためにまずは旧タリアス共和国を目指すのであった。
移動の馬車。その中にはアレス、エテリア、ブラムスの三人がいた。
「陛下、お話したいことがあります」
「どうした?」
「ガストラル皇帝、ロゲン・ガストラルについて調べたのですが。
どうやら_旧タリアス共和国の時代から生きている_ようです」
「どういう、ことだ?」
ミメルト王国が建国されてから49年。それ以前はタリアス共和国が存在した。
そこがなぜ分裂したのか。
「旧タリアス共和国がなぜ壊滅したのか、陛下はご存知ですか?」
「記録に残っていないからな、あまり詳しくは知らない。
ただ、獣人によって滅ぼされたとしか」
「……」
エテリアは黙ったまま、馬車の中から外の風景を見ていた。
ブラムスは調べてきた情報を、アレスに話してくれた。
「昔、タリアス共和国が栄えたのは錬金術があったからです。
しかし、タリアス共和国が失敗したのは、人間と獣を混ぜ合わせた獣人を作ることでした」
「獣人……」
「人間と獣の配合を行い、錬金術を用いて獣人を作る。
その結果生まれたのは人の姿をした本能に飢えた獣でした」
続けて、ブラムスが語る。
「本能のままに破壊と殺戮、それから人間を相手に交尾を行い。獣人に犯された者は皆、獣の子を産みました。
我が子を愛する者は、獣人といえど隠し、そして成長させ野に放ちました。
そうして獣人は増えて行ったのです」
うつむくブラムス。
「そして、ある時 タリアスでは錬金術が禁止事項となりました。
さらに、二人の男が建国を宣言したのです」
「その片方が、まさか……」
「お察しのとおり、陛下の血を引くお方です。
しかし、もう一人はロゲン・ガストラルなのです」
「……おかしくないか?それだとロゲンは何百年も生きていることになるのでは?」
「そうなのです……」
「……人間ではない可能性か」
「そして、そのそばにいたのがトーレイ・ルイドといいます」
「……」
沈黙が続くアレス、驚きに言葉もでない。
「陛下、くれぐれもお気をつけて」
「わかった」
「……」
窓の外を見ていたエテリアだったが、昨日のスカームの言葉を思い出して
アレスをじっと見る。心配になってきたのだ。
………
……
…
すでに太陽が落ちかけている夕方。
旧タリアス共和国の跡地に到着したミメルト軍は、野営することになった。
ブラムスに耳打ちでヒソヒソと話しをしたアレスは、ブラムスに席を外させて
エテリアと馬車の中で二人になった。
馬車の床で寝転がるエテリアはアレスにたずねる。
それに対して、アレスは紅茶を飲んでいた。
「なぁ、アレス。お前は両親を殺したと聞いた……」
「……そうか」
「怖くは、悲しくは……なかったのか?」
うつむいたアレスは、紅茶を飲んだあと受け皿に置き、答えた。
「……王というのは、時として決断しなければならないときがあるんだ」
「……私は、悲しかった。パパとママが死んだあの時……。
そしてあの街の、アレスの家族が死んだとき」
「……」
「教えてくれ、お前にとって私は何なんだ?
なぜ私にこだわった?なぜ……」
「……この戦いが終わったら、答えるよ」
「今、言え!」
「嫌だ」
「……死なせないからな、絶対に死なせないからな!」
必死に涙目で叫ぶエテリアに対して、アレスはフッと笑うと、紅茶を飲みほした。
「さぁ、作戦開始だ」
「えっ?」
話が突然切り替わったと感じたエテリアは、アレスがいったい何を言っているのかわからなかった。
しかし、アレスは覚悟を決めた態度で剣を手に取った。
私は小説を書いているつもりは、実はありません。
あくまで物語を書いているつもりです。
物語を描くために小説という手段を用いて物語という目的を
達成しようとしています。
そして、ここから起承転結の転に入ります。
物語も、もうすぐ終わりが近づいてきました。
エテリアさん、デレすぎ(笑)




