28話 肩透かし
“ドタドタドタ!!”
“バタバタバタ!!”
「お兄っ、ちゃっ、だいっ、じょぶっ、かなっ、パパっ」
「うるせっ、えっ、ああっ、クソっ、客室っ、からっ、遠っ、いっ」
双子は、そこそこ門から遠い位置にある客室を恨んでいた。
由緒正しいエスカディオ公爵家の廊下を、由緒正しい血筋を持つ双子が全力疾走するその景色は壮観で、
きっと明日には使用人たちに尊敬の眼差しで見られるに違いない。
そしてついに、門の入り口についた
「…っは……はい。俺の勝ちな」
「お兄ちゃん途中で“歩かない?”とか言って揺さぶってきたじゃん!ズルだよ!」
「何をしている」
「「ごめんなさい」」
双子はハッと顔を見合わせた
無意識に謝っていたのは置いておいて…
「…っパパ!?おかえりなさい!!」
「…と、父さん、その…元気でした?」
ネオリムは怪訝そうな目で双子を見つめる
「…走ってきたのか?はしたない。本当に公爵家の人間として育てられてきたのか?」
双子は同時に目を合わせて首を傾げた
(なになに?これは…上手くいったの?ダメだったの?)
(わからん。)
「……とにかく、二人とも息を整えろ。見苦しい」
「「はい……」」
素直に返事をしながらも、双子の視線はネオリムの顔色をひたすら探っていた。
機嫌が悪いようには見えない。かといって、いつもよりわずかに何かが違う気もする。
(怒ってる……わけじゃない、よね?)
(いつも通りっちゃいつも通りだけど……)
判断に迷う沈黙が流れる中、ネオリムは小さく咳払いをひとつした。
「……新しい部屋の準備を手伝え」
「「え?」」
「アルターナの部屋だ。西棟の客間を使う。人手が足りない」
それだけ言うと、ネオリムはさっさと屋敷の中へ歩き出してしまった。
「え、ちょ待って父さん」
アシュリーが声をかけたが、一度立ち止まったかと思えばガン無視され、少し早歩きになり立ち去られた。
残された双子は、しばらくその後ろ姿を見送っていたが──
ほぼ同時に、同じ理解に辿り着いた。
「「仲直りできたんだ」」
声が重なる。
一瞬、二人の間に「わあ、良かった!」という空気が流れかけたが──
「……なーんだ」
先に脱力したのはアシュリーだった。
「あれだけ心配させといて言う言葉が“部屋の準備手伝え”って。普通に報告しろよ」
「ほんとだよ…公爵家に人手が足りないわけないし…」
「…なあ、思ったんだけど、父さんって今思春期?」
「あ、それ私もちょっと思った」
唐突なディスりである。
「婚約破棄からの存在消滅まで覚悟したのに」
「あれは私たちが勝手に想像しただけだけどね」
二人は顔を見合わせ、どちらからともなく肩の力を抜いた。
なぜ仲直りできたのか、経緯を知りたく無いわけでは無いが…まあ、それは未来に帰ってから聞くとしよう
「……行くか、部屋の準備」
「うん」
〜〜〜
アルターナの住む予定の西棟の客間は、元々手入れがされていた上、とっくに使用人たちが掃除をしていたので、双子の仕事は無かった。
使用人たちが去ってから、アシュリーはソファでくつろぎ、リシュアは嬉しそうに一切れの紙に何かを書いて、ベッドサイドの机に置いた。
「…ん?なに書いたんだ?」
「…あっ、だめだめ!お兄ちゃんは見ないでっ!」
リシュアは誰にも見られないように、念入りに紙を折った。
リシュアはこれ以上踏み込まれないように別の話題を考え、口を開いた。
「ねえ、お兄ちゃん」
「なんだ」
「パパ、なんで直接話さなかったんだろ。最初から」
「……は?」
「だって、あんな他人行儀な手紙送るより、直接会って“同居してほしい”って言えば早かったのに」
アシュリーは、妹の顔をジト目で見つめた。
「……俺、たまにお前と双子なのが疑わしくなるよ」
「なにそれ、どういうこと?」
「勉強以外も勉強しろってことだ」
「???」
それ以上聞いてもアシュリーは答えてくれそうにないので、とりあえず。
ママも一緒に住めることになって嬉しいなぁと、リシュアは考えることにした。
投稿が滞っていましたが、ここからはペースを戻していこうと思います。続きをお待ちいただけると幸いです




