11話 面白そうなものを見つけた
「君、何者?」
リシュアの背筋が凍った
(…お、終わった)
頭の中でそんな言葉が響いたが、もちろん顔には出さない。絶対に。
ジルニア王子はくすりと笑った
「…ふふ、君、青ざめているけど大丈夫かい?」
「き、気のせいでは…」
「そうかな?……おや、目も泳いでるね」
「そ、そんなことはないです…」
ジルニア王子に顔をじっくりと見つめられている
リシュアは全力で顔を逸らした
ジルニアはわざわざ立ち上がって顔を覗き込んできた
リシュアはまた顔を逸らした
すると
「…ふむふむ」
「“魔力伝導率向上のためには、天候は晴れの日がおすすめ!”」
「 “設置場所は広い場所。できれば腰辺りの高さに設置すること!”」
リシュアは絶望した
リシュアが書いていたメモ書きを、ジルニアは一つ一つ読み上げている。
そして
「僕、王宮研究所には何度も遊びに行ってるんだ」
にこりと笑った。
「だから分かるよ」
一枚の紙を持ち上げる。
「こんな発想や知識を有している人間は、少なくとも今の王国にはいない」
リシュアは返答に困った。
否定も肯定もできない。
「…ふむ」
ジルニアは紙を閉じる。
「未来人?」
「ぶふっ!?」
リシュアが盛大にむせた
「ふふ、冗談だよ」
「そ、そうですよね!未来人だなんてあり得ませんし!」
「そう?」
「そうです!」
楽しそうに笑う王子。
だが、その瞳は少しも笑っていなかった。
観察している。
試している。
反応を見ている。
そんな目だった。
「まあ、安心して」
ジルニアは紙束を返した。
「今のところネオリムに告げ口するつもりはない」
「い、今のところ……?」
「うん」
王子は当然のように頷く。
「だって面白そうだから」
リシュアは頭を抱えたくなった。
(この人、絶対面倒なタイプだ……!)
その時。
遠くから足音が聞こえた。
振り返ると、こちらへ向かってくるネオリムの姿が見える。
「あ」
「おや」
ジルニアは子供のように笑いながら立ち上がった
リシュアは一瞬ジトっとした目でネオリムに見つめられ、縮こまった
「やあネオリム!久しいな!僕のことを忘れたりなんかしていないよね?」
「…ジル。連絡も無しに来ないでくれ。こちらにも王族を招き入れるという準備がだな…」
「いやいや、そんなのしなくていいさ!…まあ、再会の挨拶は一旦置いておいて……」
ジルニアはリシュアの方を向き、にこりと笑った
リシュアはビクッとして、さらにさらに縮こまった
絶対絶対、何か言われる。こちらが困ることを。
(…うぅ……パパ…ごめんなさい…っ…!私には無理…!!なんとか誤魔化して…っ…!!)
ジルニアは言った
「…で、ネオリム?このレディーは君の“祖母の姉の息子の娘”……だったかな?」
リシュアは「…え……」と呟きながらジルニアを見た
ネオリムはため息を吐いて、言った
「………ああ。そうだ。僕の遠い親戚だ。事情があり、しばらくこちらで住まわせることにしている。…ちょっかいは出さないでくれ。」
「ああ、わかった、わかったよ」と言いながら、ジルニアは楽しそうな顔をしていた
非常に、楽しそうな顔を。
そして
「…本を返しにきたんだろう。僕が戻しておく。
もう日も落ちる。早く城に帰ってくれ」
「冷たいなぁネオリムは。…まあいいよ。今日は面白いものを見られたし。」
そう言ってジルニアは歩き出した
そして
少し歩いた後、振り返って手を振りながら言った
「二人とも、また会いに来るからね」
リシュアは「ひっ…」と小さな悲鳴をあげた
ネオリムは深いため息を吐いた
あの王子ジルニアが、新しい面倒事の種になる。それは確実である。
リシュアはネオリムの近くに寄り、涙目で言った
「…ぱ、パパ…どうしよう…っ…私、私っ、うまく誤魔化せなくて…っ…!ごめんなさ…」
ネオリムはリシュアをチラリと見た後
「…いや、いい。僕だって今日庭に王子が来るだなんて思いもしていなかったからな」
と、ぶっきらぼうに言い捨てた後、「戻るぞ。」と言って屋敷に向かって歩き出した
リシュアは、「待ってください!」と言いながら
父の後ろ姿に、ついて行った




