第3話 王国の異変
2部では1部の序盤に出てきた人がいろいろ再登場する予定です。レギュラーメンツも増えるかも??
「なるほど…。そんな事があったんですね」
「あぁ。襲撃者である本人が退散した為、我々は無事だがあのまま戦闘を続けていれば私は死んでいてもおかしくなかっただろう」
「ソウルイーターって奴はそんなにつえぇのかよ…」
「グアダルーペ殿。つまり貴方は奴の顔を僅かではあるが見たという事でしょうか?」
レオンとグアダルーペの会話にホッグスが割って入る。どうしても確認せずにはいられないといった様子だ。
「えぇ。私もその点について少し話をしようと思っていたんです。私が割った仮面の先にある目は…魔王城にやって来た時のレオンに似ていた」
「僕に…ですか?」
「あぁ。奴からは何かに取り憑かれているような狂気を感じたし、純粋に目元が似ているようにも見えた」
「そんなまさか…」
グアダルーペの話を聞き、1人思考を進めるホッグス。ぶつぶつと何か唱えては稀にレオンの方へ視線を向ける。
「団長…何か心当たりでも?」
「いや、ない。俺の勘違いだろう」
明らかに先ほどまでと様子の変わったホッグスだったが、レオン達は何も聞き出せず話は進んでいく。
「そういえばノアが気になる事を言っていたな。やはり王国でも何かあったのか」
「えぇ。…奴等に予告されていた洗脳騒動が遂に起きたんです」
「王国でもか…」
「魔大陸の方でも起きてたんですか?」
「あぁ。特に魔王城周辺の地域でな。ソウルイーターが我々を襲ったのは暗殺が主目的というより指揮系統の混乱が本当の目的だろう。我々は比較的すぐに鎮圧できたのだが…」
「はい。こちらは簡単には行きませんでした。かなりの大規模な事件に発展したからです」
◇◇◇
王国と魔族の間で条約が締結され、レオン達の旅がひと区切りついてから2ヶ月を迎えようとする頃。
故郷から王都へ戻ってきたレオン達は王城へやって来ていた。
「敵勢力が宣言した期間まで残すところ一ヶ月となりました。ですが敵の言葉を全面的に信用する義理はありません。もう何が起きてもおかしくないというのが我々の見解です。レオン殿」
ジークを除くレオン達勇者パーティーと国王フェニクス、宰相メルヴィルが会議を行っている。
会話には参加していないが近衛師団長であり、国王の護衛としてファルーク·ザカリアスが壁際で待機している。
「はい。僕達もそれを警戒してこちらに戻って来ました。僕達が提案した案ですが、効果はありましたか?」
残念そうに首を横に振るメルヴィル。
「申し訳無いのですが、効果はありませんでした。国の中央に近い者は全て思考誘導下にないか確認したのですが。王城関係者、魔法師団、騎士団、近衛師団、冒険者ギルド幹部に至るまで…如何せん、掛けられた本人に自覚が無いのです」
「そうですか…」
「レオンよ。いつ来るとも知れぬ未知に怯えていては何も出来ぬ。お前達が今後どう動くか確認しておきたい」
「はい。僕達はこれからこのー」
レオン達が話し合いを続けようとした矢先、扉を叩く音がする。ファルークが部屋の外に出て対応に当たる。
「何用だ。今陛下は勇者パーティーと会談中だぞ」
「ザカリアス近衛師団長…。陛下に来客です」
「来客?そんな予定は入っていないぞ。今は忙しいのだ。後日にしてもらえ」
彼は取り合おうとせずに中に戻ろうとする。が、兵士はそれを制止する。
「なんだ、無礼だぞ。そんなに処罰を受けたいか?」
「ち、違います!ですがこちらとしても無碍にはできない相手なのです!」
「何者なのだ。ならば私が応対しよう」
「お前さんじゃ相手にならんよ、若造」
2人の会話が聞こえたのか、遠くから老獪な、しかしはっきりとした太い声でその人物は会話に割って入ってくる。
「貴方は…。エドワード·ダムド前公爵…」
「覚えていてもらって何よりだ。ファルーク·ザカリアス近衛師団長」
「貴方ともあろう方が、事前の連絡も無しにここへやって来るとはどういうおつもりですか」
「急ぎの件でな。無礼は許していただきたい」
ファルークの前にやって来たエドワード·リュール·ダムド前公爵。
杖を持ちながら歩を進めるも、足腰は非常にしっかりした印象を感じさせる。肩の辺りまで伸ばした白髪を後ろに流し、口髭も整えられている。
精悍な顔つきは国王より歳上の六十代半ばとは思えない。
「何のご用ですか。私が取り次ぎます」
「いや、お前さんじゃない。厳密に言えば国王に用は無くてな。レオンの奴に用があってここまでやって来た」
「そういう事ですか。では少しお待ちを」
ファルークはダムド前公爵を簡単に中に入れる事はせず、扉の前で待たせる。
「陛下。ダムド前公爵がレオンに会いたいとの事です。いかがしましょう?」
「何か余程の事があるのだろう。通せ」
「よろしいのですか?前公爵も思考誘導下にないとは断言できませんが…」
「何かあるようならば、お前に任せるぞ」
国王はファルークを直接見る事はせず、視線を下に落としながら話を続ける。
彼もその可能性を十分に予測しているのだろう。
「…分かりました。勇者レオン·ヴァーミリオン、お前も十分に警戒しておけ」
「はい、勿論です」
◇◇◇
「久方ぶりだな。レオン」
「お久しぶりです。ダムド公」
「先日の活躍、見事だったぞ。代々の悲願をお前は叶えたのだ、誇っていい。あいつらの敵も取ったと聞く」
「…ありがとうございます」
レオンと国王の間に用意された椅子に座るダムド公。
「俺がここに来た訳だが、正式にお前の後ろ盾に付こうと思ってな。なかなか時が合わずこのような形になった」
「お主が後ろ盾に付く必要などあるのか?私が居るではないか」
「だからですよ陛下。何か無茶な要求をされたり、騎士団の奴等に良いように使われたりする可能性が無いとは言えないでしょう。実際、貴方が任命した旅の最中レオンは仲間を喪っている」
「く…」
「それにもし貴方がレオンと敵対するような事になった時、頼る相手が居なくなる。だから私が支援するという事です。ヴァーミリオン狂いの貴方に使い潰されるような事がないように」
「陛下に対して口が過ぎるのではないか!?“前”ダムド公爵」
「おっと。これは失礼。今の言葉は取り消しましょう。ですがこの忠告は覚えておいていただきたい。貴方がレオンを私的に使うような事があれば私は貴方を見限ります」
「相わかった…。そのような事はせぬと創世神に掛けて誓おう」
「創世神に掛けての誓いって何ですか?」
国王から聞き慣れない言葉が出てきたので質問するレオン。
「なんだレオン知らないのか?この国は創世神、再生神、豊穣神の三柱を祀ってる。他の国はまた違うけどな。特に創世神ガイアスは世界を創ったとされる神だからそれくらい重い誓いって事さ」
名門スカーレット家出身であるアリアが解説する。
「さて、レオン。既に陛下と話していたかもしれんが、今後どう動くつもりなのか俺も聞いていいか?物によっては手伝える事もあるだろう」
何かを思い出したかのようにレオンを小突くノア。
「どうしたノア。何か俺に聞きたい事があったか?」
「いや、ちょっと…。なぁレオン。師匠が持ってたあれ、王様とダムド公爵が居るうちに聞いてみた方が良いんじゃね?話にも関係あるだろ?」
「確かに。誰もこれの事知らないもんな。陛下、ダムド公聞いてくれますか。魔王城に行った時の事です。僕達はとある偶然から先生に再び会う事が出来ました」
「ルイスにか…?だが奴は一族の呪いの関係で死んだ筈では…」
「魔王軍幹部の一人がどうやってか、先生の身体を手に入れ自らの駒として使ったのです。先生は人格が別人になっていた為、僕達は先生と分からずに何度も戦いました」
レオンの話を静かに聞く国王とダムド公。
「そして最後の戦いになった時です。別の敵の手によって先生の人格が呼び起こされ、先生はあえて僕達と敵対し僕を治療してくれました」
「待て、レオン。敵対しながらお前を治したとはどういう事だ?」
「超えるべき壁として立ってくれたんです。治したというのは前の事件以降壊れていた僕の魔力回路の事です」
「イヴァンが手を付けられんと治癒魔法で対処するしか無かったやつか!それを治すとは流石ルイスよ…」
「はい。おかげで完全に治りました。そして最後先生を見送ったとき、こんなものをもらいました」
レオンが机の上に出したのはあの日ルイスから受け取ったペンダント。
国王とダムド公の両者は表情が変わる。
「成程な…話したかったというのはそれか」
「しかし、ルイスがこれを持っていた理由もこれを私に言わなかった理由も分からん。どういう事だ…?」
「お二人も知らないようなものなんですか?」
「いや、違う。寧ろ古い家系や大貴族なら誰でも知っているものだ。実物を見た者は殆ど限られるだろうがな。メルヴィル、ここにあれを」
「仰せのままに」
国王はメルヴィルに何かを持ってくるよう指示を出す。
少しするとメルヴィルが箱を持ってやってくる。かなり古びた箱のようで丁寧にそれを国王の前に置く。
国王自らその箱を開けると何かを取り出す。
その中から現れたのは。
「同じペンダント…!?」
◇◇◇
王国の南西部の辺り、ラクロスに近い地域から王都を目指す少年少女2人が歩いている。
短髪で揃え、前髪を上げている少年は昼間だというのに執事服を着用し汗一つかいていない。
少女は髪を肩の辺りで揃えており、少年より少し幼げである。彼女も汚れ一つないメイド服を着用している。
「ちょ、ちょっと!待ってくださいよ!もう少し妻を慮る気はないのですかっ!」
「…早く王都に着かねばならん。レオン様には援助が必要だ」
「そこには同意しますけど!私の身体はまだ6歳なんですよ!?」
自分を6歳だという少女の背中には背丈の2倍以上はあろう大きな箱を背負っていた。
「私も同程度だ。だからこちらの方が荷物は大きいじゃないか」
少女よりも10cm程度背の大きな少年は3m四方の大きな荷物を背負っている。
「もう無理です!私は歩けません!ここでひと休みしましょう!」
「お前なぁ…」
荷物箱を地面に降ろす少女。箱の上に乗り、竹の水筒をどこからか取り出し水分補給をする。
やれやれといった顔でその隣に座り、彼女にパンを手渡す少年。表情をキラキラさせて頬張る少女。
少女が2つ目のパンを食べている中、それは起きた。
「おいおいガキども〜こんなとこで何やってんだぁ?」
「誰ですか貴方達は」
立ち止まる2人の前に現れるガラの悪そうな男達。
「そんな警戒するなよ!俺達は親切心で声かけてやってるんだぜ!?」
「あんま見た目で判断すんなよ??お前らが大変そうだから手伝ってやろうってんだ」
1人が少年の首周りに手をかける。体重を乗せてくるその手を振り払うも、無理やり手を乗せ直し男は離れない。
「お前ら良い服着てんじゃねえかよ。貴族勤めかなんかか?手伝ってやるから金、寄越しな」
「はぁ…そういう事ですか」
「なぁ?こんなでけえ荷物どこに運んでるか知らねぇけどよ、俺達に任せりゃこんなもーぉっ!?」
急にバランスを崩して地面に倒れる男。右腕に違和感を感じ、視線を向けると二の腕から先が無くなっている。
「あ…あぁっ!?俺の腕がっ!?」
「貴方…見た目で判断するもんじゃない、ってさっき言ってましたよね?同じですよ。貴方は見た目で判断したみたいですが」
切り落とした右腕を男の顔面に投げつける少年。視線で合図を送ると少女も動き出す。
男の連れも仲間がやられた事が分かると攻撃を繰り出す。
少女は慣れた手つきでナイフを両手に装備し、自身に向かってきた男に投げつける。致命傷は与えないものの、腕や足の腱を切りつけ動けなくさせる。
「う…動かねぇ」
「何かしようとしたら…その命もらうわ」
「ひぃっ!?」
「ガキが!殺してやる!」
男が少年を踏みつけようと足を振り上げ、地面に落とすもその攻撃は当たっていない。
「な、なんだ!?確かにここに居たのに!」
「-幻影魔法-私の得意な魔法です」
後ろから現れた少年は男の膝裏を土球で叩きつけ、体勢を崩させる。
それでも尚抵抗を続けようとする男だったが、少女が放った魔法の茨が身体の周囲を張り巡らせ身動きが取れない。
「さて…この茨に炎を灯せば貴方はどうなりますかね?」
指先に炎魔法を出す少年。その意味が分かり戦意を失う男。
「ま、待て!やめろ…俺達が悪かった!今すぐここから消えるから許してくれ!」
「お仲間2人も連れてってくださいね?死んではいませんから」
「早めに教会に連れていけばあっちの人の腕も治るんじゃないかしら?」
「分かった、分かったから!それをやめてくれ!」
2人は魔法を解除すると、仲間達を連れて一目散に退散していく。
「全く…こんな調子ではいつ王都に着けるのやら。なぁ?シシリー」
「クロード…使った魔法を言ってしまうのは貴方の悪い癖ですよ」
「ん?つい、な。それにしても実力は落ちてないようだな」
「当然です。何度目だと思っているんですか」
「お互いにな。さぁ王都へ急ごう」
という訳でいろんなメンツがかなり久しぶりに出てきました。
最後に出てきた2人は貴族仕えではありません。何故それっぽい格好かはレオンと絡んだ時に!それにしてもなんか聞いた事ある名前…。
因みに2部の現在時間軸は1218年7月となってます。
閲覧ありがとうございます。
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