第4話 十二始族のペンダント
「レオン、よく見て。少し形が違うわ」
「…?あ、ほんとだ。それに色自体も違う」
国王が見せているものは金色であり、どこも欠けていないのに対してレオンが持つペンダントは右上と下が欠けており、その上黒色である。
「レオン、まず私が持つこれの話をしよう。これはかつて我がオーガスティア家の祖先とヴァーミリオン家の祖先が分けて持っていた一対のペンダントが元になっている、と聞いている」
「僕は先生からもらったペンダント一つしかないですが…」
「お主の父であり、先代勇者であるエリオット·ヴァーミリオンが持ったまま十七年前の戦火で喪われたのであろう。お主に託すには幼すぎたか、時間が無かったのかは分からぬがな」
「陛下、まず原点のペンダントについて私がお話ししても?」
「構わぬぞ」
ダムド公がペンダントについて話しだす。
「レオン。何故原点のペンダントが王家とヴァーミリオン家で持っていたか分かるか?」
「いえ、分かりません。あまり自分の家系の事だと思えないので…」
「知ったのはごく最近の事だしな。ではそこから話すとしよう。良いか、この国を興したのは王家とヴァーミリオン家だ」
黙って聞くレオン。少し驚いた様子だが何かを聞くことはせず、そのままダムド公の話に耳を傾ける。
「ヴァーミリオン家が滅ぶ前の話だが、昔は王位なき王家だの、もう一つの王家だの言われていた。しかしヴァーミリオン家には一切権力や爵位は無い。何故だと思う?」
「私から宜しいでしょうか」
オリビアが手を挙げる。
「答えてみろ」
「王家と同等、またはそれに近しい権力を持った家があっては王国内の力の分裂や中央集権制の効力が弱まります。更には国家の転覆を行おうとする者がヴァーミリオン家を祭り上げる可能性も考えられるかと」
「素晴らしい回答だな。まさにそれを考えた当時のヴァーミリオン家当主は一切爵位を受け取らずに政治から離れ、公的には平民としてこの国に留まったのだ。どうやっても影響力は持ってしまっていたがな」
「ですが僕の祖父は騎士団長だったんですよね?」
「それは数少ない例外だな。陛下直々にルーファスの奴に頼みに来ていた。毎日のよつに我々の元に来ていたあの学園時代の事を思い出しますよ」
「あの頃は若かったのだ。もう半世紀は前の話だぞ、全く…」
「二人の会話は大体噛み合いませんでしたからなぁ。見てる側としては面白かったですが」
「お二人とも。昔話もよろしいですが、十二始族の話に戻られては?」
話が逸れた2人の会話をメルヴィルが元に戻す。
「あぁ、そうだったな。そして王国建立後の話だ。いつ頃かは不明だが厄災というとんでもない怪物に王国だけでなくこの世界全体が襲われ、危機に陥った。これは歴史書にも書いてあるな。その時厄災を封印するのに主力となって動いた十二人が居たとされる。王家やヴァーミリオン家だけでなく、魔族や既に滅びた種族などが一丸となって動いた。それを十二始族という」
「封印…ではその厄災というのは倒されたわけではないんですね」
「そうだ。理由は定かではないが倒しきれなかったと伝わっている。再び厄災が現れた時には十二始族の集結が必要であるとも聞いた事がある」
「先ほど滅びた種族も居たと言っていましたが、つまりいずれ厄災が復活する時抵抗の手段は無いという事ですか?」
レオンの発言を聞いたダムド公はニヤリと笑う。
「お前はその滅びた種族と共に行動していた筈だぞ?」
「ジークか!」
誰の事か気付いたノアが声を上げる。
「俺は直接見てないが、魔人族を仲間にしてたんだろ?」
「はい、一緒に戦ってくれました。今ここには居ませんが」
「そうか。だから今は大丈夫だ。お前達が生きているうちは厄災に対抗できる。ま、いつ復活するとも知らんがな」
「ではレオンよ。お前達はそろそろ帝国に向かうのか?」
「はい。その最中に同じペンダントを持つ人を探してみようと思います」
レオンの発言に対し、顔を歪ませる2人。
「レオンよ…お前のその目標はなかなか難しいかもしれぬぞ?」
「何故ですか?」
「それはな、レオン。お前の持つルイスのペンダントは十二始族に当てはまらないからだ」
「え?」
「私も詳しくは分からぬが、まず金のペンダントを持つ六家が我がオーガスティア家、帝国に二家、その他の地域に四家居ると伝わっておる」
「もう一つのペンダントはヴァーミリオン家、魔人族、この大陸の何処かに三家居ると聞く。だがな、その色は銀なんだ。黒色のペンダントを持つ一族は居ない。お前の持つそれは参考にはなるかもしれんが、一つとしては数えない方が…」
「嘘だ!」
声を荒げるレオン。
「これは先生が最後に託してくれたんですよ!?それが偽物だなんて…信じない!」
「そうだな。言い方が悪かった。偽物と決まったわけじゃないか」
「メルヴィル。十二始族が居ると伝わる場所をまとめ、レオンに渡してやるといい」
「畏まりました。レオン殿、こちらの冊子に纏めましたので、旅の道中に十二始族を探してみるのも良いでしょう」
「…もらいます」
やや気落ちした表情ながらも冊子を受け取るレオン。
「レオンよ。先ほどは否定しかけたが、ルイスのペンダントは本物である証拠は無い。だが、偽物である証拠も無いのだ。そう落ち込まぬ事だ」
「…分かりました」
「それで、レオン。いつオーガスティアを発つんだ?」
「いくつか用事を済ませたら出発しようと思ってます。騎士団の方に寄ろうと思ってるのと…」
「あたしが親父にレオンを呼ぶよう言われてるんですよね。嫌だなぁ…」
「スカーレット卿か。何故だ?戦役から帰ってきた時随分喜んでいたと聞いたぞ」
「…。その後にあたしが家出同然で飛び出したってのが親父にバレたんですよ。その事を気にしてるらしくって…」
「それはそうだろう。侯爵家の一人娘が出奔したとなればな」
「「「え!?」」」
レオン達三人が驚きの声を上げる。アリアの方を見ると、彼女は少し恥ずかしげに視線を逸らす。
「なんでそんな事黙ってたんだよ…?」
「いやぁ…侯爵家扱いされないで普通に接して欲しかったからさ…」
「俺は分かる。特別扱いされるのは好きじゃない。俺自身を見てくれてない気がして」
「レオン。お前とスカーレット家はもう一つ繋がりがあるぞ?」
「どんな繋がりが?」
「アリア嬢、伝えてみたらどうだ?」
「あ〜…。あたしとレオンってよ、遠い親戚なんだよな」
「はい!?」
「スカーレット家はヴァーミリオン家の分家が始まりなんだよ。ルーツを辿れば同じ祖先に行き着く。まぁ血薄まり過ぎて今は他人同然だけどな」
「なぁレオン…いろいろあり過ぎて、俺話ついてけねぇよ」
ずっと会話に参加していなかったノアがようやく口を開いたと思えば、どうやら彼の頭はショートしていたようだった。
「途中からは俺もだったよ…帰って話を整理したい。陛下、良いですか?」
「そうであるな。今日はこれにて解散としよう。レオン…だけでない。世界はお主達にかかっておる。だが気負い過ぎる事は無い。頼んだぞ」
◇◇◇
「ふぅ…ここが今の王都ですか。随分街並みも変わりましたね」
「あの日以来来ていなかったからな、何もおかしな事じゃない。さて、私達の目的地は分かってるな?」
二人は早くも王都に到着していた。距離で考えれば数日で着くようなものではない。
しかし、事実として二人は僅か数日でやって来ていた。
「勿論です。私を誰だと思っているのですか」
「私の妻だ」
「そういうのを聞いてるんじゃありません!」
頬を染めるシシリー。
「貴方…今回でそんな言葉も言えるようになったんですね?」
「身体だけではなく精神も生まれ変わったと思い、成長させていかなくてはな」
「その割には昔から年寄りくさい話し方ですが」
「これだけは勘弁してくれ。今更治らん」
「私としても、今の口調の方が慣れてるのでそのままが良いですね。昔の貴方はまぁ口調も態度も悪くって。セシリア様やギデオン様にも随分と迷惑を掛けて…」
「待て、話が逸れている!私の昔の話は良いだろう!?今は王城に向かうぞ!!」
「ふふふ…貴方は昔の話をするといつも恥ずかしそうですね?」
「少年時代の話など誰でもそうなるものだ!」
今度はクロードが顔を赤くしながら歩き出す。
そのすぐ後ろをシシリーがついて行く。
「まぁまぁ。どんな貴方でも私はずっと側に居ますよ」
「それも約束だからな」
王国メンバーはいつまで出れるでしょうか?
第1部よりは活躍できるはずですが…。
最後の2人の描写はレオンの回想と同時系列ではないです。いずれ合流する予定です。
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