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Lost Fantasia  作者: 眞弥。
二部 第一章
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第6話 アリアの試練

「親父!何もここまで来なくても…」


「私が無理を言って呼んだのだ。迎えに来るのは当然のこと。着いてきたまえ、中で話をしよう」



アリアの父に案内され、応接室にやって来るレオン達。



「では、改めて。レオン·ヴァーミリオン。君には感謝してもしきれない。あの戦争も(・)ど(・)き(・)を終わらせてくれた恩人だ」


「戦争もどき…?」



アリアの父はレオンに感謝の意を伝え、手を差し出してくる。だがレオンはその手を取って良いものか戸惑い、ゆっくり手を取る。



「あの…スカーレットさんは今まで戦ってきたんですよね?何故そのような言い方をするんです?」


「何故あれを戦争もどきと呼ぶのか…それは至極簡単な理由だ。あの戦場では絶対に死人は出ないからだ」


「??怪我もしないんですか?」


「いいや。怪我はするさ。だが一定以上の損傷を負うと何故か勝手に治るんだ。その者の体力は著しく減るがね」


「そりゃあ戦争なんて言わねぇわけだ」


「何よりあの戦場で命を落とした者はどういう理屈か、時間を置けば再生する。意味が分からないだろう?あらゆる疑問が浮かぶよ。何故生き返るのか、何故こんなものを続けるのか、とね…」



そう言いながら彼は椅子に座る。机の上の小箱から葉巻を取り出すと先端を切り落とし、指先から炎魔法を使って火をつける。



「だがそんな時間を浪費するだけの無駄な儀式が終わったのだ。素晴らしい事だよ」


「お言葉はとても嬉しいです、スカーレットさん。でも僕達は次の目的地に行かないといけないんです」


「ふー…帝国へかね?」


「な、何故知ってるんです!?」


「軍(・)部(・)関係者は戦いが終わっていない事など分かっている。君が帝国へ向かうのは構わない。だがうちの未熟者を同行させる事は許可しない」


「「「「!!」」」」



その突然の発言に沈黙が流れる。



「親父…そんな事を言う為にわざわざレオンをここに来させたのか!?さっきの感謝とかも全部嘘なんじゃー」


「最初に言った感謝の意は本当さ。今までの戦いを終わらせた事とこれからの戦いに赴く事は別の話だ。アリア、気が付かないとでも思ったか。我が家に伝わる奥義を使ったな?」


「!そ、それは…」


「何故お前にあの技の使用を禁じていたか。完全に習得していないお前には多大な負荷がかかると説明した筈だったが?」


「…」


「にも関わらずお前は使用した。誓いを守れぬ、技を扱いきれぬ未熟者を送り出す訳にはいかんな。分かったか?」


「待ってくれ!」



ノアが二人の会話に待ったをかける。



「なんだい?これは家の問題だ。邪魔しないでくれたまえ」


「アリアがあんたとの約束を破っちまったのは、あの時それしか手段が無かったからで!頼む…頼みます!俺達の旅にはアリアの力が必要なんだ!」


「俺からもお願いします!スカーレットさん、先ほど戦いは終わっていないと言ってましたよね。スカーレット家は戦いを途中で放棄する家なんですか?」


「成程。そう来たか、ではこうしよう。アリア、お前が奥義を使った事は私が不問にする。だが制御出来ない技を使う者の同行は許可出来ない。それは変わらない」


「親父…!」



変わらず許可を降ろさない父親に、アリアは何を言えばいいか決めあぐねている。



「ならアリアが奥義を制御できるようになれば良いのよね?」



アリアの母が二人の会話の間に入ってくる。



「君か…これは私とアリアの話だ。割り込まないでくれ」


「相変わらず素直じゃないわね。あなたは話が回りくどいのよ。早く中庭に連れて行きなさい?」


「…分かった。行くぞ、自分の槍を持ってきなさい」



父親に連れられ部屋を出るアリア。部屋にはレオン達三人とアリアの母の四人になる。



「うちのがごめんなさいね。私はセリア·スカーレット。アリアの母です」



レオン達もアリアの母親と挨拶を交わす。



「あの人は会話が下手なの。あの子が奥義を使った事だって理由が分かってからはもう怒ってないけど、最初に旅には出さないなんて言っちゃったから引くに引けなくなっちゃったのよね」


「そういう事ですか。スカーレットさんはアリアが技を使えるようにすると」


「えぇ。まずはあの子が現状どのくらいの練度なのか私も見せてもらわないとね。貴方達もいらっしゃい?」



◇◇◇



「アリア。お前の今がどの程度まで習得しているのか見せてもらおう」


「…分かった」



アリアが詠唱を唱え始める。彼はそれをじっと見つめ、待っている。



「準備できたよ、親父」



瞳の色が変わり、背中に大きな炎を背負った状態に姿が変わる。



「成程、そこまで出来るようになっていたか。逆に言えば、まだその程度か」


「…」


「私のも見せてやる。自分自身とどう違うか見比べるといい」



アリアの父親もスカーレット家の奥義を発動する。

彼女とは違い、詠唱を行わずに槍を構えるだけで姿が変化する。



「は、早い…!」


「それだけではない。何か気づく事はないか?」


「あ、炎じゃない…」


「その通りだ。私は自身の魔力を完全に制御し、家紋である孔雀の羽の形に魔力を留めている。お前のそれは魔力を制御出来ずに無駄に放出してしまっている状態だ。それでは直ぐにお前の魔力は尽き、戦えなくなるだろう。私の言ってる事が分かるな?」



頷き肯定するアリア。



「かかって来なさい。私は魔法やスキルは使わないでおく」


「よし、行きます!」



アリアは自分が背負う炎を一部分割し、槍の先端に装着させる。



「器用なものだ」



父が反応を見せたのと同時に連撃を放つ。彼はその連撃を最小限の動きで避けていく。


アリアの攻撃が一歩緩んだ所を見逃さず、槍の柄の部分を掴み彼女ごと投げ飛ばす。着地自体には成功するも、勢いを殺しきれずに地面から土煙が上がっている。



「こちらも行くぞ」



彼女が体勢を立て直した時には、既に眼前に槍が迫っていた。

間一髪で後ろに飛び、槍を構えるも痛みを感じ、頬を撫でると血が伝っている。



「よくあそこから間に合ったものだ。次はたった一撃で止めてやるほど甘くないぞ。私の攻撃をどうにかしてみろ」



槍を螺旋状に回し、構えを取る。そしてアリアと同じ術を披露する。



「スカーレット流槍術、伍 廻天」


「あたしのと全然違う…」


「未熟者と同じだと思わぬ事だ」



◇◇◇



「決着、だな…」


「…ちくしょう」



地に這うアリア。槍を杖代わりにして立ち上がるのがやっとの状態である。だが父親の方も無傷というわけでは無い。捌ききれなかったアリアの僅かな攻撃を食らってしまっている。



「感情に身を任せた上、力の制御も出来ぬお前に勇者パーティーと同行させる訳にはいかんな。私と共に修練に励め」


「待ってくれよ!俺達にはアリアが必要なんー」


「駄目だ!」



ノアの言葉を遮ったのは、他ならぬアリア本人だった。



「あたしが弱いから悪い…。親父は間違ってない、使いこなせない力を使った代償なんだ」


「アリア…」


「だから必ず間に合わせる。帝国に向かうまでに力を自分のものにしてみせる!」



そう言い切った彼女の言葉は力強いものだった。



「…分かった。ぜってぇ間に合わせろよ!」


「おう!任せろ!」



口角を上げ、はつらつに笑うアリア。

その直後だった。突如轟音が鳴り響き、白煙が辺りから立ちこめたのは。



◇◇◇



王都某所。アリアが父親と戦っていた頃。



「さて、宿を借りて早数日。この身体では冒険者生活が出来ないと分かり、なんとか手を使って冒険者として依頼をこなし毎日の食事には困らない生活を送れているわけですが…」


「シシリー、見てくれ!宿の女将に台所を借りてな!最近流行りの焼き菓子というものを作ってみた!」


「…何やってるんですか、貴方は?」



子どもを見守るような目線で優しく問いかけるシシリー。



「…?菓子は好きだったろう?」


「えぇそうですね!ではいただきます!あ…美味しい」


「だろう?うまく焼けた自信作だけを持ってきたのだ!」


「なかなか良いですよ。昨日狩った森蜂(フォレスト·ビー)の蜜ですね?程よい甘さと一口含んだ時の口どけの良さがかなり合っていると思います…ってそんな事を言ってる場合じゃなくて!」


「自分の努力を認められると嬉しいものだな」


「クロード?私は真面目に話してるのですが??」


「ははは、悪かった。分かってる、周囲の人間に聞いてきた。レオン様はまだ仲間と共に王都に居るようだ」


「後は会う事が出来れば…!」



意気込んでいる二人の耳に、何やら喧騒らしきものが聞こえてくる。

王都と言えど、多くの人々が往来する場所であれば珍しいものでもない。だが今回は少し様子が違っていた。



「お、おいあんた?急にどうしたんだ、勇者がどうのって…」


「あなたどうしちゃったの!?勇者様なんて会った事も無いじゃない!痛っ…!」


「勇者は、どこだ…?」


「外の様子が変だな」


「えぇ…まるであ(・)の(・)日(・)と同じ…まさか!?」



シシリーが何かに気付いた時、既にクロードは窓から外へ飛び出していた。



「貴方!?ここ三階ですよ!」


「構うな!急げシシリー!手遅れになる前に!」



クロードに僅かに遅れてシシリーが着地すると、既に違和感では済まされない事態が起こっていた。



「この人を止めるんだ!急、げ…」


「ど、どうした?突然黙り込んで…」


「あ、え…?ゆ、ユウ…しゃ?ゆうしゃは…何処に居る…」


「おいやばいぞ!他の奴らもどんどんおかしくなってる!」



周囲の人々もこの事態の異常さに気付き始めた頃。



「私たちに」


「任せなさい」



二人が割って入ってくる。シシリーは茨を出現させ、様子が変わった数名を拘束する。



「安心しなさい。棘はありません」


「な、なんだお前らは!?」


「話してる暇は無い!さっさとここから離れろ!」



クロードの力の入った大声に気圧される人々。自分も様子がおかしくなるのではと不安になり、足早にこの場を離れていく。



「さて、あの日の雪辱を晴らす事が出来るかもしれんな」


「私にはそんなもの関係ありません。早くレオン様にお仕えしたい…それだけです」


「確かにな。同意見だ」

アリアの父は騎士団が軍だった頃を知ってる人です。

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