第5話 大佐の行方
王城で国王やダムド公と話した翌日。
レオン達はアリアの実家であるスカーレット家に行く前に騎士団本部へやって来ていた。
「アリア…俺はこの後の事を考えて気分が重いよ」
「大丈夫だって!戦争を終わらせたレオンに何かするわけないだろ?話がしたいだけさ!…多分」
「今多分って付け足した?」
「いや知らない」
「おい二人とも、くだらない事やってないで早く入ろうぜ。レナさんに会いに行くんだろ?」
「なぁレオン。その事なんだけどさ。今この時期に騎士団本部に行かなきゃいけない理由ってあるのか?もうすぐ帝国に出発するんだろ?」
いつ何が起こるか知れない現状において騎士団員に会いに行くだけの予定というのが、アリアとしては納得できないようであった。
「帝国に行く前に会っておきたいんだ。何度も話をしようと思ってたけど躱されてて」
「その騎士団に居る人と何話すんだ?」
「私も会った事あるんだけど、前ダムド公爵と同様にレオンが勇者として活動するきっかけを作った人が騎士団に居たのよ」
「へー…ん?居た?それなら行っても会えないじゃんか。何しに行くんだ?」
「その人の部下に会う。本人とは前に帰って来た時に会えなくてさ。条約締結時にも来なかったから聞いたんだけど居場所を教えてくれなくて。いいかげん何処に消えたか話してもらうつもり」
「平和に頼むぞ…?」
◇◇◇
「久しぶりね、レオン君」
「お久しぶりです、レナさん。もう僕がここに何をしに来たか分かってますよね?」
本部に到着したレオン達は早速レナードの居る特務課へ来ていた。
「いいかげん、大佐が何処に行ったのか教えて下さい。なんで僕が旅から帰ってきたら本人が消えてるんですか?」
「ふー…仕方ないわね」
レナードは観念したように溜め息をつくと話し始める。
「大佐の居場所はね…私も分からないのよ。寧ろこっちが教えて欲しいくらい」
「どういう事ですか?」
「あの人の怪我はかなり重かったから見張りを置いておいたんだけどね…何処かの馬鹿が見張りという役目を放棄したのよ!」
レナードがギロリとフィンの方を睨む。
フィンはその視線に気が付くと、あー忙しいとぼやきながら書類に視線を向ける。
「ま、もう良いわ…大佐が抜け出した日に列車の管理人が周囲を気にする不審人物を目撃していてね。あの人馬鹿正直に騎士団証で列車使ってたから、ある程度までは何処行ったかは分かってるのよ」
「どこに行ったんですか?」
「貴方達、ヴァイロに向かった時最後まで列車に乗らずに降りたでしょ?王都と南部の中間辺り。魔人族の彼と会った森に近いところね。そこまでは足跡を掴んでるわ」
「じゃあ大佐は魔人族に会いに行ったのか…?それにしたってなんで俺達がこっち離れてから行ったんだ?その理由も分かってねぇし…」
「しかも聞いた話じゃ魔人族が住む集落はそう簡単には入れないのでしょう?居なくなる前に言ってた事と関係あるのかしらね…」
「何を言ってたんです?」
「レオン君には本物の魔剣が必要だとかなんとか言ってたわ。今使ってるそれって何を素材にしてたかしら?」
レオンが鞘から剣を少し抜き、刀身を見せる。
「天通石を加工した物を使って先生が作ってくれました」
「天通石…。あらゆる属性魔力を通して使う事が出来る代償に、発掘した直後から周辺の魔素や魔力の影響を受けてしまう扱いが難しい魔石よね」
「はい。そして殆どメンテナンスが必要ない代わりにこの剣自体には一切属性付与は出来なくなります」
「必要なのは自身の技量と魔法操作というわけね。…確かに貴方の使ってる剣はかなりのものだと思うわ。でも今のままじゃ良くないと思うの」
「…急になんですか?大佐の話と関係あります?」
レナードとの会話は大佐の行方からレオンの剣の話に変わっていた。彼女は表情を崩さない。
「皆座って。じゃあまず…ノア君、魔剣がどういう物か知ってる?」
「…魔物や迷宮で手に入れた魔石を使って作る剣って師匠に聞いた事あるけど…」
「そうね。現在の定義ではそうなってるわ。でも王国創建より昔、今より命が軽かった時代。その時には魔石で作る剣は魔剣とは呼ばれていなかったの」
「じゃあ魔剣ってなんですか?レナさん、僕達この後行く所があるんです」
回りくどく話を進めるレナードにしびれを切らしたレオンが質問する。
「ごめんなさいね、じゃあ端的に言うわ。魔剣とは意思を持った剣の事よ。レオン君、貴方にはそれが必要だわ」
◇◇◇
レナードとの会話が終わり、レオン達はアリアの実家のすぐ近くまでやって来ていた。
騎士団本部での話が終わった後、レナードが馬車を貸してくれたのでアリア自身が馬を引き実家に向かっている道中である。
「にしても信じらんねぇよなぁ…。意思のある剣ってなんだよ。柄に口でもあって喋ってくんのか?」
「そういう物じゃないらしいわよ、ノア。貴方もこれ読みなさい?ちゃんと書いてあるわ。『魔剣は持主と同調し、自分自身の力を最大限発揮する事が出来る。但し持主の状態に剣の性能は左右され、剣が己の力を引き出す事もあれば逆に自分自身が剣に呑まれる可能性もある。』…扱うのは簡単じゃなさそうね」
オリビアがレナードから受け取った冊子の一部分を読み上げる。ノアはあまり分かってなさそうだ。
「う〜ん…無いものの説明されても分かった気がしねぇな。レオンはどう思ってんだ?まさか武器変えんのか?」
「俺としてはあんまり変えたくないけど…。この剣で困ってないし、この魔剣自体もなぁ…」
「製造方法が失われてる武器を探しに行ったっぽい、って随分賭けに出たなぁ大佐は」
「アリア…。まぁ何の根拠も無しに行く大佐じゃないとは思うけど…」
「お、もうそろそろだ。着くぜ」
◇◇◇
王城よりは流石に小さいが、それ以外ではレオン達が見てきたどんな建物よりも大きいアリアの実家。
門の前まで進み、馬車を止めると門番がやって来る。
「アリアお嬢様!?何故あなたが自ら馬車を引いているのです?」
「よう、ただいま。親父に言われてた客をあたしが連れてきたからだよ。このまま入っていい?」
「…お待ちください。執事長を呼んできます」
「えぇ〜。どうせ小言言われるだけだしめんどくさいからいいよ」
「そういう訳にはいきません。怒られるの私達なんですから」
アリアが門番と話していると突如門が開いていく。
「アリア、彼らを連れてきたのか」
そこに現れたのはレオン達をこの場に招待したアリアの父親だった。
アリアと同じ金髪赤眼で、前髪を上げた髪型をしている。年齢はホッグスと同年代と言ったところだろうか。
「親父…!」
話進めたいのに進んでない…。
今の所は1部で触れてない要素に触れながら進めるつもりなので進みが遅いんですよね…。
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