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乱世の転生者  作者: 情熱のデンプシー
第二部 河の国編  第2章 剣士カナミ
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ファガレスとイラリオ


 エメラルド国に潜入した決死隊の一人、ファガレスは苛立っていた。



 毎日毎日修練場に通うカナミの姿に。


 カナミの眼の輝きに。



「ちぃ!」



 強く強く舌を打つ。


 苛立っている理由は分かっている。

 カナミの姿は、似ているからだ。

 勝ち目のない戦いに挑んだ、やつの主君に。




『どうだい?秘儀、超下段の構え~!!』




『ショック!!』





 ぱりりっ!




 ぶるっ!とファガレスは体を震わせた。


 感覚が消えない。


 あの日あの時、ディムルにやられた奇天烈な魔法の。


 身体がしびれ、一瞬で意識が混沌とした。

 これまで感じたことのない脅威。


 ファガレスは気づけば冷汗を吹き出していた。


 思い出しただけでこれである。


 受けた屈辱は彼の中でトラウマとなっていた。



「イラつくぜっ……」



 あんな子供に惨めにやられた自分に。


 まんまと生き延びているあの王子に。


 処刑もできないこの国に。


 全てにイラつく。



 憎しみは、日に日に増大していった。



「よっ。今日も機嫌悪そうだな」


 木陰に腰を掛ける自分に、近づいてきたのは下種のイラリオだ。

 ファガレスとは違い、機嫌がよさそうな笑みを見せる。


「……てめえは、おかしいとは思わねえのか。なんでエメラルドの猿女が稽古に来てんだよ……」


「別によくね?剣については学ぶこと多いし。なにより、なかなかの上玉じゃん?まだ子供なのが残念だけど、あのレベルの女をぐちゃぐちゃにできるのはゾクゾクするね。折れた時の姿が早く見たいよ」


 ふざけている。


 イラリオ自身はいたって真面目なのだが、ファガレスはその態度にいら立った。



「なら、王子を殺そうぜ」



 だからだろうか。あっけからんと彼は決めた。


「主君が死ねば、あの女の絶望顔も見れるだろ」


「あはははは!冗談。んなことバレたら極刑じゃあすまね…………。本気?」


 イラリオは、二の句が継げなかった。


 冗談には到底見えない、ファガレスの形相を見てしまったから。


 彼の眼は、暗かった。

 憤怒と憎しみが深い深い沼を作る。


 ソレのあまりの深さに、イラリオは一瞬のけぞるが、



「手伝うよ」



 真面目な顔でのぞき込む。


「ダチが一人で無謀しよってんだ、見過ごせねえよ。それに何より、お前の案はいい案だ。主君が眼の前で殺されたカナミの顔、想像するだけでぞくぞくする。その後でゆっくりと胸を貫かれるカナミの逝き顔、ぜひ見たいね」



 ……やはり、この男は下種だ。



 ……しかし、だからこそ信用できる。



 ファガレスとイラリオは、熱く拳を打ち合った。




ファガレスとイラリオは前章の『ディムルの3年』でディムルにやられた男たちです。


「覚えてないぜー」となった方は前章を是非ご覧ください。

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