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乱世の転生者  作者: 情熱のデンプシー
第一部 乱世転生編  第3章 家族
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両親の帰還


「国王陛下・王妃殿下、ご帰還!!」



 大柄な兵士の覇気のこもった声が、王座の間全体に響き渡る。



 ディムルがこのことを聞いたのは10日ほど前のことだ。


 年中国境戦線に常駐していた両親が帰ってくるとのこと。


 普段は政務を宰相に任せきりにしている王だが、毎年初冬には王都へ帰還していた。

 しかし、今年は戦況があまりに悪くそんな余裕はなかった。


 エメラルド国の冬は厳しい。


 日本ではありえないほどの豪雪は、あたり一面を白銀の世界へと変貌させる。

 人の頭よりも高く降り積もった雪、それに伴う雪崩などの災害は洒落にならない。

 街から街への往来が難しく流通さえも制限されるこの季節。

 冬の半ばになってしまえば、わざわざ国境から王都まで移動するなんて命がけだ。


 なのに、帰ってきた。


 玉座の間。

 赤じゅうたんの先でたたずむ二人の男女に対して、二人の姉と共に頭を垂れたまま、ディムルは疑問を感じた。



(リスクを負ってまで帰るほど、王都に大事な用事があったてことか……)



 ちらり。

 わずかに視線を上げる。

 顔までは見えない。しかし雰囲気は伝わる。


 玉座に座る荘厳な男。その側に控える柔らかい女性。

 このふたりこそがエメラルド王とその妃だ。

 直接会うのは一年ぶりとなる。


 今生においての自分の両親たちに拝礼しながら、ディムルは一抹の不安を感じた。





「面をあげよ」


 顏を上げたディムル達姉弟は、一瞬息をのむ。


「…………っ!」


 父は、左手首から先が無かった。


 母の顏には、大きな刀傷が残っていた。


 この国の最高位にいる二人がこの始末、戦況がどれだけ切迫しているかを表している……。



 駆ける言葉を探し黙り込む中、最初に言葉を発したのはサラ姉上だった。


「ご(・)無(・)事(・)の(・)ご(・)帰(・)還(・)、心よりお喜び申し上げます」


 透明の姫君は、強い眼で語り掛ける。


 ディムルは自分が情けなくなった。

 子供に後れを取ってどうする、と。


(生きてりゃラッキーの世の中だろうに)


 まだ14歳のこの少女の方が、乱世というものが分かっている。


「再びお会いできるこの日を、待ちわびておりました……!」


 サラ姉上に習い、強く言葉をかける。

 父は、満足したように腕を組んだ。

 

 俺たち二人の態度に安心したのか、サーシャ姉さまも動き出す。悪い意味で。


「母上~っ!!」


 俺たち二人の態度とは打って変わり、まだ8歳のサーシャ姉さまは天真爛漫だった。

 この日のために覚えた作法を忘れ、ぐいぐい行く。


「母上母上は・は・う・え~っ!!!それでおみやげ!おみやげください!わたし、美味しいものがいいです!」


「あら!あらあらあらあら、姫様姫様っ!かわいいけどダメですっ。自分から催促しないのが慎みですっ淑女としてそれはだめですっ!!!」


 サーシャ姉さまは甘えたい盛りの年頃。

 守り役侍女のミーアが嗜めるも、一切聞かずにぎゃーぎゃー騒ぐ。


「うふふ、サーシャとミーアは変わりませんね」


 父の横で控える俺たちの母、ポニャ・エメラルド。

 慈しみの心を感じるこの女性ははしゃぐ娘に暖かい視線を向ける。


「陛下。よいではありませんか。眼の前にいるのは叙勲を与えるべき家臣ではなく、血を分けた家族。堅苦しいあいさつなど切り上げましょう」


「……よきにはからえ」


「さあ、王のお許しが出ました。三人とも、よく顔を見せて。まあ。ディムルなど勇ましい男子の顔になって、あなたの聡明さは遠い国境の地にも伝わっていますよ。是非報告を受けたいわ。アイシャ?」


「は、はいいいっ!」


 俺の後ろでかしこまっていたアイシャが声を裏返す。

 緊張しているのだろうか、アイシャは父の前ではいつもこうだ。


「え、ええっと。お、お王子殿下にあらせられましては、大変ご優秀で家庭教師たちからも高評価、剣術につきましてもラモス大将から『まあ、頑張ってるんでないの?』と太鼓判をいただいております。魔法においてはこの秋に初級治癒魔法までは完全習得、中級治癒魔法にも次々と手を伸ばしており、オリジナル魔法も3種成功させております、はい」


 顔を真っ赤にして報告するアイシャはカチンこちんに固まっている。

 いつもの強気な姿勢はどこへいったのやら。


「ふくくく……!」


(ちょっと王子ぃ、笑わないで下さいよ……)


 アイシャが慌ててジェスチャーを送る。


「ぷふふ……アイシャちゃん、かわいい」


(ちょっと、先輩もすかっ!)


 あたふたするその姿は同僚であるミーアにも笑われる始末だ。


「もーう!ディムルは本当にダメなんだよ!こないだもテストで100点とったって聞いたよ!全くもう。比べられるお姉ちゃんの身にもなりなさい!生意気だよ、むう!」


 俺の後ろではサーシャ姉さまが頬を膨らませてプリプリ怒る。


「ちょっとは褒めてよ姉さま。さもないとこないだ代わりに宿題やったのばらすよ?」


「あ、ちょっとシーっ!それシーっだよ!」


「ひーめーさーまぁー!後でお話がありますからね~!」


 ミーアとサーシャはまたしても二人でぎゃーぎゃー騒ぐ。

 いつもながらにぎやかな主従だ。


 これには父も苦笑した。


 年中戦場で奮闘しておりやつれている。

 そんな苦労性のこの王が笑みを浮かべるのは非常に珍しい。


「アイシャさんアイシャさん!もっと僕らもぐいぐい行こう。このままじゃ負けちゃうよ!」


「な、何で勝つおつもりですか…」


「漫才で」


「おかしいです、色々とおかしいです…!」


 ふいに突っ込んでしまうアイシャ。


 真っ赤になり、元のカチンこちんの状態に戻る彼女を見て、周りは吹き出した。



 アイシャ・母上、ミーア、サーシャ姉さま、それに父上。



 俺の今生における家族たち。


 唯一その場に馴染めていない家族を見て、俺は寂しい気持ちになった。


「失礼。陛下、正妃殿。私はここでお暇させていただきます」


 俺に似ず、母にも似ない。

 かろうじて父の面影を残すだけの、美しい姫君。


「家族水入らずの邪魔は、したくありませんから」


 腹違いの姉、サラ・エメラルドは、侍女のオカリナを連れて、去っていった。



~一気にキャラが増えたのでまとめました①~


*サラ・エメラルド 

14歳。長女。

ディムルやサーシャとは腹違い。

クール系美女


*オカリナ

サラの守り役。

有能。



*サーシャ・エメラルド

8歳。次女。

ディムルとは両親一緒。

天真爛漫。


*ミーア

サーシャの守り役。

子供好き。



*ディムル・エメラルド

7歳。長男and末っ子。

雪合戦も天才児。


*アイシャ

ディムルの守り役。

元ヤン。



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