二度目の別れ
目を覚ましたら、そこはいつもと違う天井だった。
……この部屋知ってる。
イリーナが泊まっていた病室だ。
医者たちの詰所が近いことから国賓や国の上層部、王族も使う部屋。
ここで眠っているということは、
「ああ、俺また負けたのか……」
マジかよちくしょう。
あの流れは勝つだろどんだけ強いんだよ。
部屋の入口へと目を向ける。
持っていたものをガタンと落とし、アイシャがわなないている。
「ああっ。王子ぃっ!王子が起きたあああああああっ!!」
寝ずの看病をしてくれていたのか。
大きく目にくまを作ったアイシャは大粒の涙を流しながら抱き着いた。
なんかデジャビュだ。
すると俺はまた3日くらい寝込んだのだろうか。
「7日ですよ!うわああああああああああん」
「げ、そんなに!?」
「ほほ、殿下を半殺しにした犯人は未だ捜索中ですぞ。いったいどこの刺客がやってきたのでしょうなぁ?」
ラモスがここ7日間の出来事を教えてくれる。
観劇中にいつのまにか消えていた俺がボロ雑巾になってホール近くの芝生に倒れていたとか。
その晩ローランの顔がめちゃくちゃ腫れあがっていたとか。
「いやー。この殿下への暴行事件。これはエメラルド王家への挑戦ですじゃ。犯人はいったいどこの誰なのでしょうなあ?」
俺が目を覚ますまでの間、犯人はいわば明白だったがラモスとアイシャが上手く根回しをしてくれたらしい。
「あんのクソガキぃいいいいい!!!!子供だからって調子に乗らせてやればあああああああああ!!!!!」
「や、やだなアイシャさん。犯人はローランじゃないよ。知らないおじさんだヨ。本当だヨ」
父を亡くしたローランは、地元に帰されたらしい。
また戦場に行こうとするのではとも思ったが、ローランの家は母が一人になってしまい、その母を困らせるようなことを彼はしないだろうとのことだ。
まあ王子を半殺しにした手前王城から逃がしたともいえるが……。
「あくまでとりあえずの処置ですじゃ。所詮は童のやったこと。時を置けばうやむやになるじゃろて」
「そう願います。彼の出世の邪魔をしたくないですし」
とまあこんな感じで、俺は今生において二度目の別れを経験した。
イリーナの時と比べると何とも無茶苦茶だ。風情もへったくれもない。
彼は最後まで加減を知らず、言うことを聞かず、容赦のない、さながら暴力の化身のようなやつだった。
剣でも喧嘩でも一度も勝てない。
いつだって強がって、弱いところを一度も見せない。
俺にとって、理不尽とも言えるあの姿。
乱世の男子の象徴だった。
「そういえば一つ、面白き話がありますぞ」
「ん?」
「あの葬儀の日の晩。あやつの眼に涙の跡がありましてな。理由が何とタバコでむせび泣いたからとか。全く人のものを盗んどいて……」
「そ、そっか…」
ラモスはぶつくさ文句を言いながら去っていった。
アイシャは、べそをかきながら未だに俺を抱きしめている。
俺は……。
「そっか……泣けたのか」
ちゃんと友達に手を伸ばせたんだろうか。
大陸歴1537年。
エメラルド国軍主力部隊レグ・アメジスト少将、壮絶な戦いの中で戦死。
これ以降、戦線は一気に傾き、エメラルド国軍は壊滅状態に陥った。
乱世の夜明けは、まだ遥か―
これで第2章は終わり、物語は第3章に続きます。
第3章はディムルの「幼少期編」最後の章となります。
物語の転機にもなる章なので、是非ご覧ください!
「なにー、幼少期が終わるだとー!?」「続きが気になるぜー!」となった方は是非コメント・評価・ブックマークをお願いいたします!!
作者の目頭が熱くなります、笑
これまでの間にコメント・評価・ブックマークをしてくださった皆様、本当にありがとうございます!!
作者の目頭オーバーヒートしました、笑笑




